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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
78/419

78.宿へ

 ハクが体を起こす。

『森の入り口に馬車が来た。向かった方がいい』

 その言葉で皆はすぐに支度をする。と言ってもほとんどカバンやポーチに入っているから、お昼ご飯の片づけくらい。

 私がささっと綺麗にして収納したら終わり。

「行けるか?」

 ファル兄様の言葉に皆が頷く。


 建物を出て森の入り口に向かう。確かに複数の気配。馬車も?

 ファル兄様を見れば

「私たちの馬車は宿に置いたままだ」

「宿に寄らないとだね。急にいなくなってしまったから」

 そうして皆で歩いていたら、道の向こうから誰かが走って来る。

 誰?と思ったら

「お前ら無事か?いや、聞いてはいるが心配で。アイル!」

 ギルマスが大きな声で呼ぶ。私を見つけると駆け寄る。上から下までじっくり見て

「顔色は悪いが大丈夫そうだな?」

 私はしっかりと頷く。

「地下のアジトには別のヤツらが向かって捕縛済みだ」

 そっか…少しは安心かな。ギルマスが私をジッと見る。

「ロルフたちも来てるぞ」

 ?何で?

「この間のことをな…」

 と言いかけてファル兄様たちに気がつく。

 イリィが

「僕の家族」

「おいおいマジかよ。美形の見本市か?ここは」

 ギルマス…いいこと言うね?もちろんイーリスはフード被ってるよ?でも他の家族は顔が見えてるからね。


 優しくて包容力があるファル兄様

 涼しげイケメンのシア兄様

 儚げな美人のベル兄様

 ダントツの美形はもちろんイリィ。

 うん、眩しいね…。私は地味顔で良かったよ。そう切実に思った。だってほら、目立たないから。


「俺はゼクスの町で探索者ギルドのマスターをやってるバージニアだ。よろしくな」

「これは丁寧な。イーリスの()のファーブル、こちら()イーリスの兄たちだ。こちらこそよろしくな」

 しれっとあなた兄宣言してますが?

「おう、とにかくだ。アイルはあの宿に行け。ロルフたちはあそこにいる」

 するとハクが念話で

『会わなくていいよ、アル』

 ハク…。私は…ラルフ様に会いたくないよ。

「…会いたくない」

「おまっ…はぁ。まぁそうだよな。あれはあっちが悪い。無理に会わなくてもいいから宿へ。話もある」

 私はハクを見る。仕方ないという顔をするので頷いた。


「部屋はイーリスと一緒でいいよな?」

 私は返事に困った。するとファル兄様が

「久しぶりに会えたからイーリスは私と。宿はとってあるから大丈夫」

「おう、なら移動するか」

 私はチラリとイリィを見る。複雑そうな顔をしていた。ごめんねイリィ…もう少し待って。


 森を出るとそこには馬車が1台止まっていた。

「窮屈だが全員乗れる」

 ギルマスも?無理では…。

「俺は御者台だ」

 何で分かるのかな?何も言ってないのに。

「お前は顔で言ってんだよ」

 解せない。


 するとハクが

『アルは僕に乗って』

 そう言って伏せる。しっぽが揺れている。可愛い。私もそのほうがいいから

「俺はハクと一緒に行く」 

 その背中に乗る。柔らかな毛に掴まると走り出した。

 すぐに宿に着いたけど、通り過ぎてユーグ様のところに向かう。


(来たの)(来たの)

(愛し子来たの)(聖獣様たちも来たの)

(ユーグ様を守ってくれてありがとう)

(ユーグ様起きて)(ユーグ様)


 ざわざわと精霊たちが言う。精霊たちは無事だったんだね、良かった。

(僕たちはただの弱い精霊)(聖なるものじゃない)

(聖なるものはユーグ様)(ハク様)

(僕たちは違う)


