99.フェリクス様のお屋敷
いつもお読み下さりありがとうございます
もうすぐ100話
明日のお昼に登場人物まとめを投稿します
振り返りにどうぞ…
引き続きよろしくお願いします
朝、目が覚めると視界には淡い金髪。うん、いつものことだね。私は今日も今日とてイリィの抱き枕だ。
規則正しいその鼓動が安心感を与えてくれる。
柔らかい髪を撫でているとふにゃっと言った。寝言かな?可愛い。その耳にあるピアスを見る。
私の魔力も込めてある水晶。そっと触れると魔力が反応する。イリィを守って…そう願いながら触ると水色に光った。治癒の色かな?
そう言えば、あの革屋に石を預けたままだ。取りに行かなきゃ。良さそうな革を売ってたら少し買おう。
今日は出来れば工房でお皿とかカップの準備だな。
あれ?そう言えばお店の名前は?マーク入れるなら店名も入れたい。
これはギルマスかな?
工房だけど、護衛の人来るのかな?あそこは来て欲しくない。スーザンに相談。
なんか今日も忙しいかな?まぁイリィと物作りが出来るのは嬉しいからいいか。
あっ、ファーブルさんにも会いたいな。落ち着いたかな?なんて考えていたら視線を感じた。
前を見たら美形の憂い顔が間近に…近いよ!朝から美形の迫力が…。何度見ても見飽きないその美しい顔にドキドキしていると真顔で私を見てキスをした。
「何を考えてたの?」
私の胸に頭を乗せて上目遣い…色気が…。物憂げな美形のドアップ。逆に心臓に悪いよ。
「イリィとする物作りの楽しさについて考えてた」
満足そうに笑うイリィ。
「良かった。僕以外のこと考えてたらお仕置きしようと思ったんだけど…?」
それはご褒美では…?
ふわりと笑うとまたキスをして…。もう少しこのままがいいとまた目を瞑る。
イリィは全く重くないしその体の熱が嬉しいから私はもちろん…大歓迎だよ…?
その髪を優しく撫でて私も目を瞑る。
朝の微睡…幸せだなぁ。
そのまま少し寝たみたいで、お腹が空いて目が覚めた。イリィも目が覚めたようでお腹空いたと言っている。起きて着替えると扉が叩かれる。
今日はリアが朝食を持って来てくれた。
受け取って扉を閉めてトレーを机に置く。私は床に座り今日の予定を伝えた。
「工房には昨日の人に来て欲しくないんだ」
「そうだね…僕もそれがいいと思う」
「スーザンに相談する?」
「レオとルドはこっちに来るかい?」
「屋台の準備があるから来ると思う」
「なら屋台の準備を手伝って貰えばいいだろうね」
そう決めて階下に降りてスーザンに話をする。
「おう、まぁ工房なら人に会わないし大丈夫だろ。イーリス、ちゃんと見とけよ?」
「大丈夫」
こうして工房に向かおうとしたらイザークさんが昨日の2人と共にやって来た。
「アイルとイーリス、話がある。スーザン少し外してくれ」
ここはスーザンの宿だよね?
肩をすくめて厨房に入って行きながら
「おう、お前らはこっちだ」
こうして護衛?の2人は厨房に、私たちはイザークさんと食堂で向かい合った。
「明日なんだけど、ここの領主であるダナン・アフロシア様に会って貰いたい。2人ともだ」
私は驚いた。イリィは直接関係ないのに?
「イリィは…」
「大丈夫だ、ローブもフードも取らなくていい」
私は不安だ。そう言っていて、屋敷に入ったら不敬だと言われないだろうか。
「即答は出来ない…」
そうだろうな。それほどイリィの素顔は知られれば危険だ。
「俺だけでは?」
イザークさんは考えている。
「2人を、と言われているんだ」
「家族に相談する…僕はすこし…」
頷いてくれたので取り敢えず先にファーブルさんに会わなきゃ、そう思っていたら…。
宿の扉が開く。そこには今まさに会わなきゃと考えていたファーブルさんたちがいた。
スーザンが迎えに出ると
「ここに世話になっている家族に会いに来たんだ。イーリスはいるかな?」
「宿の主人のスーザンだ。ちょうどそこにいる」
ファーブルさんがこちらを見る。
「イーリスにアル、おはよう」
「「おはよう」ございます」
「と…んんっファル兄様、ちょうど良かった。話があって」
イリィ…今お父さんて言いかけたな?お兄さん設定だよ?
「何だい?」
イリィの隣に腰掛けてイザークさんを見る。
イーリスは探索者じゃないから私が代わりに
「ファル兄様、探索者ギルド職員のイザークさん。感謝祭の屋台の件で領主様に呼ばれてて…俺だけじゃ無くてイリィも…」
ファル兄様はイザークさんに向かって
「なぜイーリスも?」
「アイルの発想とイーリスのデザイン。この二つが合わさってこそ、だと。それを伝えたら興味を持たれて」
ファル兄様は少し考えて
「私の同席が認められるのなら…。でもイーリスの顔は見せられない」
なるほど…。全快したファル兄様は間違いなく強い。濃い魔力からも分かる。
イザークさんは頷いた。
「ここの領主はとても立派な方で…理由があって隠しているものを暴いたりはしないよ」
「だとしても…貴族とはそれだけ力があるものだ。ああぁ、私はイーリスの兄でファーブルと言う。よろしくな」
「あぁ、こちらこそ」
「イザークさん、そう言えばお店の名前って決まった?マークにロゴを入れようかと…」
イザークさんの目がくわっと開く。
「何て言った?」
「お店の名前決まった?」
「その後だ!」
「マークにロ「アイ…準備を急ごう」」
?まぁいいか。
「店の名前は聞いてないな。ギルマスに確認しておく」
こうして明日の午前中にダナン様のお屋敷を訪れることになった。
イリィの家族と宿を出て工房に向かう。
ファル兄様たちはマルクスと合流して宿ではなく短期で家を借りたそうだ。その手続きやらで時間がかかったとか。
そしてイリィと私を見てもう大丈夫だな、と優しく笑う。
えっ?何で分かったの?
