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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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64.町の噂

予約投稿忘れてました…

 東門から町に入る。よし、今日は何も引き寄せてないぞ。

 すると奥から見覚えのある衛兵が出て来た。まさかまた呼び出し?そう思って身構えると

「アイルだったよな?お前ゼクスの宿に泊まってるって?」

 ん?何で宿の話?頷くと

「おめでたいよな。スーザンもやっと身を固めたから」

 え?何の話?身を固めたってもしかして…?

 びっくりしてイリィと目を合わせていると

「なんだ?聞いてないのか?」

 頷く。その衛兵はにやりと笑うと

「13も年下の子だってさ」

 近づいて囁く。すぐにイリィが間に割って入った。衛兵ははははッと快活に笑うと奥に戻って行った。


 私はイリィと目を合わせる。

「アイに囁いていいのは僕だけなのに…」

 えっ?そっち…。

「昨日話をしたウールリアさんだよ。凄い美形」

 そう言うと

「美形って聞いてないよ?アイ…」

 目の前の美形が迫ってくる。

「イリィとは系統が違うから」

「どう違うの?ねぇ?アイはどっちの顔が好き?」

「もちろんイリィだよ?私にはイリィだけが特別だから」

 必死に答えるとキスをされる。今はそれで許してあげる。頬を撫でて手を繋がれる。

 夜が楽しみだって聞こえたけど気のせいかな…?



 その頃ギルドでは…。




「ついに身を固めたって…」

「ゼクスの宿の」

「もと上級だろ?疾風っていう」

「伝説だよな?最速で上級になった」

「凄い美形がいつも一緒にいたらしい」

「らしいって何だよ?」

「顔を隠してたって」

「貴族に狙われるくらいだとか」

「マジかよ?」

「どんだけだよな?」

「凄い年下とか」

「うわぁ年下の美形?」

「やるなぁ、俺も鍛えようかな?」

「お前は無理だろ」

「筋肉はモテるのか!」

「あのガタイで料理上手だからなぁ」

「何?床上手?」

「何だと!マッチョで料理出来て年下美形と…」

「なんて羨ましい」

「年下美形…ハァハァ」


 なんか最後に変な喘ぎ声聞こえた気がするが無視だ!

 あぁ、やっとかよ…心配させやがって。そうバージニアは一人呟いた。



*******



 僕とスージィはレオとルドと言う子供に宿の留守をお願いして町に出る。行き先は教会。

 婚姻の届出をするためだ。貴族なら貴族院に、平民は教会に行く。もちろん事実婚でも問題ないけど、結婚証明があれば貴族でも手が出せなくなる。

 僕たちにとっては2人でいるために必要な手続きだ。


 この国では同性でも異性でも婚姻出来る。早く周りにスージィは僕のものだって言いたくて、早くと我が儘を言ったんだ。まだ起き上がれないのにね。

 そしたらスージィは何て言ったと思う?俺もすぐにでも結婚したいから抱いて連れて行ってやるだって。


 目立つよね?目立っちゃうよね?でもいいか。僕のものって皆んなに見せつけられるなら。

 こうして僕はフードを被ってだけどスージィに子供の頃のように片腕に抱えられて、僕はスージィの首に抱きついて教会に向かったんだ。

 僕はもう19だよ?背だって伸びてスージィほどじゃないけどそれなりに高い。185セル(cm)あるんだ。

 なのにスージィってば片手で軽々と僕を抱き上げるんだよ?

 ふふふっ皆んな驚いてるね?そりゃそうだよね?

 僕は知ってるんだ。スージィは人気があること。まだ狙ってる子がいるのもね!まぁ残念だけどスージィは誰にも渡さないよ?

 きっと自分はもう引退したし目立ってないとか思ってるんだよね?甘いなぁ。疾風の二つ名が話題にならない訳ないでしょ?

 3つ隣の町ですら噂があったのに。

 だから皆んなとっても驚いてる。僕を大事に抱えて、時々優しい微笑みをむけているスージィ。向かっている先が分かればねぇ、分かるよね。その意味が。


 こうしてざわざわとした中、教会に着いた。迎えてくれた神父さんも口を開けて見てるよ。

「昨日少し無理をさせてしまって。少しでも早く手続きをしたくて抱えてきた」

 照れながらそう言うスージィに神父さんまで顔を赤くしてブンブン頷くと書類を取りに、と言って走って行った。

 教会の中って走っていいの?

