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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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72.地下拠点

本日は1話のみの更新です

「何か来るな、人か?」

「そのようです」

「ふむ、ちょうどいい。捉えよう。お土産は多いほうがいい」

「引きつけますか?」

「そうだな、泳がせろ。拠点近くで捉えるぞ!」

「はっ」

 この選択が後に大きな影響を与えることを彼らは知らない。





 そんな会話がされているとは知らず、アイルは彼らを追った。捕まえられているのは若い男性?

 ケガをしている。それにあの首輪は?禍々しいものを感じる。離れているけど、ここからでも届くはず。ジョブを使おう。

 あの人の周りに薄く、あの人だけに効くように、あの人だけ助けるように。傷薬の敢えて普通の方と完全解毒剤を霧状に散布するよう想像する。治れ…。

 私の目には霧が見えた。成功だ。ゆっくり効くからから気がつかれない筈。


 それにしてもあの首輪は危険だ。じっと見る。


(魔力吸収の首輪。魔力が枯れるまで搾り取られる。吸収した魔力は魔道具に直接送られている。妨害するなら送り先を変更。吸収をやめさせるなら反転すればいい。やってしまえ!)


 あぁ、洞察力さん…ついに提案までするようになって…優秀過ぎる秘書みたいだね。


(名が貰えたらもっと頑張れます)


 名付け希望。うーん…秘書といえばきれいな女性。

「ビクトリアは?」


(…思考は男性です…)


 マジか…。

「じゃあビクトル。勝利者ビクトリーから取ったよ」


(私はビクトル。反転をオススメします)


「なぜ?」


(魔力が一定以上返ってきたら首輪が耐えきれずに崩壊します。しかも魔道具からも魔力を吸います。エグ過ぎる効果で相手の目論みを完膚なきまで叩き潰します!)


「そらエグいな…どうしたら?」


(今のままの想像を首輪に向けて放つのです!)


 よし、やろう!


 私は首輪に向けて想像する。

 魔力を逆流させ、魔道具から魔力を吸い出し…あの人が必要な分を返す。それ以外の魔力は首輪に極限を超えて貯める。首輪が壊れたら溢れた魔力は大気に飛ばす。

 反転!

 強く心で言い放つ。


 ()()()()()()首輪が水色に光った。成功だ。

 なるべく早く助けたいけど…だいぶ走ったかな?

 ローブの男たちが止まる。ボロい小屋の前に集まり、入り口から入っていく。どうしよう?

 外からしばらう様子を見たい。じっと小屋を見る。すると中の様子がサーモグラフィーのように見えた。


 人が動いて、蹲ってる?下…地下か!

 どうしようか…追えなくなったら。考える。焦ってはダメだ。人が減っていく。今は待つしかない。

 やがて人が消えた。それからまだしばらく待ってゆっくりと小屋に近づいて行く。


 気配はない。ドアノブを回す。鍵はかかっていない。音を立てないように回すと、するりと体を入れる。

 心臓がバクバクしている。怖い…でも行かなきゃ。入り口から見て右端の方に絨毯がズレた場所がある。

 そこをそーっとめくると、上げ蓋があった。

 開けた先は様子が見えない。怖いけど、迷ってる場合じゃない。

 私は意を決して蓋を開ける。思いの外スムーズに開いたその先はほのかに明るい。固定されているハシゴで降りて行く。

 深さはそこまでないかな?

 地下に降りてから様子を伺う。


 だいぶ先、そこに人が何人かいる。別の方向には…見つけた。あの人の魔力だ。人は側にいない?

 本当に?罠だったら…?でも進むしかないよな。

 音を立てずに進む。ミステリーあるあるで気をつけてたのに急にコウモリが出てきて叫ぶとかないよね?

 コウモリいないよね?


 その部屋に着く。気配もサーモグラフィーも感知なし。でも本当に大丈夫?私に出来るのか…?

 でも攫われた人はケガをしていたし、魔力も戻りかけてはいるもののまだ動ける状況ではないだろう。怖い…でもこここまで来て見捨てるなんて選択肢はない。よし、行こう。


 私は意を決してその部屋に入った。さっと周りを見回すが横たわるあの人しか見当たらない。

 私は駆け寄る。その人は薄く目を開けると驚いた顔で

「逃げろ」

 と掠れる声で必死に言う。

 えっ?


「残念だけど、もう遅いよ」

 声が後ろから聞こえたと思った時に、私はすでに後から首を抱えられナイフを突き付けられていた。

 え?いつ?どこにいたの?


