話したい
【橋本洸side】
今日は委員会の初めての集まりだ。
図書委員になったのは自分で挙手したからであまり人気がないのは知っていた。
それでもこの委員会を選んだ理由は本に触れ合うのが好きだからだ。小説、漫画、エッセイ。本というものは全般好きである。紙を捲る感覚も匂いも落ち着く。
たまにこの学校の図書館も利用している。ここの図書館はかなり入り組んだところにあり、図書館に行こうとしない限り行くことがない。在校生でも場所を知っている者は少ないだろう。それもあり利用している人は少なく、とても快適なのだ。
自分にはこの空間が心地よかった。だから図書委員になれて良かったと思う。
授業が終わり友達と少し話して委員会のある教室へと向かった。覗いてみると既に数人いた。
席は自由だと知りどこに座るかと思っていたところにある人が目に付いた。隣のクラスの星谷輝だ。バッグを横の席の机に置き、席を取っているんだとわかった。すかさず声をかけに行く。
「ここの席は空いてるかな?」
もちろん空いている事は知っていた。敢えて聞いている。なるべく笑顔で自然を装って。
星谷輝はこっちを向くと一瞬固まり、
「あ…。と、えっと…。うん。ここの2席以外なら多分空いてると思う…けど?」
明らかに動揺した様子で返事をしてくれた。
もしかして不自然すぎたかな……まだ人少ないしわざわざこの席に来るなんて迷惑だったのかもしれない。
そう考えた。でも聞いてしまった手前、他の席に行ったら逆に失礼になる。不自然だとしてもこの席に座ろうと決め感謝を言って座った。
俺は星谷輝を知っている。もちろん有名っていう事もあるけれど。そうじゃなくて、気になっている。それはきっかけがあった。まだ秘密だけど。もし仲良くなれてそれを言える関係になれた時に伝えればいい。
有名な存在の星谷輝を知らないというのは無理があると思い、名前だけは知らないふりをしたんだ。
「ねぇ、君、B組…だよね?良かったら名前教えてくれないかな?」
内心ちょっとドキドキしていた。ぐいぐい行き過ぎているかもしれない。と、その予想は的中した。星谷輝は自分の名前を言うと目を逸らしこちらを見ない。
やってしまった、と思いながらも
「星谷くんって呼んでもいい?あ、俺はA組の橋本洸って言うんだけど、好きに呼んでくれて大丈夫だから!」
駆け足で言う。せっかくなら名前を呼びあえるくらいまではいきたい。図々しいかもしれないけれどこのチャンスを無駄にしたくはない。
「あ、うん。じゃあ、橋本くんって呼ぶわ。」
そう返ってきた。名前を呼んでくれた。純粋に嬉しくて顔がほころんでしまう。
すると星谷くんはさっきとは裏腹にじっと俺の顔を見ている。
あれ?なんでだ?さっき引いてたのはなんだったんだろうと疑問に思い、首を傾げる。
すると前を向いてしまった。そして隣の席の子が来たらしく声をかけて自分の荷物を取っていた。
その女の子は耳まで赤く染めている。あぁ、星谷くんの事が好きなんだ。本人は気づいてないんだろうけど。