86.実は武闘派
私はなんて非力なんだろうって思ったよ。
「僕も強くなりたい」
「私も剣とか使えるようになりたい」
「僕は剣も弓も槍も使えるけど、どれも中級なんだよな」
えっ、イリィって剣とか使えるんだ。しかも中級って結構すごいことなんじゃない?
「全部中級ってすごいんじゃないの?」
「いやお父様やお兄様たちは全部上級以上だよ。お父様は剣と弓が特級で槍が上級、シア兄様は剣が特級で他が上級、ベル兄様は弓が特級で他が上級。僕は18までしか生きられない予定だったから全部中級なんだよ」
ちょっと寂しそうにそう言う。
確かキルドの文献で見たけど、中級以上でいわゆるプロって認識だったはず。上級とか特級なんてどんだけレベル高いんだろう?
細くてか弱そうなイリィが中級か…なんか地味にショック。
「今僕のことなんか弱そうなのにとか思ったでしょ」
えっ…なんでばれてるの?
「顔に書いてあった」
自分の顔をペタペタしてみる。
「だからそういうのだよ。もう可愛いんだから」
恥ずかしくて、顔が赤くなる。
話をそらしたくて
「どうやったら剣とか強くなれるの?私も物理を強くしたい」
「体力づくりと型の訓練かな」
「誰に教わったの?」
「お父様だよ。お父様たちがこっちにいる間は少し教えてもらえるかも」
「今度会ったらお願いしてみる」
「僕も一緒に訓練するよ」
2人で笑い合った。あぁもう大丈夫。たくさん心配かけちゃったけどきっともう大丈夫だから…本当にありがとう。
やっぱり私の居場所はイリィの隣なんだって、改めて思えたよ。そう言ったらイリィは目を潤ませて僕こそアイの隣が僕の居場所だって思ってるから…帰ってきてくれてありがとう。大好きだよ…アイ。
そう言うと、私の髪を梳いてて優しく頬を撫で…キスをしてくれる。離れてからまた私をじっと見つめて…今度は片方の手で腰を抱いてまたキスを…。
たくさん待ったからご褒美をくれる…?今日は君を抱いてもいい?囁くように耳元でそう聞く。
その声は少し震えていた。
私もイリィを見つめて…頬を染めて頷く。
どちらからともなく抱きあって、キスをして…また抱き合って…しばらくそうして、お互いの温もりを感じていた。
そろそろ夕食かな?と思ったら、ちょうど扉が叩かれた。今日はスーザンが食事を持ってきてくれたので受け取る。
帰ろうとしたスーザンが
「なんだ、そのよかったな」
って。何のことかなぁと思ってるとお前の顔が穏やかになった。ちゃんと話ができたんだろう。良かったな、と。
スーザン、きっとそういうところなんだよ。リアさんがスーザンを大好きだと思っているのは。そう思った。
でもそんな優しい言葉かけたらリアさんに怒られるよ?と言えば苦い顔をして帰っていった。
扉を閉めてイリィとご飯を食べる。良かった。今日はちゃんと食べられてる。イリィを見ていたら、なんだかちょっと恥ずかしそうに食べさせてくれるの?だって。もうその美形な顔でおねだりとか反則だよ?
頬を染めてじゃあ食べさせて?だって。可愛過ぎる。私の大切な人が…。上を向いて悶える私。
気を取り直して、スプーンを持つとあーんして食べさせてあげた。あぁなんて可愛いんだろう。
口の端についていた食べかすを手でとってあげる。恥ずかしそうに俯いた。その密度の濃いまつげがとても綺麗だった。
食器を下げるついでに一緒にシャワー浴びることにする。久しぶりで緊張するけど、嬉しい気持ちもあって、なんだかもじもじしてしまう。イリィを見ると、やっぱりちょっと緊張してるみたいだけど、ふんわり笑ってるからやっぱり嬉しいのかな。
アイが僕と離れた日以降にあったことを全部話してくれた。あの時、アイが呟いた律と言う親友との話。他にもお父様が連れ去られたときの治癒についてとか、地下拠点でアイツにされたこととか…言いづらかったと思うけど、それでも話してくれた。
ハクとの交わりについても…とても特別な儀式なんだと…魔力が融合する不思議な体験だと語ってくれた。
僕はとても嬉しかった、アイが私が帰る場所はイリィの隣だと認識できた…そう言ってくれたことが。
辛い思いをしたのに、それを隠さずに伝えてくれたことが…アイが僕を信頼してくれてるんだってそう分かったから。
僕も待つばかりで苦しかったけど…君はもっと苦しかったんだよね。
今回は側にいてあげられなかったけど、もう離さないから…どんなに悲しいことも辛いことも…全部2人で共有していこう。
アイはそんな僕の言葉をちゃんと受け入れてくれた。そして今日抱いてもいい?って聞いたら、恥ずかしそうに頷いてくれた。
キスした唇は少し震えていたけど、優しく受け止めてくれて…やっぱり僕は君のことがこんなにも大好きなんだよ。
ご飯もまた食べさせてくれたし、一緒にシャワーも浴びれたし。
1週間ぶりぐらいに見るその白くて細いきれいな体は今にも折れそうで…頼りなさそうで…自分の腕の中に閉じ込めて、どこにも行かないようにしたいって思ってしまうほど華奢だった。
前みたいに、お互いに髪と体を洗い合ってシャワーを終える。部屋に戻ると、その温かい体を抱きしめる。今は僕の方が少し背が高くなって、包み込むように腕の中に…。体をしっかりと密着させて、細い腰を抱きしめて。
やっとこうして抱きしめることができた。嬉しくて、何度もその髪を梳き、頭にキスをする。
怖い思いをしただろうから、優しくしてあげたい、そう思うんだけど…でもごめんね?