 そうなのか…。

『よく来たね…私の愛し子とハクよ。そしてありがとう』

「ユーグ様…良かった。私はユーグ様に心を癒してもらいました。少しでもお役に立てたのなら…」

『君のお陰だよ。私は大切なものを見失う所だった…もう大丈夫』

 でもユーグ様は木から出て来ない。

『まだ完全に癒えてないからね、木から出られないんだ、でも心配いらない』

 そんなに?大丈夫なの…。

『私の愛し子は本当に優しいな。大丈夫。君が生きているだけで私の心は癒される。どうかその手で私に触れてくれないか?』


 私は生命樹にそっと手を触れる。そしてその幹を撫でる。

『あぁ、愛し子の慈しみを感じる…ありがとう。囚われかけた私を救ってくれて…』

 ふわりと頬と唇を撫でる風を感じる。あぁ、ユーグ様だ。私は見上げるとその幹に寄り添い体を預け、頬を当てる。

 ユーグ様の温もりを感じた。

『私もアイルの温もりを感じるよ…アイル、ハクとの新たな契約が成されたね。やがて子が成る。白銀狼と人の子はまた白銀狼なのだよ。めでたい…お祝いを』

 そう言ってまた柔らかな風が私を包んだ。


 私は体を離すと、また来ます…そう呟きハクとブランと共に宿に向かった。

「ハク…子供が出来るんだね」

『そうだよ。白銀狼の子が産まれる』

「なんか恥ずかしいけど嬉しい…」

『僕も!』ブンブン振られるしっぽがとても可愛い。うん、やっぱりもふもふだね。

 その体を撫で回した。


 宿に着くとちょうど馬車がやって来た。

 皆で宿に入る。私とハク、ブランは部屋に案内される。他の人たちはすでに部屋が割り当てられているので一旦解散する。

 夕食は各部屋で取る。その後ギルマスが話しがあると言うので会って、今日は泊まって明日帰る予定だ。


 私は部屋に入るとハクに抱きつく。もふもふさわさわスーハースーハー。あぁ、落ち着く。ハク…大好き。その鼻にキスすると口もとをペロリと舐められた。

 ブランは肩の上ですりすりしてくる。ブランもふかふかで可愛い。その小さな頭にキスする。

 色々と大変な目にあって嫌な思いもしたけど、でも今は幸せだなぁ。そのままベットにどさりと転がる。

 横にはハクのもふもふとブランのふかふか。けっこう疲れてたみたいで…目を瞑るとすぐ眠りに落ちていった。





 アイルと私たち家族は挨拶を終えた。私たちのイーリスはやはり寂しそうにしている。息子たちはアイルを気に入ったようで積極的に寄っていく。

 2人とも癒しの手というスキルを持っている。触れられると安心感が沸くというスキルで、それを有効に利用していた。今の彼にはそうでもしないと触れられない。

 イーリスは歯痒いのだろうが…。



 そしてベルが抜け駆けをした。アイルを一目見た時から気に入ったんだろう。その時はイーリスの番とは知らなかったから仕方ない。そういう私もイーリスの番じゃなければ私が欲しいくらい、あの子の魂の色は魅力的だ。

 私は人のあり方が色で見える。

 アイルの色は水色。清らかである証拠だ。さっきもっとキスすれば良かったかな?

 爽やかな見た目に反してなかなか強引なネーシアだった。



 ふふふっ可愛い。イーリスのような可愛いさとは違って分かりやすくて清々しい。うーん。僕の番にならないかな?家族なら共有もあり得るし。イーリス怒るかなぁ?

 ふふふ、もう可愛くて…抱きついた時とかキスを寸止めして結局キスした時の顔とか。全部可愛い。もっとキスしたかったなぁ。

 儚げ美人のリベールも強引だった。




 はぁ、ダメか…。バージニアはため息をつく。アイルは否定するようなことを基本は言わない。そのアイルが会いたくないと言った。

 ダメだろそれは。ロルフ、どうするよ?

 イーリスとアイルもなんか変な感じだったしなぁ。

 はぁぁ、頭が痛いぜ。勘弁してくれよ、お前ら。

 苦労の絶えないバージニアだった。




 う、うん…温かい…。私はその温もりに抱きついて撫でる。サラサラしてる…ツルツルしてる…ん?サラサラ?薄目を開けて見ると銀色?目をしっかり開けるとそこにはハクがいた…人型の。うん…うん、え?

 こちらを見る全裸イケメンのハクがいた。うわぁ…待って、なんで私もまた裸なの?

「窮屈でしょ?」

 いや、だから恥ずかしいし。

「アルの身体に触れられるからこっちの方がいい」

 そう言って腰を密着させる。だからその…ね?

「赤くなったアルも可愛いよ」

 キスが降ってくる。おでこに、鼻に、頬に、唇に。 

 ハクはそのまま私の体にキスをして…。また魔力ごと溶け合うような心地良さに支配される。

「たくさん愛し合ってたくさん子供を作ろう」

 ん、んん…。

 ハクは止まらないハクの魔力が、温もりが…。




 アルは今日も可愛い。ユーグ様に寄り添うその姿はとても優しくていつまでも見ていたいくらいだったよ。

 僕のアル…。あぁなんて可愛い。照れて赤くなる顔も目を閉じて震える顔も、涙目で見上げる顔も。

 たくさんのアルをこれからも僕に見せて?

 僕は体中にキスをしてその細い腰を抱いて…アルと魔力を交わらせた。

 これからもたくさん触れ合おう?

 魂の契約者同志は自然と相手を求めるんだよ。もう僕自身でも止められない…。

 アル…ずっと側にいるからね。




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