目立つ存在
季節は春
2年B組 星谷 輝 (ほしや ひかる)
今日から新学年になりクラスは持ち上がりのためメンバーは変わらない。
ただ担任が変わって授業の教科が難しくなって…みたいな…大きく変わることなんてなくて見慣れた景色にただぼーっと始業式が終わるのを待っている。
始業式だから授業なくてラッキーなのだが全校生徒が体育館に集められ校長先生の話を延々と聞くのは懲り懲りだ。皆つまらなさそうに目が死んで聞いている。いや、きっと聞いているふりをしている。俺もその内の一人だ。
つまらないなと辺りを目だけで見渡すとふと右側に背が高くスタイルの良いイケメンが目に付いた。きっと180cmはあるだろう。ひときは目を引く存在。彼を知らない人はいないだろう。
2年A組 橋本 洸 (はしもと こう)
男女共に好かれる人気者だ。彼は不良とかヤンチャするようなタイプではない。見た目は真面目で清楚。いつも爽やかな笑顔で周りを癒している。それは先生にも好かれており頼られる存在だ。欠点はどこだ??女遊びをしているという噂も聞かないしいつも友達に囲まれている。
「この世の中不平等だな」と声にならないくらいの小さな声で呟いた。その時、ちょうど始業式の全校集会が終わり、後ろにいた同じクラスの友達、本田 涼 (ほんだ りょう)が話しかけてきた。
「なぁ、さっき黄昏ながら何か言ってたよな?何?可愛い子でも見つけちゃった?!」
輝の肩に腕を回し肩を組んできながら人懐っこい笑顔で聞いてくる。まるでわんこみたい。
「なっ、!?黄昏てたって…からかってるだろ!別に可愛い子がいたわけでもない!ただ橋本洸ってやつ見つけてこの世の中不平等だなって思ったんだよ。」
「あぁ〜、橋本洸か〜!あいつ目立つもんな。てか、俺的には輝も変わらないと思うけど自覚なし??」
ひょっこりと顔を覗いてうかがってくる。
「え、?いや、俺はあんなに頭良くないしカッコよくもないよ」
思っていることをただ正直に伝えたつもりだった。
「何言ってんの??1年の時だけで何人に告白されてんだよ?!」
驚いた顔で聞いてくるが、内心まぁ他の人からしたらそう思うよな、と自分自身でわかっていた。
なんて返せばいいかわからず「それは…。」とだけ言って後に続く言葉が出なかった。
正直、告白された回数で言うと片手以上ではある。だが、それは他クラスで俺の陰キャ具合を知ってる同クラスの人達には告白されたことが無い。
きっと外面だけで中身は見られていない人達からの告白だ。どうせこんな事を言ってもただの自慢だ!とか高望みしすぎ!と言われてしまうのがオチなので言わないようにしている。昔からかっこいいと近づいてくる女の子たちはいた。もちろん最初は嬉しかったがある時気づいたのだ。顔だけでしかみられていないことに。それからは少しコンプレックスになってしまった。
「モテるやつにも悩みはあるんだな!まぁ俺からしたら羨ましい悩みだから相談はするなよ?」
深くは聞いてこようとせずホッとした。一言余計だったけど。
「なんだよ、お前彼女いるくせに」
話題を変えようとちょっとからかう。
「俺はこう見えて一途なんだよ!!お前モテんだから彼女つくればいいじゃん!めっちゃ可愛い子に告白されてたよな?なんで毎回断ってんのー?」
結局俺の話になるのかよ、と軽いため息をつく。
「別に顔で選ぶわけじゃない。性格とか知らなくて好きでもないのに付き合えるわけないだろ。付き合う人は好きな人じゃなきゃ意味ない。」
俺は外見なんかだけで判断しない。人にされて嫌なことは自分もしない。という誓いを個人的にたてている。そもそも俺、人を好きになったことあったけ……。
「外見も立派なその人の価値だと思うぜ」
涼は真剣な面持ちでおふざけなしに前を向きながら答える。その真剣な横顔はいつもの無邪気な笑顔がない。
それを見て、本気でそう思っているんだとわかった。そしてその言葉に少し救われた気がした。
俺は そうだな。 とだけ言って自分たちの教室に着く。