「ふふっアル君の全身からイーリスの魔力を感じるからね」
ええっ…そうなの?恥ずかしい…。真っ赤になってしまう。
「ならイーリス、ベル兄と共有しないか?僕もアル君が欲しい」
へっ?共有って何?
「ベル兄様…ダメ。アイは僕だけのもの」
「そう言わずに。飽きた頃でいいから…」
「ベル…イーリスを困らせるな」
「僕は本気だけど…?」
イリィが涙目で私に抱きつく。ねぇ、共有って何…?
「ベル…やめなさい」
ベル兄様は不満そうだけどそれ以上、何も言わなかった。
なんか変な感じだけど…もう工房に着くから。
扉を叩くと勢いよく開く。
「兄ちゃん早いな!入ってくれよ。あれ?…」
「あぁ、イーリスの家族だよ」
驚いた顔のレオはへーと言う。その顔が複雑そうなのは仕方ないだろう。
「ま、そっちの兄ちゃんの家族ならいいか。入って!中は綺麗だよ」
レオに続いて入る。最初に使ったレオたちの居住空間だ。最初は大きな部屋だけだったけど、後から居間とキッチン、寝室を分けた。
今通されたのは居間。ここからはイリィの工房にも行ける。
「ほう…凄いな。なんて快適な空間だ」
「へへっ兄ちゃんが作ってくれたんだ!」
部屋は清潔に保たれている。最初はいくつか服を再生して私が作っていたけど今は自分たちの収入でも買ってるみたいだ。
気がついたら私が服や部屋を補強したりしている。だから貧民街なのに二人とも服装も本人も綺麗だ。もちろんシャワーがあるからなのだが。
珍しそうに部屋を見ているとルドが得意そうに皆んなに部屋を案内する。ファル兄様たちはトイレとシャワーを見て驚いていた。
そしてイリィの工房に移動する。ここも少しずつカスタマイズして使いやすくなってる。仮眠用の部屋とか作業室、居間やキッチンを作った。トイレは最初からあるし、シャワーは途中から付けた。
普通に生活出来る程度には整えてある。
こちらも感心して見ていた。
「これは凄いな」
「アイはね…無自覚にやらかすから」
えっ?これもなの?自信作なのに…?
「これはまた…人に知られたらダメなヤツだな」
「そう…色々とね。まぁアイが防御を全体に掛けてるから悪意を持っては入れないけど。ついでに隠蔽も掛けてるよね?」
知ってたの?防御と隠蔽と反魔法だね。あ、治癒も。
まぁ一瞬で傷をなかったことにするようなチートじゃないから大丈夫。ふふふん。
レオとルドは支度をしてゼクスの宿に向かった。
そこでまずはお茶を飲むことに。森の中でお茶の木を見つけて密かに使ってたんだ。もちろん、ここでは緑茶で提供する。
あーやっぱり美味しい。うん、和菓子が食べたくねるねぇ。醤油とかみりんないかな?
味わっていると
「これはまた芳醇な香りだね、何の薬草だい?」
「薬草ではなくてお茶だよ」
皆んな味わってくれている。嬉しい。飲み終わるとファル兄様が
「私たち森人はね、貴族から何度も狙われて…町を出て森に籠ったんだ。自分で言うのもなんだけど…我々はこういう中性的な見た目の者が多くてね。貴族がお飾りにと欲しがるんだ」
あれ?でもギルマスもイザークさんも反応薄かったけど。
「我らは自然と認識阻害をしている。産まれながらの特性だね。だからだよ」
でも私には普通に美形に見えてるけど?
『アルのスキルだよ。物事の本質を見抜く』
それまで大人しく隅に寝転がってたハクが言う。
そっか…パッシブだからかな?見ようと思ってないのに。
『スキルの熟練度が上がって認識阻害程度なら見えてしまうんだろう』
そうなのか…ビクトルってば優秀?
「だからね、用心してるんだよ…。特にイーリスはね。人を狂わせるような美貌だから」
納得だ。何にしてもファル兄様が来てくれれば心強い。
その話はここまでにして私はあのお願いをしてみる。
「ファル兄様、この町にいる間だけでも私に剣を教えて欲しい」
「お父様、僕にも。強くなりたい」
ファル兄様は驚いた顔をしたけど嬉しそうに笑って
「もちろんだよ!私は厳しいよ?」
それを聞いて兄様たちが苦笑していたけど…そんなに厳しいの?
少し焦っているとシア兄様が
「いや、まぁ厳しいっていうか…うん。頑張って」
「せっかくだしお前たちも久しぶりに鍛えてやろう」
グッと詰まる兄様たち。そんなに…?
この時の兄様たちの苦笑の意味を後で知って私は遠い目になるのだった。それはまだ数日先の話。
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