氷花
昔から好きだった歴史小説に初挑戦です。初めてのことなので至らぬ点も多いと思いますが、温かく見守っていただけたら幸いです。
なおこの小説は史実をもとにしたオリジナル小説です。人物や時代の流れに一部異なる点がありますので苦手な方はご注意ください。
_____________何故裏切った?
その時、里はもう炎の海だった。周りの木々は燃え盛り、助けを呼ぼうにもここは人里遠く離れた山奥で私一人ではどうにもならないことは一目瞭然だった
住み慣れた里、見慣れた家々はバチバチと音をたて燃え盛っている。
そして何よりこの血の匂いが私の不在中に、ただならぬ事態が起こったことを意味していた。
里はおそらく全滅、家はすべて火がつけられ馬もすべて殺されていた。いたるところに見知った人たちが転がっていて鉄の錆びた匂いが鼻をツンと刺激する
「か、母様!兄様!!どこですか!!」
やっとの思いで実家にたどり着くも、そこも例外なく火の海だった。家の中に入ることもかなわず、へなへなと地面へ腰を下ろした。
炎の暑さで視界が歪んで見える
もともと人数の少ない里だった。里から人がいなくなるのはもう時間の問題で、存続の危機だった羽林忍者を、幕府が保護を約束してくれたのは、ほんの数週間前の出来事だった。 落ちぶれ上忍からすっかり雇われ暗殺者になり、その日暮らしをしていた私たちに現れた「幕府」という主はとても大きかった。
里全体が将軍に誠心誠意仕えようとしていた。忘れた誇りを取り戻してくださった将軍のために_____
「おい、これで全部か?」
「あぁ。人どころか犬一匹だっていねぇや。間違いなく全員殺った。」
遠くから聞こえた話し声と刀のこすれる音に、私は咄嗟に納屋の影へ身を隠した。
あいつらだ。あいつらが、里を潰した。
あいつらが、みんなを殺した_____