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  作者: 堂山鉄心
5/18

鏡 5

      5


 2年になった俺は、3年の正捕手である岩井さんの怪我のこともあり、控えの捕手番号である12番という数字を背負ったまま、スターティング・マスクを被ることが多くなった。

 実は大会前の背番号発表の時には、岩井さんは怪我で捕手という激務は困難な状態であり、実質的な正捕手はすでに俺であったと言っても過言ではなかった。しかし、年功序列というのは意外に根強いもので、いくら監督とはいえ、他の部員の手前もあり、3年生のプライドというものを完全に無視することは中々出来ない。

 しかし、その中においてさえも、真一は堂々とエースナンバーの1番を背負い、それについては誰も何も言わないばかりか、むしろ当たり前だと感じているようだ。

 そんな春・・・

 準々決勝で真一は、連投の疲れからか四球を連発し、ストライクを取りに行ったところをものの見事に狙い打たれた。

「お前何やってんだ。正志。」

 伝令にきた岩井さんは真っ直ぐ俺の目を見て怒鳴った。

「宮田。大丈夫だ。まだタマは走ってる。コースに散らしてやれば充分抑えられるぞ。」

 野球というのはメンタルなスポーツだ。

 マウンドに立つピッチャーを動揺させるようなことは絶対にしてはいけない。バッターを抑えれば、それはピッチャーの手柄であり、打たれた場合はキャッチャーの責任になる。

「こんな時のために幼馴染のお前がマスク被ってんだろ。お前がしっかりリードしないでどうするんだ! くそぅ・・・俺の怪我さえなけりゃ・・・」

 吐き捨てるような言葉を残して去っていく岩井さんの背中を見ながら「大丈夫だ・・・正志。どこでも構えてくれ。俺はお前のミットだけを見て投げる。」

 この時の俺の心境が分かるだろうか?

 こんな言葉に対しても、粋に感じたりして感情に流されてはいけないのがキャッチャーだ。 

 真一の言葉は確かに勇ましいが汗の量が半端じゃない。明らかにスタミナ不足だ。

「分かった。もう迷わないよ。俺の構えたところに思いっきり投げ込んで来い。」

 真一の背中をポンっと1つ叩き、足早に戻っていきながら俺の頭はフルに回転していた。今の中途半端なストレートは通用しない。さっき打たれたスライダーで空振りを取ることも難しそうだ。カーブでカウントを稼ぎ、ストレートで勝負・・・と思わせておいて、内角低めのスライダーで内野ゴロを打たせる。これを本線で考えながら後はバッターの動向を観察しながら冷静に判断していくしかない。

 そう、まずはアウト・ローに大きなカーブで・・・




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