 やがて別の神父さんが出て来て小部屋に案内される。


 そして僕とスージィを見ると

「満願成就ですな…」

 とスージィにニッコリと笑いかける。スージィは赤くなりながら3年越しの願いが叶ったと呟く。

 僕は嬉しくてその大きな体に抱きつく。僕だって大きくなったのにスージィはその僕をすっぽりとその胸に抱えてしまう。

 顔を上げてキスをねだる。

 ほっほっほっ。誓いのキスは少し待たれよ。神父さんの言葉に俯いてしまった。恥ずかしい…。


 抱かれたままお互いに署名をすると書類が仄かに光る。神父は目を開き、

「妖精の祝福ですな…これはまた」

 そして優しく微笑むと

「神の御前にて2人の婚姻は証明された。末永く寄り添わんことを願う」

 そうして印をきり、

「あとはお2人の時間ですなぁジジイは外しましょう」

 そう言って小部屋を出て行こうとして振り返る。

 そうそう、妖精の祝福は珍しい…それは妖精が2人の強い確かな愛を認めた証ですぞ。ほっほっと笑って今度こそ出て行った。


 僕は赤くなって俯く。急に恥ずかしさが込み上げてきて…スージィの手が僕の顎にかかって上を向かせる。そして…キスをした。あぁやっとだ。やっとこの日が。流れ落ちる涙は今まで流したどの涙よりも温かかった。


 この2人の姿を見た探索者たちが先ほどのギルドで噂をし…門の衛兵の耳にまで入ったのだ。




 イリィと宿に帰るとレオとルドがいた。スーザンは奥で誰かに付き添ってるだって。誰かって?って聞いたら分からないよ。フード被ってたし、って。

 あ、でも左手の小指に蔦模様があったよ、2人ともね。レオがにやりと笑って言う。

 蔦?首を傾げでイリィを見ると後で教えてあげるよだって。ハクを見るとしっぽを振って私に体を擦り付けてくる。その背中を撫でて?な顔をする。


 まぁいいか、でも夕食どうするんだろう?と思っていると厨房からスーザンが出てきた。

「おう、お帰り。レオとルドもありがとな。飯食ってけ。金は帰りに渡す」

 そう言って厨房に戻ろうとする。私は咄嗟にその左手を掴む。確かにその小指には金色の蔦模様?がぐるりと回っている。

 マジマジと見ようとすると横からイリィの手が出てきて離される。

「お触りはダメだよ?人のものなんだから」

 人のもの?結婚のことかな?

 スーザンは恥ずかしそうに

「ウルとな、一緒になったんだ。これからよろしくな」

 うわぁスーザンが照れてるよ。

 その顔を見つめる。目つきが鋭くてちょっと目尻が上がってるその大きな目は、少し怖いけど高い鼻と引き締まった口元は整っていて以外とカッコいいんだなって思った。


 耳元で

「ダメだよ?僕以外をそんなに見つめたら…」

 あっ…目を逸らす。スーザンは恥ずかしそうに戻って行った。

 私はその大きな背中に

「おめでとう!想いが通じて良かったな」

 手をあげて厨房に入るその顔は耳まで赤くなっていた。

 ハクは呆れたような目で私を見ている。レオとルドまで…何で?

 イリィはアイってさ、本当に恥ずかしいこと堂々と言うよね?って。えっ何で…?


 レオとルドに手を振って部屋に戻る。

 イリィは私を抱きしめてあんまりよそ見しちゃダメだよと言ってから採取した樹液を取り出して見ている。

 これはどうやって固めたら…光…いや、魔法で…作品作りに入っていく。


 その横顔を眺めて気に入って貰えたかな?良かった。イリィの手で新しい作品が生み出されるのが楽しみだ。

 私もドライフラワー作るかな?でも、風魔法と水魔法で瞬殺な気がする。うーん。化粧水とか作る?

