5.探索者ギルドに行こう
探索者ギルドは大通りに面していて分かりやすいと聞いた。3階建ての建物なので遠くからでも目立つらしい。
宿のある脇通りから昨日屋台が出ていた通りに出る。そこから左に行って大きな通りに当たったら右に曲がって。そうするとすぐ分かると言われた。
大きな通りはいわゆるメインストリートで朝から人で賑わっていた。その先に確かに探索者ギルドの建物と思われる目立つ建物が見えた。
平家か2階建の通りの中では一際目立つ高くてゴツい建物だ。それを見ながらなるべくキョロキョロせずに歩いてゆく。
まだ若い見た目で優男風だと慣れてないことが分かればすぐに面倒ごとに巻き込まれそうだ。
そして建物の前に着いた。たくさんの人が吸い込まれていく。それに合わせて何気ない感じて建物に入る。入り口付近には椅子があったのでまずはそこに座った。そして部屋の中を眺める。
入り口正面にはカウンターがあって人が座っている。少し驚いたのは全員が男性だったこと。異世界あるあるでは美人な受付嬢だけど違うらしい。
右側の壁には掲示板が貼ってあり、その横にも職員らしき人がいる。見ていると掲示板の文字が読めないのか、何かを聞いている。
ちなみに掲示板は黒板でチョークらしきもので書かれていた。紙を剥がすとかではないんだ。
窓口は一番左が買取。その右が完了、真ん中の3つが依頼受注で一番右が新規登録だ。なぜ分かるかと言うと、窓口の上に文字で書いてある。
ちなみに文字が読めるのは洞察力スキルのおかげか異世界転移特典が分からない。洞察力はパッシブスキルなので基本、常時発動だからだ。
新規登録の窓口に行く人はいない。この時間は依頼受注が多いのだろう。
それなら行ってみるかな。腰を上げて窓口に向かう。そこにいる職員は整った顔の20代前半くらいの男性だった。
緊張しながら窓口にある椅子に座る。男性が
「新規登録か?」
と聞くのでうんと答えると小さな黒板を出して来た。
「文字は書ける?」
また頷くと黒板とチョークを渡されて書いてと言われる。
名前と歳だけでいいみたいだ。さらさらと買いて渡す。文字はローマ字見たいな感じで、書けるかと思ったけどそのままローマ字とアラビア数字で大丈夫だった。
男性はサッと目を通すと紙とインクを出してきた。そして左手の人差し指を持ってインクを塗る。赤く塗られた指を紙に押しつけて解放される。
インクを拭くものはくれないらしい。仕方ないのでポーチから布を出して拭く。昨日ボロ切れから使っておいた小さな手拭いだ。
職員はそれを静かに眺めると
「簡単に説明をする」そう前置きをして話はじめた。
探索者は各個人の責任で依頼を完遂すること。
ギルドは仕事の斡旋と初心者向けに講習などもする。また、ギルドには食堂が併設されていること。
見習いから初級に上がるための条件、依頼の受注方法。罰則などだ。
そして意外だったのが依頼は全て職員が紹介する方式であること。掲示板の依頼は常設で誰でも受けられるそうだ。単発の依頼は職員から斡旋してもらって受注する。
さらに基本的には単独で受注すること。パーティーなどを組むことはなく、探索者は個人で活動するそうだ。もっとも別々の依頼を受けてたまたま同じ場所に行くのはいいらしい。微妙な感じだがそこは黙認してるんだろう。
ただ、ギルドはあくまでも国営。なので組織として探索者を育て抱えたい人達もいる。だからクランは存在する。ある程度になると、ほぼどこかしらのクランに所属するみたいだ。強制ではないがケガをして活動が出来ない時などに互助する仕組みがあるので安心なんだろう。
だからクランも入る人間を選ぶ。何かあればクランが矢面に立つので当たり前ではあるが。
かなり丁寧に教えて貰えた。最後に質問は?と聞かれた。
「説明を聞いて嫌になったなら登録はやめられる。どうする?」
確認で聞かれた。もちろん登録一択だ。
「登録する」
そう答えると手元で黒板を操作してカードを取り出した。
「ギルドの登録カードだ。身分証明書にもなるから失くすなよ。再発行はまたお金がかかる。最初と同じ銀貨5枚だ」
頷くと
「登録料を」
ポーチから銀貨5枚を出すと渡す。それと引き換えにカードが貰えた。
白っぽいそのカードの表面には探索者ギルドのマークである剣が交差した絵があるだけだ。ランクなども書いていない。
「今はまだ見習いだからランクの表記はない。初級に上がるとLと表示される」
Lは多分英語のLow。中級はMで上級はHかな。当面の目標は初級だ。
「それでお前も探索者だ。何か質問はあるか?」
と聞かれたのでカードを見ていた目線を戻し
「初心者向けの講習を受けるのには費用がかかる?」
と聞いた。答えは無料とのこと。さらに講習を受けるのに必要な物はと聞けば身一つでいいとのこと。
他に聞きたいのは最近新規登録は多いのかだ。そう、他の転移者達だ。だから
「新規の登録者ってこの時期は多い?」と聞いた。すると今の時期はそんなに多くは無いらしい。初めてで不安だから同じ時期に登録した人がいるか気になったと言うとここしばらく誰もいないとのことだ。
それなら彼らはどうしているんだろう?気にはなったけど今は絡みたくないから話を変える。
「一番早い初心者講習を受けたい」
と言うとこれからすぐにでも出来るという。それならとお願いした。
そのまま職員の男性が席を立ち、カウンターを回って隣に来た。付いてこいと言われたので後ろについて歩く。カウンターの横を通り奥に続く廊下に出ると2つ目の扉を開いて中に入る。
続いて入ると扉を閉めて椅子に座るように言われる。部屋の中はそれなりの広さで8人座れる机と椅子があった。向かい合うように座ると
「初心者講習を始める。担当のイザークだ」
そう自己紹介してから講習が始まった。
依頼受注に必要な道具や装備、地理や知識など思いの外役にたつ内容でとても有意義だった。さらに初めての依頼時には担当官に補佐で付いてきた貰えるらしい。もちろん申請したら、だが。
お昼前までたっぷりと聞いた。今日から依頼を受けられると言われたが、準備があるのでやめた。最後に
「探索者以外の人を連れて依頼を受けられるのか?」と聞くと
「誰を連れて行く気なのか?」
と逆に聞かれた。初心者がなに言ってんだだよな。
「いや、聞いてみただけだ」
と答えた。まさか貧民街の子供を連れて行けるかとは聞けない。
イザークさんは初めて見た時から表情は乏しかったがとても丁寧に講習をしてくれた。いい人なのかもしれない。適当に講習したって分からないのに時々した質問にもちゃんと答えてくれたし。だからこそなんだろう。
「探索者以外を連れて行っても違反にはならない」
それだけ答えてくれた。自分で考えろってことなんだろう。
「分かったよ。今日は助かった」
「仕事だからな」
…最後までブレずに塩対応だった。
アイルはイザークが鉄仮面と呼ばれて探索者からも一目おかれ、自ら初心者講習などしないことを知らなかった。そして誰もが登録出来るわけではないことも。
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