「ふふふ、分かってないと思ったのか?拠点の侵入者に気がつかない訳がないだろ?ん?」

 迂闊だった。悔しいけど、今更どうにもならない。

 私はあの人を見る。だいぶ回復してる?でもまだ動けない。時間を稼がないと…あの人が自力で動けるまで。どうやって?分からない。分からないよ…イリィ。


 私を後ろから羽交締めにしている男は私のブードを取って顔を覗き込むとひゅうーと口笛を吹く。

 私の顎に手をあてて笑いながら

「これはまた。魔力は少ないから生贄には向かないか。ふふっ色々と溜まってるからな…ちょうどいい。コイツは俺が貰うぞ!」

 どうして?ローブには認識阻害がかかっているのに…。

「認識阻害は俺には効かねーよ」

 そう言って私を軽々と肩に担いで部屋を出て行った。

 私はあの人を見つめる。

 あの人も私を見つめる。真剣に、悔しそうに。

 部屋には他に1人。でも私たちと一緒に部屋を出た。

 私は担がれたまま男に運ばれて行く。

「俺が声かけるまで呼ぶなよ。お楽しみだからな…へへっ」

 そう言ってどこかの部屋の扉を開けて中に入る。雑多に物が散らばった部屋だった。男は足元のあれこれを蹴飛ばしながら部屋の奥にあるベット近くに私を降ろした。


「お前アイツの何?」

 私は首を振る。知らない人だ。

「ふーん、まいっか。興味ねぇし。これから楽しいコトするんだからなっ」

 男は私のローブを脱がして近くに放り出すと私の両手を後ろ手に縛る。そして念の為な、と言って首に何かを嵌めた。

 魔力封じだ。もう魔法は使えねーよと笑いながら言う。

 手は使えない。魔法も使えない。私は圧倒的に無力だった。せめて手が使えれば…。


 あの人の回復にはまだ少し時間がかかるだろう。どうしたらいい…?見捨てて私だけなら逃げられる。でも…考え込んでいると男は

「くすっ怖いのか?自分がどうなるか?すぐ分かる。その体に良く教えてやるよ」


 えっ…?

 男は私の顎に手をかけると唇を噛んだ。

 痛ッ…唇から血が流れ出す。男はそれを舌で舐めとるとその血を吸う。男の唇が触れる…。

 男は構わず血と唇を吸い、舌を強引に入れてくる。私の舌に絡めて吸う。嫌だ…。


 何度も何度も深くキスをされ、やっと唇が離れた。息が苦しくて目に涙が溜まる。男は嬉しそうに

「そういう顔がたまんねーな」

 ニヤリと笑うとまた唇を吸われる。耳元で最高だよと呟く。嫌だ…。

 またキスをしながら私の体を手でなぞり始める。首から肩、鎖骨から胸、そして腰。嫌らしく撫で回され、シャツのボタンを外されていく。

 嫌だ…怖い…助けてイリィ。私は涙目で男を見る。

 男はニヤついたまま私の背後の手を触る。


 縛られていた手は解かれ、シャツを脱がされる。男は自分も素早くシャツを脱ぐと自分のベルトに手をかけて外し、私をベットに押し倒した。

 両頬を手で挟まれまた唇を吸われる。男の手は私の体を撫でていく。

 そして私のベルトを外すと一気に下履きまで脱がし、私を裸にした。嬉しそうに私を見ながら腰から下腹部、太ももまで撫で下ろす。

 太ももにキスをされ、その手が下腹部に伸びた時…部屋をノックする音がした。

「チッこれからいいところだってのに。何だ!」

「緊急事態です!すぐに!」

「クソッ」

 男は悔しそうに私を見ると最後にまた唇を吸って出て行った。


 えっ?何?緊急事態って?私は助かったの…どうしたら、あ…服を…服を着なくちゃ。そう思うのに恐怖で身体が思うように動かない。ベットから転がるようにして床に降り、ローブを羽織る。それから下履きとズボン、シャツを手に取って着ようとする。

 でも手の震えが止まらなくて、なんとか下履きを着けた。ズボンを手に取ったところで突然、部屋の扉が開く。ベットに腰掛けていた私は服を持ったままベットの後ろの壁に背中を付けてローブにくるまり扉の方を見る。

 部屋に入って来たのはあの人だった。私は目を見開く。あの人のケガは治り、魔力も回復していた。良かった。本当に良かった…。


 あの人は私を見つけると

「大丈夫か?」

 ベットに近づいて来た。私は咄嗟に後ろに下がろうとする。怖い…。目に涙を溜めて、なるべく離れようと体を動かす。

 あの人は手を出しかけて止める。

「もう大丈夫。ここは安全だ。()()()()()()()()()

 あの人をじっと見る。


(アイルの味方。大丈夫、安心していい。彼はアイルを大事に思っている)


 あ、有能な秘書再び。大丈夫なんだね?信じるよ、ビクトル…。

 私は少しだけ体の力を抜いてあの人を見る。

「ありがとう。君のお陰で私はケガが治った」

 えっ、何で知ってる?

「分かるんだよ、私には。君がしてくれたことが」

 そうなのか、でも良かった。()()()()()()()()

「私のために君は…」

 あの人は目に涙を溜めた。

「君をこんな目に…私はどう償えばいい?」

 私は首を振る。勝手にしたことだ。それにこれは自分が招いたこと。だって私はあの男たちを()()()()()()()

 それをしなかったのは私だ。私はどうしても人を殺すことが出来なかった。

 だから…。

「それは違う。君は私と君自身の心を守ったんだよ」

 私自身の心?私は…そんな綺麗事じゃない。ただ、自分の手を汚したくなかっただけ。誰かが殺してくれたら…そう思ったのだから。

「違うよ、君はとても優しい。見ず知らずの私のために自分を犠牲にしてしまうくらい…」

 その人は労わるような優しい眼差しで囁く。


「ここから出るまで、私に君を守らせてくれないか?」

 私は俯く。信じたい…でも怖い。

 あの人はゆっくりと手を前に出して

「その首のヤツ、取るよ?」

 そう言うとそっとベットに上がってきた。私に触れられるギリギリの位置で手を伸ばし…そして私の首の枷が外れた。

 その手で私の髪をそっと撫でる。まるで壊れ物に触るように限りなく優しく。

 私は目を瞑る。涙が零れ落ちて、その涙を優しい手が拭ってくれる。私は目を開けその人を見る。優しい顔で私を見つめるあの人を見て、涙が溢れ出し止まらなくなってしまった。

 あの人はふわりと私を包むように抱きしめてくれた。

 私はその胸に縋りついて泣いた。



※読んでくださる皆さんにお願い※


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