旅立ちの朝
ぱちりと目が開く。
正直なところ、神のせいで寝た感じがしない。
外を見れば日が昇り始めたくらいの時間だ。
・・・二度寝するには時間が足りず、かといって起きておくには時間が余るな。
「しかたない。起きるか。」
いつもなら無理やり引っ張り起こされて、寝ぼけた頭で着替えをするところなのだが、今回はクディルが選んだ服も、眠気覚ましの紅茶もない。
服を選びたいが、正直なところ俺にはセンスがまったくない。
前世でもセンスがないといって怒られて、海斗がいつも決めてくれていた気がする。
今でも父親はもちろん、クディルとメルディに散々言われている。
いいと思うんだがな。
黒いズボンに緑のシャツ、茶色のネクタイに白の帽子。足元は桜色の靴。
今回は全部クディルの選んだ服しか入っていないので、失敗することはないだろう。
靴は黒で、赤のTシャツに白のズボン、ジャケットは黒にしよう。
着替えたところで、ご丁寧にクディルがノックをして入ってくる。
「おはようございます。珍しく起きておられるのはうれしい限りですが、服は自分で選ばないでください。」
驚いた顔から呆れ顔へと変化していくクディル。
「変か?」
少なくとも前世よりはおとなしい組み合わせだぞ。
前世の服装で一番だめだしを食らったのは、黒のTシャツ(俺は生きている!と書かれている)に白いチノパン、緑のパーカーを羽織って(人生は地球だ!と書かれている)、靴はピンク。
ちなみにカバンは透明の、よく水着とかを入れているトートバック。
どこがおかしいかわからない。
「とりあえず、全部脱いでください。王に会うのにその格好は・・・。こちらを着てください。」
全部駄目だしだった。
俺ってそんなにセンスがないのか?
選ばれたのは赤と黒のチェックのズボンに、白いシャツ。胸元や袖には龍紋と呼ばれる印が入っている。
今度は控えめなパンク系だ。
「いつもおもうが、お前の服のセンスは一般とずれている気がする。」
俺がぼそりとつぶやけば、クディルがこちらを振り返った。
「私の趣味です。というか、あなたに言われたくないです。あなたに似合う服を着させて何が悪いんですか。」
そうか、10年ほど一緒にいたが、これがお前の趣味だとは思わなかった。
まぁ、いつもは袴のようなものばかりだったから、こういった服が好きとか知る機会はなかったのだが。
「準備はできている。いくぞ。」
俺はあえてそれ以上言葉を続けず、食堂へと降りていった。
「はい。」
クディルが俺の後を追うようにして付いてきた。




