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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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92.その頃のラルフ

ロルフたちの話しがもう少し続きます…

 ラルフがあのことを知っていたことも。

 流石に母上も驚いたようだ。

「そうなのね…。気を付けていても、やはりどうしたって違ってしまうわ。だって私たちの子供はロルフだけだもの…」

 母上は悲しそうに笑う。そう、二人は引き取りたくなかったのだ。私が我が儘を言ったから。

 だから…。


「私が…父上と母上に負担を…」

 母上は私を見つめ

「そんなことないわ。ねぇ、私たちの大切な子供は…とても優しい子なのよ。それを誇りに思うことはあるけど、迷惑なんて思ったことないわ」

 私の頭を抱き寄せて言う。

「母上…」

「だからそんな顔しないで…。ラルフだって大切なのよ?あの子は本当に努力家で…」

「母上、ラルフの出生の届出…内容を知ってる?」

 母上はしばらく無言で私の髪を撫でていた。

「それを何故聞くの?」

「知ってるんだね。父上が?」

 ふっ。息を吐くと私の顔を両手で挟み目を合わせる。


「ラルフの想いをあなたは理解してる?」

 私は目を伏せる。最近知ったばかりだ。

「そうよね?あなたはいつでもラルフの兄であったから…。でもあの子の想いはそれを超えていたわ」

 そこで一度黙って私の顎にキスする。

「もしかして…ラルフがあなたに兄以外の好意を抱いて、あなたが応えるのなら。その可能性を残そうって…お父様とそう決めたのよ」

 やはりそうだったか。

 ラルフの出生の届出は父上の妹、その子供として出されている。そして同時に父上と母上の子供として養子縁組を行った。


 これは特例制度に基づく届出だ。

 実の兄弟ではない場合。5才未満での届出に限り、成人してから養子先の兄弟姉妹と婚姻出来るという制度だ。

 父上はこの届出をすることで私とラルフの結婚の可能性を残した。

 ラルフはそれに気がついているのか?


「あなたはどう思っているの?」

「弟としか…でも」

 私の髪を撫でながら母は続きを待つ。

「ラルフと…関係を…」

 流石に母上に話すのは恥ずかしい。言葉は途切れたがきっと伝わっただろう。

「まぁ、そうなの…ラルフが?」

 驚きながら聞かれた問いに頷く。

「ラルフはあなたと結婚したいと言うわね。お見合いの予定は取りやめましょう」


 母上は私を見上げ

「本当にいいの?他の人を選ぶことは出来なくなるのよ?」

 私はアイルの顔を思い浮かべた。

「どうしたいのか、まだ分からない。でもラルフには私が必要で…私はラルフが大切」

「あなたがそれでいいなら。あなたの子供がこの家を継ぐのね。嬉しいわ」

 そう言って唇にキスされる。

「そういえば小さな頃からラルフにキスをねだられていたわね。あれは確信犯かしら?」

 ふふふと笑う。

「あなたはそっち方面には疎いから心配していたのよ。安心したわ」

 また唇にキスをされる。そして優しく笑う。

 母上には敵わないな…。いつまでも小さな子供じゃないのに。困った顔をすれば

「いつまでだって私たちの可愛い子供よ」


 そう言って冷めた紅茶をコクリと飲む。

「今頃、ラルフがお父様と話をしているかしら?」

 仕事の話だと言っていたがどうだろうか?

 その後はあの紫水晶のアクセサリーを母上にプレゼントする話で盛り上がった。髪飾りとネックレスが欲しいと言っていた。

 護身用に指輪とピアスもいいかな?

