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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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87.白いローブ

「あぁ、余計なことだな…」

 とニヤリと笑う。

 頬を赤く染めたままやっぱりフードが欲しいと思うのだった。

 ギルマスがカバンから何かを取り出して私に差し出す。受け取るとそれは白いローブ?

「お前に貸してやる。フェリクスからだ」

 何で?フード付いてるし便利だとは思うけど。

「これ以上、目立たせないためだ。認識阻害が組み込まれている」

 戸惑っていると

「ロルフからの指名依頼もあってそれなりに目立ってる。これ以上、目立つとお前が危険だ」


 ギルマスやフェリクス様はハクのこと知らないからか。

「そうだね、必要だから借りておきなよ」

 イリィもそう言う。

 着てみると軽くて体をすっぽりと覆ってくれる。フードを被っても不思議と視界は悪くない。

 これで目立たないならいいのか?

「白って目立たない?」

「お前の色と相性がいいから大丈夫だ。屋台が上手くいけば…報酬としてお前にそのローブを与えるそうだ」

 高そうなのにいいのかな?自分でも作れるし…。

「貰えるもんは貰っとけ。それから住む場所な。いつまでもここって訳にはいかないぞ。ただでさえスーザンとリアは目立つからな。フェリクスの所は色々あって無理だ。イザークの所はフェリクスが反対するし、ロルフん所が一番いい」

 フェリクス様とかイザークさんはこちらもちょっと嫌かな。ロルフさんはいいけどラルフさんが…。

 でも部屋とかあるのかな?


「ロルフは子爵の爵位待ちで侯爵家の長男だ。住む家が貧相な訳ないだろ。その内、母方の伯爵家を継ぐこともほぼ決まっている。身持の関係もあって年頃の女はいないから安心しろ。お前らそっちも油断するなよ?アイルはボケッとしてそうだからな」

 酷いな、ボケッとなんかしてないのに。

 むっとした顔をすると頭を軽く突かれる。

「無自覚かよ、おい」

 何が?首を傾げる。

「そういうの…他の人に見せちゃダメ…。可愛いんだから」

 イリィまで…。



*******



 今日はフェリクスからアイルに渡すローブを預かって来た。アイツはもうギルドでかなり有名になってしまった。ロルフの指名依頼が発端だがあれだけ会議室に呼び出されれば周りの目が集まるのは必然だ。

 一見すると地味で目立たないが、その珍しい色と整った顔立ち、上品な立ち振る舞いと仕草が荒くれたヤツらの目には新鮮だ。


 細くて白くて儚げなその見た目と整った顔立ち、さらには無自覚な有能さ。危なくて仕方ない。

 フェリクスもイザークも同じ意見だったから、ローブの貸し出しとなったのだ。

 本当はこの領地の領主であるフェリクスの所に住むのがいいのだが、アイツんとこはな…。

 イザークの所はフェリクスが反対するだろうし。掃除婦を雇おうとしただけで大反対だったらしいからな。アイツもちょっとな…まぁ複雑なんだ。


 残る選択肢はロルフだ。アイツの所はそもそも夫婦者以外に女性がいない。しかもかなり年配のだ。

 アイツらが住むにはいい環境だろう。ただな、人手が足りない。護衛と常識を教えてくれる誰かを手配して貰うか。

 あのイーリスもなんだか危なっかしいからな。


 常識人で人当たりが良くてそれなりに強くて。

 そんなヤツいるか?イザークならまぁ当てはまるがアイツはなぁ。

 フェリクスに手配してもらうか。

 どちらにしても屋台を2ブース使うとなるとスーザンとリア、イーリスとアイル、レオとルドだけでは回らないだろう。

 手伝いも出来るようなヤツ、交代要員も含めて2人は欲しいな。

 アイツらが目立たないような、自分が目立つヤツ。

 もう1人は目立たないヤツ。

 

 イーリスもアイルも基本、自分から行くタイプじゃない。なら積極的に引っ張るタイプの…年上がいいな。

 アイツらまだ若いから20代後半か、もう少し上でもいいか。探索者で使えそうなヤツは…まぁいる、だがなぁ。

 帰ったらイザークと相談だな。

 

「外に出るときはローブ着けろよ」

 ひとまずそれだけ言って帰った。

 ギルドに戻ると感謝祭に関連する様々な書類が山と待ち受けていた。

 もう3週間切った。

 本格的に始動しないと。


 

