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  作者: 堂山鉄心
10/18

鏡10

      10


 鏡を見る。

 鏡の中に映っているのは2番目の男だ。

 じっと見る。

『昨日練習見に行ったんだよぉ。知ってた?』

『うん。田中達から聞いたよ。』

『ホント?』

 あの時の問いはどういう意味だったんだろう?

 ホントに田中に聞いたのか?それとも、アンタがこっちをチラチラ盗み見ていたのを知ってるよ・・・って意味だろうか?

 じっと鏡を見る。

 鏡の中の俺は何も答えない。

 何も答えてくれない。

『確か宮田って足とか凄く速かったよね・・・ほら、こないだの体育祭の時のリレーでもアンカーで宮田が2人ゴボウ抜きにして優勝したし・・・』

『あぁ・・・速いよ。』

 その時俺は第一走者で、トップで帰ってきてたんだよ・・・

『初めてちゃんと見たんだけど、宮田ってやっぱ凄いね。あたし野球とかイマイチ分かんないんだけど、何か他の子らとはどっか違うって感じ。』

『そうだな・・・』

 他の子?

 それは俺のことも含んでいるのか?

『ねぇねぇ・・・でさ・・・一緒に行ってた真奈美いんじゃん?あの子どう思う?』

『どうって・・・』

『可愛くない?あの子清水のことカッコイイって言ってたよ。』

『・・・』

『アタシが教えたとか言っちゃだめだよ。内緒なんだから。でも真奈美すっごい性格も可愛いし、アタシ、イチオシ。今なら絶対お買い得。』

『いや・・・俺は・・・』

『そかぁ・・・清水は甲子園一直線だもんね。でも、もったいないなぁ・・・一応覚えてて。真奈美絶対お勧めだから。』

『うん・・・』

『で・・・ねぇ・・・宮田って・・・今、好きな子とかいるのかな?』

 それはどういう意味だ・・・

 どういう意味なんだ?

 何でも2番の俺が真一に負けてないものが実はいくつかある。

 メシの量と友達の数・・・確かに母さんの言う通り、それは本当につまらない、生きていくのに大して役に立たないものばかりかもしれないけれど、その大したことないものの中で唯一まともなものが、バレンタインのチョコレートの数だ。真一も決してモテない訳じゃないんだけど、バレンタインのチョコレートの数で言えば、大抵俺の方が多かった。もちろん、俺の場合は友達とか友達の彼女とかはっきり義理だと分かるものも多かったけど、それらを差し引いても多分負けてない。でも、色とりどりにラッピングされた綺麗な100個のチョコレートなんかよりも、俺はたった1つ、お前の笑顔だけが欲しいんだよ・・・

 弥生・・・


『・・・今、好きな子いるのかな?』

 鏡の中の俺は涙を流していた。

 弥生は真一のことが好きなのか・・・

 面倒見の良い弥生のことだから、他の誰かのために聞いてきたってことも考えらない訳じゃない。

 でも、でも・・・あの時の少しはにかんだ表情を鏡の中で涙を流している俺が知っている。

 だけどまだ諦めないよ・・・

 試合終了の声が掛かるまで、俺は決して諦めたりしないんだ・・・

 なぁ、真一・・・

 俺たちはずっとそうやってやってきたんだもんな・・・




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