旅立ち前日2
「クディル、メルディ。これからよろしくな。」
俺は王の間を出てすぐ二人に話しかけた。
「これからも、の間違い。」
メルディがそう訂正すると、それに同意してくるクディル。
「我々は幼馴染ですし、私もメルディもあなたに仕えることを決めています。アルトが嫌というまで一緒にいますよ。」
にっこりと笑いながら言うクディルに、俺は苦笑した。
若干堅苦しい気がしないでもないが、正直クディルもメルディも俺の大事な家族のようなものだ。
ずっと一緒にいるのが嫌になるわけもない。
まぁ、よっぽどの喧嘩や意見の食い違いがなければの話だが。
「明日から俺たちは人間として暮らすことになる。行く準備はできてるか?」
俺は二人に聞いてみる。しかしそれは必要ない質問だった。
二人がどれだけ楽しみにしていたのかがわかっているから。
1年も前から着々と準備を進めていた二人に、そんな質問は必要なかった。
「当然。」
「当たり前です。」
期待いっぱいの二人は、明日出発と決まっていなければ今すぐにでも行ってしまいそうな勢いだ。
「明日は日の出とともに船で出発だ。遅れるなよ。」
「・・・アルト、寝坊禁止。2度寝も禁止。」
「私がアルトを起こしに行きますので安心してください。メルディ。」
そうだった。
この中で一番遅れる可能性の高いのは俺だった。
3人で遊ぶ約束をしていて、寝坊して何度遅刻したことか。
最近では一番早起きのクディルが俺を起こしに来るようになってしまった。
本当にしっかりもののクディルには世話になっているな。
明日が楽しみで仕方がない。