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 日常は、何事もなく過ぎていった。


 後で調べて分かったことだけど、この淡い緑色の石はカンラン石という名前らしい。別名はオリビン。あの妖精と同じ名だ。語源は石の色。オリーブグリーンの輝きを放つからだそうだ。そして、またの名を太陽の石とも言う。

「太陽か……」

 すっかり低くなった声でスーノは呟いた。背も幾分伸びて、少年の面影は見えない。それもそうだ。あれからもう十年の月日が経ったのだから。

 覚えてるかな、と石を見つめながらスーノは思った。

 あの出来事がきっかけではないけれど、彼は地質学者を目指している。あんな様々な石を見せられたら、魅力に取り憑かれないわけがない。

 暖かな陽射しと、涼やかな風が心地良い。うと、とスーノのまぶたが下がってゆく。

――そう言えば、君に一つ言い忘れていたことがあったよ。


「あら、寝てんじゃないの」

 どうしようかしら、と鈴のような声が片隅に聞こえる。

「んん……」

 もにょもにょと声を出して、スーノはまた寝息を立て始める。声の主は溜め息をついた。

「ちゃんと会いに来てやったっていうのに、それはないんじゃない?」

 やっぱりあんまりな人間ね、あんたって、とオリビンはスーノの鼻をピンと弾く。いて、と呻く声がした。

「スーノって意味があたしと同じ『太陽』だってこと、知ってたわよ」

 目が覚めたらあんた何て言うかしらね、と悪戯っぽく微笑んで、オリビンはスーノの腕に腰かけた。彼女の髪には花が付けられている。あの飾りボタンだ。

 ちゃんと覚えててあげたから、感謝しなさいよ。


――全て宝石で出来た、光輝く森があってね……。

 おとぎ話は今も子どもたちに語り継がれている。

――そこには、素直ではないけれど優しい妖精が、いたずら半分、人間を呼び寄せてしまうそうだよ。

 わあ、と子どもたちは瞳を輝かせて行きたいと口々に言う。

――だめだめ。興味本位で入ったら、戻れなくなってしまうよ。だけど、友達になれば戻れるかもしれないね。

 妖精は人間と仲良くなりたいのだから。

 ようやく完結いたしました。毎話短く、大変読みにくい文章で恐縮ですが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。


 実は、妖精のオリビンちゃんはカンラン石から生まれたという設定があったのですが、あれやこれやとするうちに書かないで終わってしまいました。もっと色々あったのに!

 そしてスーノ君。ピンと来た方もいらっしゃったかもしれませんが、彼の名前はエスペラント語の「太陽」から名付けました。

 カンラン石はさらに言えば、ペリドットとも呼ばれています。あ、突っ込まないでくださいね。彼ら二人は太陽という意味を持ち、異世界に呼び呼ばれた存在。少し弱気な、だけど図太い神経をもつスーノと、孤独でツンデレな妖精オリビン。恋にまで発展しなかったのが残念でしたが、もしかしたら、その後なにかがあるのかもしれません。スーノ君大人になりましたからね。

 まともな(と言えるかは別として)、キラキラしたファンタジーは書いててとても新鮮でしたし、何よりも楽しかった!

 また何かを書くだろうと思いますが、その時はよろしくお願いします。

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