84.それでも
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いつもお読みくださりありがとうございます
本日も2話投稿します…
しばらくもだもだしますが温かく見守ってください
僕は…アイ、君が好きだ。どうしたって離したくない。だから顔を上げてアイを見る。僕を心配そうに見ている。今度は伸ばした手をそのままアイの頬に添える。少しビクッとしたけど拒否されなかった。
「僕はそれでもやっぱりアイを…大切にしたい。僕の唯一だから…」
イリィの潤んだ目から涙が溢れる。私はその涙がとてもきれいだと思った。その涙を指で拭う。
イリィは私の手の上に自分の手を添えると私を真っ直ぐ見た。
「僕を…受け入れて。すぐじゃなくていいから。どれだけでも待ってるから…アイ、君を心から大切に想っているよ」
嬉しかった。私の全てを否定しないでいてくれることが。頬に添えられた手にキスをする。イリィはまたふわりと抱きしめてくれた。
「何もしないから…今夜…隣で寝ていい?」
私は頷く。私もイリィの温もりが欲しい。寄り添うことで少しずつ怖さがなくなれば…また愛し合えるかもしれない。だってやっぱり私はイリィが大切で大好きだから。
しばらく抱き合ってからイリィが私を解放する。ハクはいつの間にか犬に戻っていた。
ちょうど扉がノックされ、スーザンが気を利かせて昼食を持って来てくれた。有り難くイリィと食べて、屋台の話やマークについて話をしていたらあっという間に夕食の時間だ。食事も終わり、シャワーを交代で浴びるとイリィが緊張した顔でそっと私を抱きしめる。
手を引かれてベットに入り、横に並ぶ。手を繋いだまま目を閉じた。動く気配がしておでこに軽くキスをされる。
「おやすみ…大好きなアイ」
「おやすみ…イリィ」
私は赤くなりながら小さな声で呟いた。
やっぱりこの温もりが横にあると安心する。その温かさと懐かしい匂いに泣きそうなくらい幸せだった。
緊張して眠れないかと思ったらあっさりと落ちて行った。
アイの手を握り目を瞑る。本当はその柔らかい唇にキスしたいけど今は我慢する。こうして同じベットで寝られるだけで…。本当はその細い体を思い切り抱きしめて…一つになりたい。
でも…流石にハクから聞いたことが衝撃過ぎて、まだ呑み込めない。
特別な聖獣に選ばれるアイ。君はどんどん手の届かない所に行ってしまいそうで…その手をまたしっかりと握る。体の右側に感じるアイの温もりとその清らかな匂いに包まれて僕は目を閉じた。
目を覚ますと視界には淡い金髪。何だかこの光景も懐かしいな…。寝ている間に自然とイリィの抱き枕になってたみたいだ。でもその重みと温かさが心地良い。
イリィのまぶたが震えてゆっくりと目が開く。
まだ眠いのか…瞬きをして私を見るとふわりと笑う。無邪気で警戒心のない笑顔。そのまま軽く体を起こすと当然のように私の唇にキスして頬ずりするとまた私の胸に頬を押し当てて寝始めた。
びっくりした。あまりにも自然にキスされて…。こんな無防備な顔して。ねぇイリィ…君は自分の顔がどれだけ特別か分かってるの?
私はその密度の濃いまつげを見る。目を閉じていても圧倒的に美形なのに…目を開けたらそれはもう…。
そろそろ自覚して?心臓に悪いよ。
その頬をそっと撫でてまた目を瞑る。もう少しこの幸せな時間を感じたくて…。
寝ている間に癖なのか…アイを抱きしめて寝ていた。体を重ねなくても側にいるだけでこんなにも幸せなんだと改めて感じる。自然な感じて目を開けると目の前には大好きなアイの顔。
無防備なんだよな。そんなところがアイらしくて…。本当に君はこんなにも魅力的なのに。無自覚だから心配だよ。
寝ぼけたふりをして、アイの唇にキスをする。少しだけ震えていたことは秘密だ。そのまま頬ずりしてアイの胸に顔を預けて目を閉じた。もう少し君を感じさせて…。
扉を叩く音で目が覚める。そっとイリィの腕から抜けると扉を開けた。そこにはスーザンじゃなくてリアさんがいた。
朝食を受け取ると目配せされたのでトレイを部屋に置いて扉を閉めて外に出る。
「大丈夫か?」
ん?何が…?
リアさんは部屋の方を見て
「何かあったんだろ?」
え?驚いた。昨日、ほんの少ししか2人でいるところは見てないのに?
「シャワー別々に浴びてた」
それだけで?…凄いな。感心してしまった。
「なんか、お互いに距離があるというか…。僕がスーザンの元を離れる時と雰囲気が似てたから」
それは…離れたいと思ってはいないけど、まだどうしていいか分からない。
黙って私を見ているリアさん。
「話ならいつでも聞く。スーザンが気にしてるし、僕もね…」
「リアさん…」
「リアでいい」
「リア…ありがとう」
軽く肩をすくめて戻って行った。心配させたかな。元気出さないと…まずは感謝祭の屋台だな。
そう思って部屋に戻ると不安そうな顔でイリィがベットに腰掛けていた。
私を見つけると幼い子供のように手を私に伸ばす。イリィの側に行くと腰に抱きついてきた。
「起きたらいなくて…」
堪らなくイリィが愛おしくなってその頭を抱き寄せ髪を梳く。されるままのイリィ。しばらくして軽くそのおでこにキスして声をかけた。
「ご飯食べよう」
イリィはコクンと頷いて椅子に座る。私はいつも通り床に座って、ハクが隣にくっつく。その首周りをもふんと撫でて朝食を食べ始めた。
食べ終わってイリィを見るとほとんど手をつけていない。
「食欲ない?」
頬を染めて
「…せて…」
ん?聞こえないよ。首を傾げると
「…食べさせて…」
朝から超絶美形の上目遣いおねだり…断れる人がいたら教えて欲しい。もちろん、即立ち上がってアーンして食べさせたよ。
何だろう?これ…。ご褒美なの?苦行なの…?