 あ、菜の花の油で菜の花の天ぷら食べたいかも。キノコもあるねぇ。山芋も海苔に付けて揚げたら美味しい。あれ?海苔ってあるの?

 やりたいことがたくさんあるなぁ。

 優先順位を付けないと。あぁでも屋台が。

 ん、待てよ。もう私いなくてもウールリアさんがいるよね?あの美貌だし売れるんじゃない?

 でもあの2人だとなんか甘ったるくなりそう。え?私そこにいるの?おじゃま虫感が…いやいや、レオとルドがいるから大丈夫。


 あれ?それにしてもこの世界は同性婚出来るんだ?うわ、今気が付いた。え?私もそのイリィと一緒になれるってこと?うわぁ嬉しい。あ、でもイリィには家族がいて。色々と複雑な事情もあるし、私なんて認めて貰えなかったり?

 急に不安になる。だってイリィはお父様って言ってなかった?貴族とは聞いてないけど、いわゆる歴史のある名家とかなんじゃ?

 家の可愛い息子とこんなヤツの結婚は認めないとか…?それは嫌だよ…どうしよう…。

 不安になって涙目でイリィを見るとこちらをジッと見つめていた。





 部屋に戻って軽くアイを抱きしめると、今日採ってきた樹液を取り出す。これは凄いよ!キョトンとしてまるでその価値が分かってないみたいに微笑むけど。

 君の世界では常識でもこの世界では大発見だ。まぁアイは目立ちたくないだろうし、まだ僕も目立ちたくない。だからしばらくはひっそりとね。君を飾る為だけに使うよ?何がいいかな…アイをそっと見つめる。


 ん?何を考えてるの?

 俯いてうんうん言ってるけど。不意に顔をあげるとおぉって顔してまた考え込んで。そしてブツブツ言いながら微笑んだと思ったら、蒼ざめてこちらを見る。その目はなぜか潤んでいて。

 慌てて駆け寄るとしがみついてくる。

 どうしたの?髪の毛を撫でながら聞くと小さな声で不安になってって。


 何が君を不安にさせるのったら聞いたら、だって私は転移者で家族がいないけど、イリィには家族がいて…私なんて…そう言うんだ。

 それで不安になったの?僕の家族に認められないんじゃないかって。もう本当にアイは…。

 それって…はぁ。また無自覚に煽ってるよね?

 どれだけ僕を好きなのかな?もう熱烈な告白と一緒って気がついてる?気が付いてないよね…もう。

 泣きながら僕にしがみついて…可愛いよ。

 たくさん教えた筈なんだけどな?まだ伝わってない?

 そう言えば真っ赤になって伝わってるよって。ならどうして不安なの?


 まつ毛に水滴を付けたままポツリと言う。

「私のいた国では同性は結婚出来なかったから…」



『それは仕組みの違いだよ』

 横からハクが言う。仕組み?

『アルの世界では同性は子供を授からない』



 今度はイリィが驚く。

「何で?」

『だから仕組みが違うんだよ。アルの世界では男と女の組み合わせでしか子供が出来ない』

「こっちでは違う?」

「子は授かるんだよ」

『異性の場合でも基本は同じ。子の実から産まれる。生命樹から栄養を貰って実になる。その後は親に託されて…そして月が満ちると実が割れて子供が産まれる。アルの世界では子供は女の腹に宿る』



 イリィと私はそれぞれ驚愕する。えっそうなの?じゃあ…あの…体の繋がりは要らない?

『いるよ、人の場合は体を繋げて2人の愛が見届けられないと子供は出来ない』

「無理やりとかでは出来ないんだ」

ホッとして言うと、ハクが

『そうでもないよ』

 イリィもため息をついて頷く。

「片方が強く求めてもう一方が受け入れたらそれは行為も含めて愛し合ったと解釈される」

「それって…」

 ハクが頷く。

「力づくで言いなりにさせてしまえばね」

 不幸な子供は産まれないんだって思ったけど、そんなに優しくないのか…。



 私はまさしくそんな不幸な産まれの人が身近にいることをまだ知らない。




※読んでくださる皆さんにお願い※


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