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「ここをずっとまっすぐ行けば、あんたが迷い混んだ入口に出るわ。つまり、出口ね」
うん、と頷く。そして両手でオリビンを包み込んだ。ぎゅっと抱き締めることは壊れてしまいそうでできなかった。
「ありがとう、オリビン」
「礼なんて言われる筋合いは無いわね。あたしはただこの森の邪魔モノをいなくさせただけだもの」
つん、と顔を背けて言う彼女の頬は少しだけ赤かった。
「……じゃあ、また、ね」
名残惜しそうに手を開く。
サヨナラは言わないよ。強がりで寂しがりの君だから。
歩いていくと、木々の間に隙間があるのを見つけた。
もしかして、とスーノは勢いをつけて隙間に飛び込む。ぐわり、と突然包み込まれた眩い光に目を瞑った。それが陽の光だと気がつくのにそう長い時間はかからなかったけれど。
「……わ、戻って、きた……」
風が彼の髪を弄ぶ。運ばれてきた花の香りが鼻腔をくすぐる。鳥の声がする。葉のさざめく音がする。――時が動いている。
森に迷い混んでかなりの時間が経ったはずなのに、どうやら一瞬だけこの世界にいなくなっていたらしい。太陽の位置は変わらない。汚れた服もそのまま。
「夢、だったのかな……?」
でも袖のボタンは一つなくなっている。それに――。
「夢じゃ、ないよね」
ポケットに仕舞っていたひと欠片の石を取り出して呟く。
きっと、帰る場所が分からなくなってしまった人間に教えるために彼女はあの森にいるのだ。人間と仲良くなりたいとも願って。
友になりたいと希望を抱いて、裏切られて。それでも独りは寂しい。どんなに石のような堅固な心を持っていても、孤独には耐えられないから。