今日は自分を抑えられないかもしれない。たくさん抱かせて…たくさん感じて…たくさん繋がりたい。
なるべく優しくするからだから許してね…アイ。
手を繋いでベットに入る。僕はアイの上に乗りその顔にたくさんキスをする。手は頬を撫で、首から鎖骨へと這わせる。ボタンを外して着ているものを脱がしていく。僕も脱いで素肌を触れ合わせる。あぁあったかいよ…。僕の体も熱を持って…。
その唇にキスをする。…角度を変えて何度も。アイとなら何度でもしたい。
名残惜しいけど…唇も手を追いかけるように耳から首筋へと降りていく。
うふぅっ…。
あぁ、またそんな可愛い声…。まだダメだよ?僕も我慢してるのに。煽らないで?
んっ…。またそんな可愛い声を出す。待って…僕が…。もう我慢できない。
一緒に…。アイの可愛い反応に暴走しそうになって。
耐えた…。ふぅ危なかった。アイ…もっと気持ち良くなって…?
その細い腰をしっかり掴んで…。アイ…。嬉しいよ…やっと…。
あぁ、可愛い…。何もかも…全てが可愛い。目に涙を浮かべて僕を見ている。またキスをして少し汗ばんで冷んやりした体を抱きしめた。
ねぇ?まだたくさん気持ち良くなろうね…アイ?
結局、ほとんど寝かせてあげられなかった…。僕も眠いけど…隣で安らかに眠るアイの横顔をもっと見ていたくて。うとうとしてはその頬を撫でてうとうとしてはその唇にキスして…。最高に幸せだよ。
その日の夜、久しぶりにイリィと体を重ねた。恥ずかしくて嬉しくて…でも気持ち良かった。
そのまま何度も…恥ずかしい。いつの間にか寝ていたようで、起きたら横にイリィがいて。うっすら隈があるのに圧倒的に美形なのはさすがって思った。
優しい顔でおはようと言ってまぶたにキスをする。
そして残念そうに
「今朝は我慢するよ」
って私の髪を梳きながら言う。頬が熱くなる。
「体は大丈夫?無理させちゃったね」
顔を赤くしたまま
「少し…ダルい」
頬を撫でると
「今日は僕がご飯を食べさせてあげるよ」
首を振る。でも嬉しそうに笑って、ダメだよ?だって。
ちょうど扉がノックされる。さっと服を着てローブとフードを被って扉を開けると朝食を受け取っていた。いつもながらに素早い。
扉を閉めてこちらを見ると嬉しそうに微笑む。
「食べさせてあげる」
いや、大丈夫。そう言いたいけど起き上がれない。机にトレイを置くとベットのそばに来て起き上がらせてくれる。そのままトレイを持って来てにこやかに
「はい、あーんして?」
美形のあーん…恥ずかしい。そのまま目を閉じて口を開ける。怠い体にスープはとても美味しかった。
朝からイリィはご機嫌で、私は朝食の後はまたベットで休んでいた。少しまだ体がツラい。そういえばハクとの交わりは怠くなるより調子良くなるんだよね。
不思議。
そんなことを考えながらうとうとした。
お昼ご飯もスーザンが用意してくれて。またイリィのあーんで食べさせて貰って。1人で悶絶していたのは内緒。
食べ終わってまだ少しボーッとしていると扉を叩く音。イリィが開けるとスーザンがギルマスが来てるという。お前らに用があるから降りてこい、と言って去っていく。
イリィと顔を見合わせて頷く。一緒に部屋を出て階下に降りると食堂にギルマスが座っていた。
私たちを見て
「具合悪いのか?」
頬が赤くなる。悪くないけど…。
「あぁ、余計なことだな…」
とニヤリと笑う。
いつもお読みくださりありがとうございます
いちゃいちゃ回でした…
※読んでくださる皆さんにお願い※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪




