鏡13
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待ちに待った夏の地区予選が始まった。
1回戦、2回戦と俺達は順当に勝ち進むことが出来た。
真一は4番ショートで出場し、見事に4番の仕事をこなした。その間ピッチャーは背番号6番を着けた普段はショートのレギュラーである3年の吉田さんが務め、2試合で12イニングを投げ3失点とまずまずの内容で、万が一の場合の控え投手としてのテストも充分に合格点だったといえた。
しかしウチとしては、やはりいくら毎日走ってスタミナをつけたとはいえ、春の大会の教訓を活かし、ピッチャー真一を温存出来たのが大きい。
そして迎えた3回戦。
エースナンバーが初めてこの大会のマウンドを踏むと、真一は6回まで見事にノーヒット・ピッチングをやってのけた。エースの頑張りに奮起した打線の方もその回までに5点を挙げ、ほぼ試合が決まりかけた7回ツーアウトから打たれた初めてのヒットを機に8回からは再び吉田さんにマウンドを譲り、結局その試合は7対0で圧勝することが出来た。
大会が始まると練習は軽めのものに切り替えられる。もちろん俺と真一のランニングもお休みだ。
「ねぇ清水・・・前に言ってた真奈美のことだけどぉ、マジでどう思う?」
放課後、練習が終わるのを待っていた弥生に声を掛けられた。
「今はそれどころじゃないんだよ。」
「分かってるよ。分かってるけど、ホントにすっごい良い子なんだよ。顔も可愛いし性格も良いし・・・あんな子他に絶対いないって。」
いるんだよ・・・俺の目の前に・・・
「うん。でもマジで今はそれどころじゃ・・・」
「ねぇ・・・じゃあいつになったら返事くれる?それだけでも教えてあげなきゃ可哀相だもん。」
可哀相・・・か・・・
「実はな・・・俺、好きな女がいるんだよ。」
「えぇっ!マジで?ウチの学校の子?」
「うん。」
「付き合ったりとかしてないよね?それだったら絶対アタシの耳にも入ってくるはずだし。」
「してねぇーよ。大体そんな暇あるわけねぇーだろ。」
「んじゃ、その子は清水がその子のこと好きなの知ってんの?」
「いや・・・知らねぇよ。」
「でも、実はちょっとだけ気付いてたりして。」
残酷な・・・とても辛い会話だけど今更止めるわけにもいかない。
「絶対気付いてない。賭けても良い。」
「そうなんだぁ・・・でも、それだったらすぐにでも告っちゃえばいいじゃん。」
「うん・・・でもな、だめだ。俺は甲子園を決めたらその子に告白するって決めてんだ。」
「そんなの甲子園とか言ってないでさっさと告っちゃえばいいじゃん。男だろ?」
少し唇を尖らせた表情も堪らなく可愛い。今すぐにでもその唇に・・・
「うん・・・でもな、決めたんだよ。」
「男って勝手だなぁ・・・そんなんでもし甲子園行けなかったら・・・あ、ごめん・・・」
「いや・・・良いよ。だからこそ絶対に負けられないんだ。絶対甲子園決めて俺の気持ちを伝えるんだ。」
「そかぁ・・・頑張れよ。真奈美にはアタシからちゃんとウマいこと言っとくから。ウマくいくといいな。」
その場で告白してしまいたい衝動と必死に戦いながら何とか会話を終えることが出来た。




