「なろうラジオ大賞6」 「卒業」
「なろうラジオ大賞6」 「卒業」
なろうネーム べにまどんな
卒業の日にルームメイトから貰ったカレンダーで紙飛行機を作って、マンションの二階のベランダから外へ飛ばした。
紙飛行機はくるりと弧を描き、散歩をしていた人の頭に当たった。
「いてっ」と顔を上げたその人は、
トレーニングで通っていたプールのコーチだった。
かつて、お弁当を作って遊園地デートをした彼。
ドキドキしながら二人で乗った観覧車の中で初めてのキスをした。
そして、お互いのマンションを行き来する仲になった。
けれど、
彼の寝言で別れた。
あの日、私の部屋で寝込んだ彼が、寝言で「愛してる」と言った後に続けた名前は、
私と一緒にプールに通っていたルームメイトの名前だった。
なんとなくわかっていたのかも知れない。
見上げた彼の横には、かつてのルームメイトがいた。
紙飛行機が飛んで来た方を見上げた彼の視線から逃れるように、私は部屋の中へ隠れた。
「どうしたの?」
部屋の奥から声がした。
私は彼に笑顔で答えた。
「やっと、卒業出来たわ」