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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
53/419

53.屋台

誤字報告ありがとうございます┏○ペコ

反映しています

 いつかは自分の店が欲しかったんだ、と言って食べ物の屋台を始めたのだ。お前を雇うぞ!お前なら立ってるだけで客が来る。そう笑って。


 先輩は上級探索者で、僕は中級に上がったばかり。新しい迷宮に荷物持ちとして先輩と行く筈だった。結局、一度も迷宮に潜ることなく引退することになった。

 同じ町ではまた貴族に何か言われるかも知れない。だから、離れた街に行こう。そう言って先輩は僕を馬車に乗せて王都を挟んでさらに向こう側の町へと移った。

 そこは先輩の知り合いがギルド職員として働いていて、町を治める領主も信頼ができる、そういう理由で決めた街だった。

 その街を治める貴族は無理矢理探索者ギルドに依頼をかけるようなことをしない。だから、ここなら安心してやり直せる。


 僕はあまり体を動かせないけど、本当に立つどころか、座っているだけで屋台は繁盛した。

 もちろん、おいしい食事を作る先輩がいるからこその繁盛なのだ。それなのに、先輩はお前がいてくれるからだとそう言ってくれた。


 先輩の思いはすごく嬉しかったけど、結局何にもできない自分自身がすごく情けなくて腹立たしくて、全然悪くないのに先輩に当たってしまって…そんな自分にまた嫌気がさして。

 そんな悪循環ばかりの毎日にもうここにはいられないと、別の町に行くことを決めた。

 あんなにお世話になった先輩に一言も告げずに。


 あの時の自分は本当に余裕がなかったんだと今なら分かる。

 ただ、必死に生きる意味を探していた。

 あれから3年経った。ようやく自分なりにできることを見つけて、自信を持って生きていける。そう思えた。

 そして考えるのは、何も告げずに去ってしまった先輩のことだ。僕のために探索者を辞めた先輩に酷いことばかり言って、挙句の果てには勝手にあの人の元を出てしまった。

 全ては、あの人がいてくれたから。今、僕が生きていられるのは、あの人のお陰だから。

 どんな顔して会ったらいいのか…そう思ったけど、今、会いに行かなければもっと会いにくくなるとそう思って。


 僕の話を聞いて、叱ってくれるだろうか。僕の話を聞いて笑ってくれるだろうか。僕の姿を見て、よく帰ってきたと迎えてくれるだろうか。

 今は、ただ、あの人の不器用な優しさを、温かな手を感じたいとそう切に願うばかりだ。




 その頃、アイルは…


 温泉と建物が完成してお昼ご飯を食べて、少し休憩。

 その後は沼の周りに資源がないかを探すことにした。

 イリィの作品にも使いたいし、花とかあとは普通に薬草とかを見ていく。

 珍しくなくても薬草があれば薬が作れる。チート過ぎる薬草はほどほどに、でも汎用性のあるものはなるべく色々な種類が欲しい。


 そんな感じで進んで行く。

 するとハクが、ここら辺かな?と言って前足でズゴゴンッ…地面に大きな穴が開いていた。

 これは何かな?

『アルが欲しがってた鉱物?』

 なんだろ?あり過ぎて分からない。じっと穴の中を見る。


(アルミニウム やったね!)


 洞察力さん…やっぱり人格持ってますよね?


「アイ、どうしたの?」

 イリィが聞いてくる。

「私の故郷で良く使われてた鉱物だよ。凄く便利」

「どんな風に?」

「軽くて加工が楽で錆びにくい。薄くできるから食器にも窓枠にも何にでもなる」

「鉄よりも?」

「鉄より軽くて錆びにくい。軽いから家の柱とかには向かないけどね」

「良く分からないけど、アイが言うなら間違いないな」

 優しく微笑む。

『摂るのか?』

「うん、欲しいね」

『ならば…』

 ドゴンッ。塊が地中から迫り上がってきた。

 さすがハク!力技だね?

『アルも出来るでしょ?』

 さ、さぁ?


 ポーチに収納する。

「ねぇ、アイのポーチはどれくらい入るの?」

 どれくらいにしたっけ?体育館だよね?

