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――あの森には、入ってはいけないよ。
大人たちが我が子へと語る、おとぎ話。
その森は、きらびやかな宝石でできていた。木も、花も、地面ですら。太陽の陽射しが森に射し込むと、幾重にも反射して光輝いているという。――通称、その森は「光の森」と呼ばれていた。
そこまでの話で、子供たちは皆瞳を輝かせ、行ってみたいと口々に言う。大人たちは苦笑して、だめだめ、と物語の続きを紡ぐ。
あの森には、とても恐ろしい魔物がいて、迷いこんだ生き物を全て石へと変えてしまうのだ。だから、光の森は鳥の声もしないし、草花を揺らす風の音も絶えているという。
だから、森に美しい石を取りに行って帰ってきた人間は誰一人としていない。
――とても、怖い話。でも、その森は見つけられるの?
――帰り道を失った人たちの、最後に行き着くところ、という話だよ。だから、入ったら二度と戻ることはできない。でも、お前はちゃんと戻ってくるんだよ。お前の帰る場所は此処なのだから。