 ちなみに感謝祭とは、ある程度の規模の町で行われている祭りだ。

 大地の恵みに感謝して執り行われる祭りで、南の町から順番に始まる。

 実りの時期よりも前に行われるのは収穫期は忙しいからだ。

 豊穣の祈りを捧げる祭りではあるが、この町には神殿が無いので教会で農業ギルドの幹部連中や農業に関連する仕事のヤツラで祈りを捧げる。

 一般人は基本、祭りを楽しむだけだ。

 もっとも探索者ギルドと商業ギルドはそれぞれ役割がある。

 

 まずは屋台だ。

 中央広場に所せ狭しと屋台が並ぶ。

 食べ物以外に商品も売られる。

 ブースの割り振りや出店の受付は商業ギルドが一手に引き受ける。

 当日の人員整理や町中の巡回は探索者ギルドが請け負う。

 農業ギルドは教会に祈りを捧げに来た人たちの誘導と教会主催のバザーの手伝いだ。

 

 感謝祭の売り上げの一部はそのまま教会運営の孤児院に寄付される。

 さらにその一部は貧民街の炊き出しにも使われる。

 そうやって町全体で楽しむイベントでもあるのだ。

 

 探索者ギルドのマスターであるバージニアは当日、ギルドが設営する中央広場横のテントで待機だ。

 祭りに乗じて犯罪を犯すものがいる。裁く権限はないから捕まえるだけだが、いかついのが目を光らせているだけでも脅威だ。

 そして屋台にも一定数の探索者が出店する。

 近くで見張った方が効率がいい上に稼げるので、器用なヤツとか美味い飯が作れるやつは何組か出店するのだ。

 貯めこんだ発掘品を売るやつもいる。

 

 こうして町の各ギルドは大忙しだ。

 今年は領主であるフェリクス後援の出店があるのだ。注目されるのは目に見えている。

 そういや、レオとルドは貧民街のヤツだったな。アイツらもロルフの所に引き取った方が良さそうだ。

 まだ小さいが利発だし根性がある。

 ルドは料理が上手で手伝いも出来るだろう。そのまま屋敷を回す人出として雇うなら安心だ。

 後から親戚とか来たらやっかいだからな。孤児ならその点、変なものが付いてこない。

 うん、それがいいだろう。これもイザークに言っておこう。

 

 紙の山を片付けながらイザークが来るのを待つ。

 アイツも普段の仕事と感謝祭の準備、フェリクスとの連絡で忙しいだろう。

 優秀な人材だからな。

 紙の山が半分に減ったころでイザークが部屋に来た。

「何か用事だと聞いたが?」

「あぁ座ってくれ」

「アイルの事か?ローブは渡せたな?」

「それは大丈夫だ。白って目立たない?とか聞いていたが顔を出している方が目立つ」

「確かに。すでに注目されてるから」

「それな。今は皆んな感謝祭でバタバタしてるから大丈夫だろうが」

「滞在先はロルフ様の?」

「正式にはロルフが帰ってきてから確認するが、決定だろうな。ロルフにとってもその方が安全だ。それでだ、フェリクスに誰か人を派遣して欲しい。護衛兼アイツに常識を教えられるヤツだ。2人は欲しい」

 

 少し考えたイザークは

「それなら領軍の騎士から選ぶのが良さそうだ」

「アイルを止められるヤツだぞ?」

「物事に動じないで処理できるような有能な者なら…うん、大丈夫。いる」

「詳しい事情話さないとして、だ。1人は目立つヤツがいい」

「あぁ、カモフラージュか。でも2人だと交代要員が足りない」

「残りはギルドから打診する。ロルフが抱えるのなら金はそちらから出せるだろう。指名依頼とすればいい。誰がいいと思う?口が堅くて信頼出来て強くて常識人。アイツに振り回されないような個性の強いヤツ」

「ブラッドと…サリナスかな。他はアイツに絡みそうで。ただあの2人は受けてくれるか…」

「癖が強いからな。気に入らなきゃ指名依頼も平気で断りやがる」

「信頼は出来る」

「だな、ロルフに指名依頼を出させよう。その前にアイツらに打診してくれ。後な、ロルフの家で働けるヤツが何人か欲しい。使用人だ。もちろん女は不可。男も妙齢のヤツは避けたい。アイルもだが、イーリス。アイツが顔を隠している理由が気になる。身元のしっかりした男だけにしないと危ない」

「そちらは少し考える。使用人となると探索者からは選べないからな」

「頼んだ。あぁ最後にレオとルドだかな、アイツらはアイルと一緒にロルフの所に預けたい。使用人としてだが」

 頷くとイザークが出て言った。

 

 そのまま紙の山と格闘した。

 今年の感謝祭は色々と荒れそうだ。

 ふぅ、そろそろロルフも戻るだろうか?

 相談したいことがたくさんある、早く帰って来いよ。



感謝際は豊穣祭風のイメージです



※読んでくださる皆さんにお願い※


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