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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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93.兄弟水要らず

ロルフたちの話、そろそろ終わるか?


予約投稿忘れてました…

 僕は自分の部屋で兄様を想う。小さな頃、僕の世界には兄様と僕だけがいた。兄様だけが僕の側にいてくれた。

 怠い体に泣きながら、ただひたすら兄様の温もりだけを感じていた日々。

 私の世界はいつだって兄様で出来ている。

 学院に通ってあた最初の一年は兄様と暮らしていた。侯爵家の跡取りであった僕は色々な人から話かけられた。

 でも全く興味がなかった。事業や商売に関わる話なら興味があるけどその他はどうでもいい。

 だって僕の世界は相変わらず兄様を中心に回っているから。


 跡取りじゃなくなっても兄様は注目されていた。当然だよね?薬草の効果、組み合わせ。その汎用性の高さはいまだに高く評価されている。

 産まれも豊かな侯爵家、顔だってきれいだし背も高い。細いのと表情に乏しいけど、それでもかなり狙われていたんだよ?

 もちろん、僕が牽制しまくったよ。家柄、成績、事業、実家の懐具合。全て合格してなくてはね。

 顔を合わせることもさせなかったよ。当然だよ。兄様は優しいからね、僕が見ておかないと。


 僕が入学する前の2年は噂を色々ね。兄様は研究に没頭すると何日も籠って出てこないとか。無口だから会話が難しいとか。

 あることあることたくさん噂を流した。だから兄様にはごく僅かな人しか近寄らなかった。


 僕の兄様だからね。そう思っていたけど、結局は誰にも渡したくなかったんだ。僕だけの兄様、僕だけの…。寝起きの眠そうな顔とか、長いまつ毛とか、寝顔とか。髪を撫でてくれる優しい手とか、柔らかな唇とか。

 全部、兄様を構成する全てを僕だけのものにしたくて。やっと。兄様を…。


 考えながらウトウトしていたみたいだ。優しく髪を撫でる感触で目が覚める。兄様だ。

「疲れたか?」

 心配そうに覗き込む。

「兄様…」

 ん?何…?ラリィ。

 その頬を撫でる。滑らかで白い肌だ。頬をすべる髪が手に触れる。その髪に手を入れてそのまま首へと滑らせる。形の良い耳が見えた。

「キスして…」

 兄様はいつもみたいに少し困った顔をして頬にキスをしてくれる。

 違うよ、兄様。して欲しいのは頬じゃない。


 そう思っていたら優しく唇にキスをしてくれた。あぁ、兄様…。大好きだよ…。その時、お父様がさっき聞いたあれこれを思い出してしまう。

 途端に顔を熱くなる。兄様はどうしたの?と聞くけど…言えない。恥ずかし過ぎる。

 黙っていたら心配した兄様にふわりと抱きしめられた。

 大丈夫、兄様はここにいるから。

 あぁ兄様…。今夜も一緒に寝ようね…?


 兄様に甘えてその頭を撫でる手の感触を楽しんでいたら、使用人が呼びに来た。

 もう夕食の時間?兄様といると時間が経つのが早いよ。

 一緒に食堂に向かう。

 並んで座る。兄様は僕を見て、大丈夫?という顔をする。僕は嬉しくて少しもじもじしてしまうんだ。上目遣いに見れば頬にかかる髪をそっと耳に掛けてくれる。そのまま優しく頬を撫でて、手が離れる。

 僕はその優しい手を思わず握ってしまう。

 その時、食堂の扉が開いてお父様とお母様が入って来た。


 僕が兄様の手を握っているのを優しい目で見る。いや、お父様は揶揄う気満々の嬉しそうな目だ。

「あらあら…」

「ふふふっ…仲がいいな」

 僕は慌てて兄様の手を離す。

 兄様は首を傾げている。そんな顔も素敵だ。兄様を見ている僕をじっと見るお父様とお母様。恥ずかしいけど、兄様をもっと見たくて…。チラチラ見ていたら、お父様が笑いを含んだ声で