 そんな風に会話を楽しんだ。母上は言葉の少ない私とも苦もなく会話する。私の気持ちを読み取るのが上手なので気楽だ。

 もし母上みたいな女性と出会っていたら好きになったのかもしれない。

「私の顔に何かついてて?」

 じっと見つめていたらそう聞かれた。

「母上みたいな素敵な女性と出会えたら…私は好きになったのかと…」

 母上は驚いた顔をした後にふわりと笑って

「まだラルフが来る前、あなたお母様と結婚するって言ってたのよ。覚えてる?嬉しかったわ」


 私は恥ずかしくて顔が赤くなる。覚えてはいないけど、この年で似たようなことを考えていたのが居た堪れない。

「嬉しいわ、私のロリィ」

 思い切り抱きついて唇に熱烈なキスをされる。私も母上の華奢な体をそっと抱きしめる。

 ふふふっ大きくなったわね。そう言って離れた。

 私はきっと、とても心配させていたんだ。

 母上が喜んでくれたなら良かった。穏やかに微笑んで母上は立ち上がった。


「また夕食で会いましょう、ロリィ」

「母上、また後で」

 軽くおでこにキスして母上は部屋を出て行った。



 その頃、ラルフリートは…。


 私はお父様と執務室に入る。

 向かい合わせのソファに座るとお父様が私を見る。

 私は背筋を伸ばして

「長らく留守にして申し訳ありません」

 お父様は腕組みをして

「何があった?」

「私が…アイル君に兄様に仕えればいいと言って…。やがて伯爵となるなら、彼がその活躍を支えてくれると…」

 お父様は私をじっと見たまましばらく黙っている。


「彼には聖獣様が付いている。分かっていて言ったのだな?」

 私は答えられなかった。分かっていたのに、勢いであんなことを…。俯いてしまう。

「お怒りだろう。契約者であるアイル君が聖獣様の全てだ。ふぅ、なんて不用意な発言だ。お前は次期領主なのだぞ?ロルフの採掘にしても、彼の力は必要だ」

 言われる通りだ。結局、私が兄様の足を引っ張ってしまった。


「どうなったのだ?」

「ハク様はお怒りで…私はあれからアイル君に会えていません」

「ロルフはさっき彼と相談すると言っていた。会えたのだな?」

 私は頷く。

「兄様は私の代わりに謝ってくれました。私は何てことを…」

「ロルフは何と?」

「気にしなくていいと…」

「ロルフらしいな…昔からお前には甘い」


「それでその…兄様がずっと側にいてくれて。不安で…兄様と…その…」

 驚いて私を見る。無言で続きを促されたので

「嫌なら抵抗してと…でも兄様は受け止めてくれました」

 お父様は目を瞑ってしばらく動かなかった。どう思われただろう?最愛の息子と不義の子である私との関係を。

「知っていたのか?」

 お父様は何をとは言わなかった。でももちろん私の本当の親のことだろう。無言で頷く。

「そうか…」

 また目を瞑って考える。そして

「ラルフ、お前の貴族院への届出は養子となっている」

 私はやはり…と思う。

「私は…兄様と?」

「あくまでも可能性として残しただけだった。まさかそれが…」


 また黙り込むお父様。

「ロルフ次第だが、私は賛成だよ。もちろんお母様も同じ気持ちだろう」

 私は涙が出そうになって慌てて瞬きする。兄様を…兄様と…ずっと…。

「予定していたお見合いはもう断ってある」

 えっ?話をする前から?

「先ほどのお前たちを見てな。すぐに手配した」

「分かったのですか?」

「いや、勘だな。二人の姿を見て何かが変わったと思った。あの時の私を褒めてあげたいよ」

 お父様はそう言ってウインクした。

 私は恥ずかしくて真っ赤になってしまった。


 お父様は嬉しそうに

「初めてだろ?どうだった?ロルフは」

 さらに顔を赤くしてしまう。

「とてもきれいで…最高でした…」

 お父様ってば…あぁ、思い出してしまった。

「くくっ、年頃の息子だな…いやぁ楽しい。後でロルフにも感想を聞かないと。で、気持ち良かったか?」

 お父様…そんなこと聞くの?

「そうか、やっと息子たちがそっちに目覚めたか。密かに心配していたんだ。あまりにも潔癖過ぎないかとね。ふふふっロルフはどんな反応をしていた?」

 お父様…思い出すから…。

「恥ずかしがってた?あぁ、ロルフは恥ずかしいという感情がないか…」

 嬉しそうに笑ったお父様は悪い顔をして私を見ていた。

「で、何回した?初めてだし夜通しかい?若いからなぁ」

 まだ続くの?その話。もう恥ずかしくて顔が上げられない。

「あぁ、そう言えばいつ二人は?昨日とか…?」

 目を爛々と輝かせて聞いてくる。

 私がその目線から目を逸らすと、ふむ…昨日か。


 えっ?何で分かった…?驚いていると

「当たりかい?ロルフはまだ身体が辛いかな」

 もうニコニコを通り越してニヤニヤしている。

「わ、私が留守の間の仕事は…」

 話題を変えてみた。まだニヤニヤしていたけど、話に乗ってくれた。

 はぁやっと終わった…。

 それからは仕事の話、感謝祭の屋台の話をして部屋に戻った。


 疲れた。兄様の部屋に行きたいけど、今行ったら押し倒してしまいそうだ。お父様があんなこと聞くから。

 兄様の体をその肌の感触を重ねた体の温もりを…思い出してしまった。

 お父様ってばあんなに嬉しそうに息子に初体験を聞くとか…。顔から火が出そうだった。

その後、お母様にも質問責めにされることをラルフはまだ知らない。



お読みくださりありがとうございます



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