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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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97.誤解

 ダナはフェルの涙を拭いてそのまぶたにキスをする。

「私の小さなフェルは泣き虫だね?」

 フェルが小さい頃、ダナが良く言っていた台詞だ。フェルは唇を尖らせる。

「お父様…()はもう小さくありません」

「体は大きくなっても、私にはとっていつまでの可愛い子供だよ?」

 おでこにキスをする。

 気まずそうに顔を逸らす。微笑ましい家族の姿だ。


 その後、ダナとフェルはきちんと話をした。結果分かったのはどうも某系の親戚の男が父親ではないかと。似ているのに何か違和感があったのはそれだったのか。

 血の薄さとでも言うのか。直系特有の色ではなく、やや薄ぼんやりしていたのだ。

 アナベルは不貞を働き、誤魔化すためにフェルに睡眠薬を盛ったのはもちろん罪になる。さらに偽装魔法まで使っていたのなら、領主を騙った罪も追加となる。出身の伯爵家から賠償金と接近禁止をもぎ取らないと。

 そして、跡取りについても考える必要がある。

 それに対してダナから提案があった。


「私は昔、貴族法を徹底的に調べたんだ。そこで見つけたんだ。推定養子という制度を。家族が知らない間に子供を作っていた場合、その子を貴族とする為の救済制度だ。片親が貴族で、その出身家からの申し出で可能となる。

 知っている通り、貴族は平民とは婚姻出来ない。貴族の子供なのに貴族として登録出来ないために、貴族と婚姻出来ない場合を救済できるんだよ」


 これは俺のことか?

 ダナが俺を見る。

「そう、これはイザークを貴族とする為に必要な手続きだ。しかも、登録できる年齢は9才まで。イザークは間に合ったんだ」

 驚いた。

「ただし、推定養子だからね。成人後にこの推定を確定にしないと正確には貴族にならない。本人の意思確認だけなんだが。そして、この推定養子には他にも特例があって、推定養子となっていた家族、親と兄弟だね、と確定後に婚姻が可能となる」

 それはつまり、ダナと俺が、もしくはフェルと俺が婚姻可能ということか?

 これにはフェルも驚いている。

「さらに、()()()()()()()()()()()()

 フェルも俺も固まっている。()()()()()()()

 それは…。


「お父様…それはつまり、お父様も僕も…イズと結婚出来ると?」

 ダナは頷く。

「それでも私は迷った。フェルの為を思えばイザークはフェルと結婚した方がいいだろう。しかしイザークの気持ちも…私の気持ちも…。大切な息子と大切な妹の忘形見。私には選ぶことが出来なかった。もしイザークが我々を選んでくれたら…そんな勝手なことを…」

 俺は驚き過ぎて思考が上手く働かない。俺は()()()()()()()()()()()()()()


 選べなかったのは俺も同じだ。ダナへの想いも、フェルの想いも選べなかった。

 フェルはまた目に涙を溜めてお父様…。その腕に抱きついた。ダナはその髪を優しく撫でると俺に向かって手を伸ばす。俺はフラフラとその手にしがみつきフェルと同じくその胸に抱かれる。

