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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動
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51.生命樹

 馬車で2時間半の距離。もちろんハクの方が早い。うん、知ってたよ。でも、まさか休憩なしの1時間で着いてしまうとは…聖獣の力、恐るべし。


 森の入り口から宿がある方に向かって進路を変える。

 やがて大きな木が見えてきた。生命樹の木。少し手前でハクから降りてイリィと手をつないで歩いて行く。

 すると、いつものように淡い光がポツポツと舞い始めた。いつもながらに幻想的な光景で、隣のイリィを見つめる。イリィも私を見つめて…手を強く握り締める。

 一緒に見れてうれしいよ。そう言うと、さらに木に近づき、その幹に手を当てる。

 精霊王の気配がして私たちの前に姿を現した。


『愛し子よ。そして森に愛されし、種族の末裔よ…よく来た。そなたにも私の祝福を与えよう。末永く寄り添えるように』


「ユーグ様お初にお目にかかります。守り人のイーリスと申します。

 わが故郷の生命樹がどうなったかご存知でしょうか?」


『私は永いこと眠りについていたが、同胞の存在は感じることができる。そなたの故郷の森にいた同胞は、種を存続した。今は若木が根付くのを待つ時間だ』


「そんな…」

『我らとて永遠に生きられるのではない。守り人の子よ。嘆くのではなく、新たな誕生を言祝いでくれ』

 イリィは涙を流しながら頷く。

 私には2人の会話が分からないけど、イリィにそっと寄り添う。


『守り人よ…そなたは、生命樹に捧げられる末の子であろう。しかしながら契約は絶たれた。思うままに生きよ。我も祝福する。魂の番と末長く…』


 イリィは驚いたようにユーグ様を見る。

「許されるのですか?」

『ユウリが逝った。それが全てだ。そうなる運命(さだめ)だったのであろうな』

 ユーグ様は愛しそうにイリィの頬に手を添え、おでこに優しくキスをした。我の愛し子と、そなたが出会ったのもきっと…強く生きよ』

 精霊王は戻って行った。


(お祝いなの)(お祝いなの)

(祝福なの)(契約は、絶たれたの)

(自由なの)(運命は変わった)

(もう苦しまないで)(魂の番と)

(祝福を守り人の子に)


 賑やかに騒めく。イリィは涙で濡れた目で私を見て両の頬を手で挟み、キスをして…私を強く強く抱きしめた。


『イーリス、運命は変わった。いや、それこそが()()()()()()()()()()

 ハクが呟く。

「それこそが本当の…?」

『でなければ番には出会えない筈だ』

 イリィが目を見開く。

「あ…」

 そして私の胸に頬をあて泣き始めた。

 うぐっ…うぅ…父さん…。


 私はただイリィの細い肩を抱いていることしか出来なかった。

 ようやく上げたその顔は涙で目が赤く、まつ毛には水滴が光っている。どんなに泣いても…美形は美形だった。

 その頬の涙を親指で拭い、顎に手を当ててキスをする。

「ずっと側にいてくれる?」

 そんな嬉しいことを涙目で言われて、断れる人いないよ?大切なイリィ。今度はまぶたにキスをする。

 そのままユーグ様の木の下で思う存分抱き合った。


 それからハクに乗って白の沼に向かう。

 ハクの縄張りに入ると、どこからともなくグレイがやって来た。

『ハク様、お待ちしておりました』

『うん、変わりはない?』

『はい、白の沼の周囲は少し均して起きました』

『気が利くね!』

『少しでもお役に立てればと。アイル様、我らが一族は癒しの霧で古傷まで治り、感謝しかございません』

「え?そうなの?なら良かった」

 グレイはハクを見て

『素晴らしい方ですね』

 ハクはドヤ顔だった。可愛い。大きくても可愛い。


 そこからは皆んなで歩いて沼に向かう。グレイが先頭だ。程なく白の沼に着く。

 イリィは凄く驚いている。

「暖かい…」

「ここに温泉を作ろうと思って」

「温泉?」

「うん。体にいいお風呂?」

「?」

「一緒に入ろうと思って…」




 恥ずかしそうにアイが呟く。

 青空の下で、星空の下で…一緒に…?

 アイ、君はまた僕を暴走させたいの?

 色々我慢出来ないよ?