朝から刺激が強い。
イリィ…自分の顔の価値、分かっててやってる?
目が覚めたらアイの温もりがなくて焦って起き上がる。朝食が置いてあるから受け取った?
部屋にアイが戻って来る。思わずアイを見て
「起きたらいなくて…」
子供みたいなことを言ってしまう。慌てて駆け寄って来たその細い腰に抱きつく。すると頭を抱きしめてくれる。しばらくアイの温もりと匂いを堪能していたらご飯食べようと言われて椅子に座る。
床に座って食べるアイを見る。あぁ可愛い。眺めていたらアイは食べ終わって僕を見る。
食欲ないの?と聞かれた。
食欲はある…。でも…思わず口から出た言葉は
「食べさせて…」
言ってからまた子供みたいなこと言って…と慌てた。でもアイはすぐに立ち上がると僕のそばに来てスプーンを持って…アーンしてって…。恥ずかしい。でも凄く嬉しい。アイが食べさせてくれるスープはいつも以上に美味しかった。
こんなこと言っても受け止めてくれるアイはやっぱり僕の大好きな人だ。
食べ終わると僕を見て大丈夫?という風に首を傾げる。その顔が可愛すぎて思わずキスをした。
アイは目を開いて…その後恥ずかしそうに笑った。
今、笑ってくれた?アイ…その頬を撫でる。少しだけ困惑した顔をして…でも避けなかった。
やっぱり僕はアイが大好きだよ?もう一度だけ…。触れるだけの軽いキスをしてから着替える。
アイも真っ赤だけど僕も心臓が煩いよ。またこんな新鮮な2人もいいかもね…。
その後、午前はスーザンたちとパンの味付けについて調整。僕は味見がかりとして参加。マークも考えないと。
お昼を挟んで午後には既製品の容器候補が来たので皆んなで料理を入れたり、飾ったりして吟味した。
マークはまだ決まらない。
ちなみにここゼクスの宿のマークは剣だ。交差している剣。貴族の紋章はマークに入れないので最後は剣とアイの犬(狼?)、僕の女神となった。でも容器を作らない僕は入れない方がと思ってそう言うと、スプーンの曲線は僕の作品だからと。こんなに美しい曲線はイリィにしか作れない。スプーンだけは絶対に作るって言うから。
だからアイ…君のそういう所だよ?僕を離さないのは…当たり前のように僕のことを認めてくれる。
本当にどうしようもなく愛おしい。
最終的に女神が腕に犬(狼?)を抱き、空いた手に剣を待ち胸で交差するデザインにした。
一応、フェリクス様やラルフ様に確認は必要と言われているが…目を瞑る女神は少しだけ僕に似ていて嬉しかった。
マークはアイがラフ画を書いて僕が清書して完成。
そこまで難しいマークではない。
どうやって皿とかに描くのかと思ったら判?を押すって。判て何?って聞いたらサクサクと見本を木で作ってくれた。
凄い!輪郭をなぞる様になっていてインクを付けて押すんだって。これなら誰にでも出来る。と思ったらスーザンに
「おい、またお前は!簡単に作るが意匠登録どうすんだよ?」
「意匠登録?」
「こんなの見たことないぞ!おい、ギルド行くぞ」
そのまま担がれてギルドに直行だった。あまりの素早さにリアさんですら引き剥がさなかった。
ゴツいスーザンに担がれてギルドに入る。バァン!
凄い音したけど扉大丈夫?あ、大丈夫みたい。
イザークさんが無言で会議室を指す。そのままカウンターの中を移動して行く。
私は担がれたまま会議室に運ばれた。後からリアとイリィも合流。当然、ギルマスもやって来た。
「おい、今度は何やらかした!」
なんでやらかす前提?
下ろしてもらった私が首を傾げるとスーザンに頭を叩かれる。
「やらかしはコイツの専売特許だろ」
酷い言われようだ。やらかした記憶は…少ししかないよ?
でもまさか判ごときで大騒ぎするなんて…。
イリィを見ると…なんか視線が優しい。くっ、イリィまでそんな顔するなんて…。
「で、何した?」
何で私に聞くの?目線を逸らすとスーザンがため息をついて試作の判とインク、紙を出す。
ギルマスは?な顔したけどイザークさんは凄い勢いで判を手に取るとインクをつけて紙にポンと押した。
そのまま固まっている。なぜ?
横ではギルマスが目って丸かったんだねってくらい目を見開いてる。なぜ?
「お、おま…」
はぁぁ。盛大なため息。
「すぐに商業ギルドに行きます。アイル行くよ!」
何でっ?て顔して見てると腕を取られてイザークさんに連れられて部屋を出る。後ろから判を回収したスーザンとリア、もちろんイリィも付いてくる。
不思議そうにイザークさんを見上げていると
「何やからしたか、自覚ないのか?」
頷く。
「俺の地元では当たり前だったから」
ふぅぅ。
「君の地元の当たり前はこの町の革新だよ」
まさかそんな…と笑い飛ばそうとしたらイザークさんの真剣な目が見えて。ヤバいの…?
縋るようにイリィを見れば、困ったように笑う。思わずしょんぼりだ。先にイリィに聞けば良かった。
こうしてドナドナされた私は商業ギルドに連れてこられた。
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