「食事を始めようか…ふふふっラルフ…少し落ち着きなさい。ロルフは逃げないよ?」


 私は真っ赤になって前を向く。

 やがて前菜とスープ、サラダが運ばれてくる。美味しい野菜が取れるこの領地では、あまり濃い味付けをしない。あっさりとした野菜の甘みや旨みが感じられる味付けだ。

 そういえばアイルの味も食材の美味しさを引き立てる絶妙な味付けだったな。


 続いてサブメインのお魚。川魚を濃厚なソースで頂く。最後にメインのお肉。この領は野菜だけではなく畜産にも力を入れており、美味しいお肉が食べられる。

 赤みの濃厚な肉は時間をかけて使った野菜のソースがかかっている。

 そしてデザート。これも領特産の果物だ。手を加えなくても充分美味しい。


 兄様は相変わらず食が細くて、お母様より少ない量しか食べない。それなのにスキルのお陰もあって僕を軽々と持ち上げる力があるのだからそのギャップも凄いんだ。

 またじっと兄様を見ているとお父様とお母様からの視線を感じる。

 お父様が

「居間に移動しようか」


 皆んなで家族の居間に向かう。私は兄様と並んで歩いて行く。居間に入ると僕と兄様は並んで座る。向かいにはお父様とお母様だ。

 二人の目が優しい?

 僕は恥ずかしくて俯く。それに気がついた兄様が

「ラルフ、どうした?」

 僕の頬に手を添えて聞いてくる。

「ふふふっ、仲の良いことだ。お父様も嬉しいよ…ロリィ」

「えぇ、おめでたいわ」

 僕はまた真っ赤になってしまう。それなのにお父様は嬉しそうに

「ロリィ、聞いたよ?ふふっラルフと一つになったんだってな。お父様は嬉しいよ…お前の子供を抱かせて貰えないと半ば諦めていたからな」

「私もよ…ロリィ。でも先ほどのお母様とのキスより激しいのはダメよ?私のロリィですもの…」

「んっ…それはどんなキスだったんだ?私とのキスよりも…」

 コホンと咳払いをして焦ったお父様が聞く。


 お母様は目を細めて笑うと

「あらまぁ…ふふふっ秘密よ…私のシスティ」

 お父様はあんなに体が大きいのに小柄なお母様にタジタジだ。やはり母は強いのか。

 でも私も気になる。激しいキスって…?

 私は兄様を見る。兄様は優しい顔でお母様を見た。

「秘密よ。あの話もね?」

 あの話って?お兄様は少し頬を染めてお母様を見ている。

 お父様はお母様を抱き寄せてキスすると

「後でじっくり聞かせて?」

 だって。お母様は笑うばかりで答えない。魅力的な笑顔で

「後でね…?システィ…」


 僕は兄様の手を握り目で訴える。兄様はまた少し困った顔をして頷いてくれた。あぁ、兄様はやっぱり僕に甘くて優しい。その手で髪を梳いてくれる。

「で、何回したんだ?」

 お父様以外が固まる。お母様が暴走を止めてくれると思ったら目を輝かせ

「恋バナ、これが俗にいう恋バナですのね?息子とこういう話が出来るなんて…」

 ふふふっと妖艶に笑う。

 ダメだ、二人が目を輝かせて僕たちを見ている。

 兄様を見ると嬉しそうに2人を見ている。え?予想外の反応。すると兄様が

「父上と母上には心配を掛けて…まだ一度だけ…」

 ふわりと優しい微笑で二人を見る。

「そうかそうか」

「まぁまぁ…」

 大喜びの2人。兄様、素直に答えるんだ?いや、待って恥ずかしいよ。

 優しい顔で僕を見つめて…耳元でラリィ?と呟く。

 

 もうお父様とお母様は身を乗り出す勢いだ。いやもう乗り出してるし。

 頬に熱が集まって恥ずかしい。

 僕の頬を撫でながら優しい目で僕を見る。

 ん?って首を傾げるその顔はとてもきれいで大好きな兄様の優しい顔。思わず目が潤んで兄様の手を握り締める。

 見つめあっていると

「私たちお邪魔かしら?」

「ん、いやしかしもう少し見ていたいな」

「まぁそうね、眺めていましょう」

「息子たちの成長を一緒に見よう、ルシー」

「あらやだ、システィ。うふふ」

 そこで濃厚なキスをする両親。

 

 僕は兄様にキスする。少し困惑した顔で、でも優しい目で僕を見ている。

 僕は堪らなく兄様が好きで、だから…。今日も一緒に…。

 誰にも渡さないよ?

 その肩に顔を埋めて首元にキスをする。甘えるように抱きつけば優しく髪を撫でてくれる。

 兄様はいつだって僕を甘やかしてくれる。これからもずっと…僕だけを甘やかしてね。


 いつの間にかキスを終えて僕たちを優しく見ているお父様とお母様。

 2人にとって大切なのは圧倒的に兄様で、その相手がたまたま僕だった。僕の事だってもちろん大切にしてくれるけど、それは兄様を思えばこそ。

 兄様が僕を特別扱いしている限り、僕は二人にとっても大切な存在。

 

 それでいい。僕らはみんな兄様が大好きだから。




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