 照れて紅い頬を撫でる。

「一緒に入って…それでどうするの?」

「えっ…?あっ…」

 僕の言う意味を理解してまたさらに頬を染める。

 アイにキスをして

「一緒にナニをするの?」

「…それは…」

 ふふふ、本当に可愛い。ますます赤くなって。

「言って?」

「イリィと一緒に、その…キスしたり…色々?」

 もっと意地悪したいけど、ちょっと僕の理性がマズいかな。

 そのままアイの細い腰を抱いて頬の手を滑らせて後頭部に置く。そして気持ちのままに少し激しいキスをした。

 涙目で目を閉じて僕を受け入れてくれるアイ。

 本当に大好きだよ。

 ずっと側に…その言葉に嘘はなかったけど、それが短い予定だった。でも僕は自由になったから、おじいちゃんになってもずっと君の側にいるからね?



 ようやく体を離す。今、離さないといつまでも…ね?

 仕方ないから続きはその温泉?が出来てから。

 ふふっねぇ?どんなアイを見せてくれるの?




 イリィから解放されて、ホッとしたのと少しだけ寂しいのと…ナニをするの?って…考えただけで恥ずかしい。

 私はそういうことを望んでいるのかな?うううっ…。


 よし、まずは温泉作ろう。

 源泉の沼から横引きでお湯を引いて、途中で水と合わせてちょうどいい温度にする。

 43度かな。露天にするから熱めで。

 その先にはぬるめの湯を作る。こっちはハクとかブランとかグレイたち用の。40度くらいかな。

 それぞれのお湯に隣り合う位置に脱衣所。その両脇には休憩所。

 いや、そのイリィとまったりする為とかだけじゃなくて…でもやっぱり2人でくっ付きたいかも…。

 う、うん…皆んな()休憩出来るよう2箇所に分散して。


 1つはイリィと私の専用的な…?照れるな…。

 お風呂は途中まで屋根かけて、後は完全に開放。入口の空間脇にはトイレと洗面所。

 脱衣室には棚を付けて…こんなもんかな?


 よし、作ろう。

 沼からの水勾配を考えるとポンプアップが必要だな。

 いっそ沼の上からポンプで吸い上げる?

 でも硫黄と金属は相性悪そうだし。やっぱり地中からポンプアップかな?

 メンテを考えると大きな人通口がいるか。ん、思った以上に工事が大変。

 ひとまずやってみよう。


 沼から引いたお湯をそのままポンフに引き込み、そこから上に持ち上げる。ポンプの先には湯船。ポンフで上がる前に地下水と混合して適温に。

 それから…よし、想像できた。

 後はハクやグレイが集めてくれた木や地中の金属を使って一気に生産!


 ふぅふぅ…流石に疲れた。膝から崩れ落ちそうになって後ろからイリィが支えてくれる。

「凄いよ!アイ」

『さすがは僕のアルだね』

 うふふ、皆んなありがとう。私も嬉しいよ。


 入り口で靴を脱いで、ハクたちはマットで汚れを拭いて中に入る。

 そこはホールで左右に洗面所とトイレ。

 ホールの奥が脱衣所。脱衣所の両脇が休憩所。

 休憩所が5メル×10メル

 その奥のお風呂は7メル×10メルが温度違いで2つ。もちろんその手前に洗い場。


 どこぞの温泉施設だね。

 ふふっ、休憩所の私たち専用の方はベットも置こうかな?

 もじもじしながら棚とかベットを配置。トイレや洗面所の衛生機器も設置して、終わった。


 お風呂に出る扉を開けるとイリィが

「うわぁ凄い」

 と歓声をあげる。ハクもブランも大喜び。グレイも後ろから付いてきていて、見ると緩くしっぽを振っている。


 イリィが湯船に手を入れる。

「気持ちいい。今すぐ浸かりたいよ」

『こっちは僕たちにちょうどいいね。アル、ありがとう』

 ハクは温度の低い湯船に前脚をちょんちょんと付けている。グレイもそろそろと前脚を付けてビクっとしてまた浸ける。あ、しっぽが早く振れてる。

 良かった。皆んな喜んでくれて。



 もうお昼の時間は過ぎていたので、軽めに食べる。今日からここに泊まれるから、テントは要らないね。

 横に屋根付きの炊事場作ろうかな?

 なんて考えながらスーザン作のキビ天ぷらのサンドを食べる。


 ギルドに突然呼び出されてキビサンドの件を問われてこちらを涙目で見ていたスーザンを思い出した。

「何を笑ってるの?」

 イリィが首を傾げて聞く。野外で見ても美形だなぁ。こんな美形と私は…考えて赤面する。

「顔が赤いよ?」

 頬を撫でるイリィの手にまた赤くなる。

「くすくす。何を考えて赤くなったの?」

 近づいてきて耳元で囁く。

 ますます赤くなった私の頭に軽くキスをして、続きは後でたっぷりね…って…。恥ずかしい。




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