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  作者: 堂山鉄心
2/18

鏡 2

      2


「清水、92点だ。よく頑張ったな。」

 今回のテストは楽勝だった。

 みんなの拍手の中、照れ隠しに頭に手をやりながら答案用紙をもらいに行く。

「かぁー・・・またかよ。正志。」

「ずりぃぞ。正志。」

「清水、よく頑張ったな。この調子で宮田に置いていかれないようにしなくちゃな。宮田、96点だ。」

 宮田真一。

 正に文武両道。こいつのお陰で俺は小学生の頃から何でも2番だった。

 ついたあだ名が、当時の人気コミックのキャラクターから取った『ミスタ・セカン』

 つまり2番目の男って訳だ。

 しかし、普通なら悔しくて悔しくて夜も眠れそうに無いこの状況も、相手がこの真一じゃ仕方がない。

 真一は家が隣の幼馴染なんだし、それになんと言っても俺の1番の親友なんだから・・・


 初めて真一と会ったときのことは今でも鮮明に覚えてる。

 それは、俺が6歳の春、もうすぐ小学校に上がり、新1年生になろうという時だった。

「正志・・・もうすぐな、隣に友達が出来るぞ。」

 俺が大好きなカレーライスをほお張っている時、ビールを飲むコップを置いて父さんはおもむろに切り出した。

「友達・・・・・?」

「実はな、父さん達の友達でもあるんだ。」

 いきなり何を言われてるのかよく分からなかったが、『父さんの友達』と云う、非常に理解しにくい言葉を言われたことははっきりと覚えている。

「お母さんのお友達でもあるのよ。」

 いつになく、両親揃って上機嫌なのはよく判ったが、やはり父さんや母さんの友達というのは大きな違和感を俺に与えた。

 もちろん今なら分かる。

 父さんと母さんは大学時代に付き合いだしたそうだが最初はグループ交際のようなもので、そのうち父さんの友達の宮田・・・つまり真一の父親と、母さんの友達で当時原田という、今の真一の母親も同じく付き合いだしたのだそうだ。

「宮田はなぁ・・・父さんの高校時代からの親友で・・・」

 この時から現在に至るまで何度も聞かされてきたこのセリフは、この時が初めてだったように思う。


 俺は自分で言うのもなんだが、幼稚園までは何をやらせても1番で、明るくて友達も多い、クラスの人気者だった。

 それに比べて初めて会った真一の印象は、マジメで大人しそうで、これで本当に大丈夫かなぁ・・・とこっちが心配になるほどだった。

 ところが入学式が終わり、通常の授業へと徐々に移っていくにつれて事情が変わってくる。

 真一は、今まで同い年のヤツにはどんなことでも負けたことのない俺と同じくらい・・・いや、今から思えばその当時から全てにおいて俺より上だったのかもしれない。

 それをはっきり自覚させられたのが、体育の時間のかけっこだった。

 俺と真一は背の高さもほとんど変わらず、並んで一緒に走ることになったのだが、その時俺は、初めてかけっこで他人の背中を見て走る・・・と、いう体験をした。

 負けを知らない人間というのは、例えそれが幼い子供であっても同じだ。

 とにかく負けたことが理解出来なかった。

 そして次には負けたことへの言い訳を探した。

 今日はなんだか調子が悪い・・・

 ところが日が変わっても結果は変わることがなかった。

 今日はあまりやる気が起きなかった。

 今日は朝ごはんに俺の嫌いなピーマンが入っていた。

 今日は天気が悪い。

 今日は・・・

 今日は・・・

「清水・・・宮田さえいなきゃ学年でさえも1番なのにな。」

「真一は特別だし、俺の親友だから良いんだよ。でも他のやつには絶対負けないよ。」

 そうなんだ。

 真一は俺の親友で、特別な存在なんだ。

 だから真一はしょうがない。

 俺は真一の背中なら見続けても構わない。

 かけっこで負けて以来、跳び箱も縄跳びも真一には敵わなかった。

 それだけじゃなく、テストの点さえ次第に離されていく。

 俺は真一に憧れ、真一を目標に頑張った。

 2番でも良い。

 でも3番になって真一に離されるのだけは嫌だった。




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