 あぁ…いいのだろうか。俺は…。

 涙に濡れた目でフェルがキスをしてくる。ダナもキスをしてくる。フェルはダナにもキスをして…3人で泣き笑いだ。

「感謝祭の前に時間を取って…ゆっくり話をしよう」

 そう締めくくってソファに座り直す。フェルはもう隠すことなく私に甘え膝に頭を乗せる。私は苦笑しながらその髪を梳く。

 優しい風が通り過ぎて行った気がした。


 その後は領主の執務室に向かい、ダーナムとシグナスを待つ。お茶を飲みながら紋章の話をしていると、扉を叩く音がする。

 中隊長ほか1名が訪ねて来たと伝えられる。

「入れ」 

 ダナに応えて二人が部屋に入って来る。

「中隊長ダーナム参りました!」

「シグナス参りました!」

 と敬礼する。

 ダナは手を挙げて

「堅苦しい挨拶は無しだ。フェルに聞いただろうが、二人に特別任務だ」

「「はっ!」」

「私もまだ会ったことがないんだが、少しクセのある子みたいだ。イザーク、簡単に話を」


 俺は引き継いで話をする。

「護衛兼見張りだな。あぁ、見張と言っても奇行に走るとかこういう方面の見張りじゃない。何と言えばいいか…常識がぶっ飛んでる」

「「?」」

 うん、何を言ってるのか分からんよな。

「合えば分かる。あぁ我が儘とかそういうことはない。穏やかな好人物だ。非常識なだけで…」

「それだけ聞くと意味不明だな」

 ダナが呟く。俺もそう思う。でも事実だ。会えば分かる。

「備蓄の乾燥キビ…あれの有効な使い道を発見した人だよ」

 それには二人とも驚いている。そして不思議そうな顔をする。そらそうだろ。やらかしとは無縁そうに見える。


「近いうちにここに来てもらうつもりだ。その顔合わせの後に正式に依頼する。感謝祭では屋台を手伝うからお前たちにも協力してもらうよ」

「「はっ!」」

「下がって良い」

「「失礼します!」」

 最後まで不思議そうな顔をして退出して行った。


「こうして話を聞くと変人に聞こえるんだがな?」

「本人は至って真面目で普通な感じなんですが…色々と…」

「これで好人物だと言うのだから。会うのが益々楽しみだよ。イザーク、明後日なら時間が作れる。連れてこられるか?」

「大丈夫でしょう。俺はそろそろギルドに行くので…また連絡します」

「あぁ、気を付けて行っておいで」

 俺はアフロシア家を出て徒歩でギルドに向かった。ダナのこと、フェルのこと…。衝撃的過ぎてまだ飲み込めない。結婚なんて一生、縁がないと思っていたし…正直今でも無理だと思っている。

 二人は本当の俺を知らない。盗賊の手伝いをしていた俺は父親の所業を見ていた。そして誰も助けなかった。助けを求められても…。


 自分とは関係のない人間が何人死のうが何とも思わなかった。森で一人暮らしをしていた時も、

 ()()()()()()()()()()()

 興味がないから助けなかっただけだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何となく体が動いただけ。意識的に助けた訳ではない。


 そんな俺が彼らと共に生きられるはずがない。

 俺は盗賊の頭だった父親の子供なのだ、住む世界が違う。改めてそう思った。

 考えながらだったからか、ギルドはもう目の前えだ。まずは感謝祭を乗り切らねば。

 俺はいつも通りの無表情で裏からギルドに入った。




 その頃アイルは…


 護衛も決まったし部屋に戻る。紋章はどうするのか、とかマークはどれくらいの大きさでどこに付けるかをイリィと決めて行く。

 判は簡単に作れるし押すだけならレオに頼めばいいから楽だ。どこまで広めていいか分からないからしばらくは身内かな?

 イリィもイザークさんに確認しながらだねって言うから3個だけ作っておいた。


 そして久しぶりの鉱物たち。ロルフ様にお世話になるならあちらの貴族家にも何か送った方がいいかな?

 護身用のアクセサリーなら目立たず普段使いに出来るだろうか?

 あっ、それなら腕時計は?こっちは所謂懐中時計で、作りも雑だ。光発電で魔石の交換要らないヤツがいい。で、治癒と解毒の魔力を込めておく。

 イリィに早速相談する。

「イリィ、腕につけるオシャレな時計を作ろうと思うんだ。ほら、この先、ロルフ様のご家族とか、貴族様に会うかもしれないし…何か作っておきたくて。」

 イリィは不思議そうな顔をして

「アイ、良く分からないよ?」


 私はポーチから材料を取り出す。ポイズンスネークの革とこの間見つけたステンレス、あとは土。土からケイ素を抜き出してガラスを作る。薄くて強い、そう強化ガラスってヤツだね。

 文字盤は…水晶を薄く伸ばして…針は紫水晶。数字はどうしよう?ステンレスでいいか。今はお試しだから。光を取り込むのはどうする?水晶で裏に光を集めたらいける?魔石を組み込んで、魔力を後から込めたらいいかな。

 考えながら組み立ててみる。


 そこには白い革に透明な文字盤。金具は銀色のステンレスで出来た腕時計があった。表面のガラスにはもちろん曇りも歪みもない。

 じっと見る。


(水晶で光を集め、魔石に自然魔力を蓄える時計。アイルのジョブで狂いのない正確な時計になっている。伝説級の仕上がり。

 革 ポイズンスネークの最上級な物を白に染めた一品。

 金属 ステンレス

 文字盤 透明度抜群の水晶

 針 透明度抜群の紫水晶

 文字盤を覆うガラス 強化ガラス)


 ぐほっ…。イリィがこっちを見ている。そっと目を逸らすと

「アイ…?ビクトルは何て?」

「…」

「アイ…?」

『(水晶で光を集め、魔石に自然魔力を蓄える時計。アイルのジョブで狂いのない正確な時計になっている。伝説級の仕上がり。

 革 ポイズンスネークの最上級な物を白に染めた一品。

 金属 ステンレス

 文字盤 透明度抜群の水晶

 針 透明度抜群の紫水晶

 文字盤を覆うガラス 強化ガラス)』


 ハク!何でバラスの?

「アイ…ねぇ僕を見て…?」

 そっとイリィを見る。笑ってる…けど目が怖い。サッと逸らす。

 私の頬に手を添えてイリィが

「僕の目を見て…」

 チラッとな…あ、マズイ。そっと立ち上がろうとして…

「ねぇ、アイ…そういう所だよ?ねぇ…分かってる?自分がやらかしてるって?」

 首を振る。だって腕時計なんて向こうでは普通だし、確かに今はね、スマホが主流だけどさ。本当に普通だからさ…。

 はい、ごめんなさい…。美形の怒った顔が怖いよぉ…。




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