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覆われる安寧
空を見上げれば、そこには常に「膜」がある。
よく目を凝らせば、極光のように淡く、不規則に揺らめいているのがわかる。聖都に鎮座する「**核**」が維持する障壁は、王国を覆い、魔力や異形から人々を隔絶していた。
障壁の内側はあまりに穏やかだ。
だが、その平穏は「自給自足」ではない。すべては障壁の外――人類にとって死地となった魔境から剥ぎ取ってきた「戦果」に依存している。
人々は揺らめく膜の向こう側を夢想する。
いつか、あの歪んだフィルターを通さず、本当の空を見てみたいという切実な憧憬。それが叶わぬ夢だと知りながら。
「号外だ! 「**供給記録**」が出たぞ!」
少年たちの叫び声と共に、刷りたての紙が宙を舞う。
誰が、何を、どれだけ持ち帰ったか。その戦果こそが、この平和な檻の価値を決めていく。
――これは英雄譚ではない。
魔物の骸を糧とし、その死を文明へと変換して生きる。
そんな歪な共存を続ける、人類の営みを覗き見る物語だ。