「確か50メル×100メル(m)くらいかな?」

 えっ?イリィの目がまん丸になる。

「だから、50メル× 100メル位…?」

「それがどれだけとんでもない数字が分かってる?」

 そっと目を逸らす。イリィは溜め息をついた。

 そうだ、イリィにも同じ容量のポーチ作ってあげるよう。

「前に渡した腰から下げる縦長のポーチ貸して?」

 それを受け取ると、私が持ってるのと同じように食料とか冷蔵とかそれ以外のものに分かれるように空間を拡張した。

 出来上がったポーチをイリィに渡す。受け取ったイリィは呆れながら荷物を入れてみる。

 ふふっやっぱりアイは規格外だね。そんなことを無自覚にやっちゃうんだから、困った子だよ。でも、それがアイなんだよね。

 そう言って、頬を撫でながらキスをされた。


 その後もハクとブランが大活躍で、幻の花と呼ばれる霞草を見つけたりした。

 これ以上やらかすとまたラルフ様がため息をつきそうだからな。探索はここで終わりにして、今日は早めに温泉に帰ることにした。

 時間はまだ早いけど、森の夜は早い。夕食の準備に入った。

 今日の夜はチーズとミルクを煮込んだ薬草入りのスープとハクがたくさん取ってきてくれた魔獣のお肉で、簡単ローストにして保存してあったパンをつけて。

 私とイリィとハクとブラン、仲良く夕食を食べていよいよ温泉に入ることにした。

 脱衣所で服を脱ぐ。イリィは相変わらずきれいだ。

 2人で一緒に浴室に入る。まずは、体と髪の毛をお互いに洗ってしっかり流す。そして、いよいよ湯船に浸かることに。

 イリィは恐る恐る、私は嬉々としてお湯に浸かった。

 わー、体が溶けそう。こちらの世界に来て、初めての本格的なお風呂。染みるぅ。

 隣を見ればイリィもとても満足そうに目を瞑っている。

 湯気で霞がかったイリィの顔は、いつも以上に美しくて…月に照らされた横顔は女神のようだった。

 私がじっと見ていると、こちらに目を向けて淡く微笑んだ。





 夜の月の下で見るアイの顔は、いつも以上に可愛いよ。こっちにおいで?そう言って、アイに手を差し出す。その手を握ると強く体を引き、その腕の中に抱きしめる。

 すべすべしてるね。ずっと触っていたくなるよ…アイ、顔が赤いよ。照れてるの。?本当に可愛いんだから。そう言ってキスをする。

 そのまま僕の膝の上に抱き抱えて、首筋にキスをする。少しずつ傷が体の下へと流れていく。アイの腰は僕の片手でしっかりと支えて、空いている手は太ももを撫でる。

「月の光の下でこうしているのも楽しいね」

 そう耳元でささやいて、耳にキスをする。



 あぁアイ。薄暗い月の光の下で、君の白い体がほんのり浮かび上がって、上気した頬は赤くて。いつだって、僕を誘うんだ。

 こんな開放的なところで抱き合うなんて、ちょっと恥ずかしいけど…なんだかとても大胆になれそうな気がする。

 たくさん抱いていい?あぁ、もちろん、ダメなんて言わせないよ?アイ…。


 膝の上に抱いて、その体を唇で愛撫する。さらに頬が染まってるよ?

 僅かに開いた口から覗く舌がいやらしいね。いつだって自然に僕を誘うんだから…。

 その唇にキスをして舌を入れる。柔らかくて温かくて…扇情的。

 困るなぁ。こんな可愛い子。誰かが見つけてしまったら欲しくなっちゃうよね?僕のものなのに。



 その体を手でなぞる。反応するのも可愛い。もっと感じて?その細い腰を掴んで…感じてるね?ほら、もうこんなに…優しく撫でると涙目で僕にしがみついてくる。まだだよ?もっと気持ち良くなって…。あぁ我慢出来ないんだね?いいよ。

 アイの白い体が少し震えて、脱力する。あぁ、可愛い。僕の手で…君は。


 そろそろ僕も我慢出来ないかな?いい?

 そのままアイの細い腰を抱えて体を重ねていく。さらに目を潤ませて僕の名を呼ぶんだよ。

 もうこれを無自覚でしてるなんて、罪作りな子だね?そんな姿、僕以外に見せちゃダメだよ。

 んんっ…悩ましげな声がまた唆る。一緒に気持ちよくなろうね…アイ。



 外で重なって、体が冷えたらお湯に浸かってまた体を撫でて…重ねて。お風呂から上がってベットで…

 僕はこんなに独占欲が強かったなんてね?でもちゃんと理由があって。

 アイ、聞いてくれる?




 休憩所のベットでイリィが話し始める。


 僕たちの一族は白の森と呼ばれる森を守る守り人なんだ。そこには1本の生命樹があって…それを守っていたんだよ。

 僕たちの一族には稀に末の子と呼ばれる銀目の子が産まれる。その子は18の歳に魂を生命樹に捧げなくてはならない。魂を捧げるとやがて体が枯れて、生命樹に吸収されるんだ。

 僕の前にも2人、魂を捧げたんだ。末の子の名前はイーリス。僕は3人目のイーリスなんだよ。


 魂を捧げる末の子は魂の番と出会えない。それは運命(さだめ)なんだ。だから僕もその魂を捧げるために生きてきた。

 それが、前に話をしたね?襲撃されて僕はこの地に来た。そこでアイ、君と出会ったんだ。

 おばばが言っていた魂の番…出会う筈がないのに。

 でも()()()()()君は私の番だ。

 魂を捧げる契約はどうなった?知りたいけど知りたくない。そう思っていたら、アイが精霊王ユーグ様の愛し子だって言うじゃないか?もうびっくりしたよ。


 だから急いで白の森の生命樹 ユウリ様がどうなったか、僕の契約はどうなったか聞きたくて。

 それからはアイも聞いてた通り。古の契約は絶たれて、僕は魂を捧げる必要がなくなった。

 ん?なんでユウリ様が消えて悲しかったかって?魂を捧げなくて良かったのに…。

 それはね、父さんが大切に大切に守ってきたのを知っているからだよ。父さんが悲しむと思って。

 えっ?自分のことより父さんを想っている僕はなんて優しいんだって?



 僕は特別な子だったから…皆がとても優しくしてくれたんだよ。父さんもね…。だから父さんの気持ちを思うと、単純に喜べないんだ。

 何故そんな契約が?それは僕にも分からない。

 銀目の子は生命樹との親和性が高いってのは知ってるけど。何でだろうね?

 君のハクが言ってただろ?僕がここにいることこそが本当の運命だって。

 僕が君と出会い、愛し合うことは運命だったんだよ。だから僕は魂の番を手に入れた。


 

 運命に導かれて…アイ、君がここにいるのは僕と出会う為だったんだよ。

 うん、ありがとう。僕もだよ。

 愛してるよ。君と過ごせる時間に感謝して…だからたくさん愛し合おうね。



 僕はまたたくさんのキスをする。もう、また止められなくなる。僕のために泣いてくれる君だから。

 愛おしくて堪らないよ…アイ。




 

末の子の真実が明かされます


※読んでくださる皆さんにお願い※


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