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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第1章 異世界転移?

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48.精霊王の祝福

 部屋に戻る。ハクはのそりと起き上がった。

『精霊王の祝福か…ここに生命樹があったんだね』

「ハクは知らなかった?」

『気配がしなかった。今は精霊王が起きたから感じる』

「寝てた?」

『長い眠りについていたようだな』

「生命樹って?」

 ハクはこちらをチラリと見ると

『そのうち分かるよ』

 何だか優しい顔で言われてしまった?

 ふぁぁ…まだ夜は明けない。もう少し寝よう。

「ハク…一緒に寝よう?」

 ぐっと背中伸ばし、後ろ脚も伸ばすとぴょんとベットに飛び乗ってきた。

 ハクの少しひんやりした体を抱きしめて…すやぁ…ハクの毛皮は睡眠の魔法かな?


 顔をペロリと舐められる。ん?眠い…また目を閉じようとするとまた顔を舐められる。もう少し…顔にハクが顔にのしかかるって来た。腹毛が顔に…そのままハクを抱きしめて堪能する。

 テシテシ…頭を前脚で叩かれた…。

 あ、はい…起きます。

 ゆっくり起き上がる。あれ?なんか体がふわふわする?

『やっと起きたね。あぁ祝福の影響かな?』

「体がふわふわする」

『少したてば馴染むよ』

「うん…ハクぅ」

 そのままハクを抱きしめる。

 ふぅ、朝食は食堂だったな。

「行ってくる」

 ハクに声をかけて部屋を出る。


 食堂にはラルフ様がいた。

 こちらを見ると

「おはよう」

「おはようございます」

 じっと見られる。

「アイル、君は何者なの?」

「?」

「君の近くではいつも何かが起きる」

 そう言われても私のせいでは無いし。

「しばらく待とうと思ったけど聞かせてくれるね?兄様は少し体が怠いとまだ寝ているよ。昨日の祝福かな?」

 ロルフ様が?どうしよう?

 頷く。

「話せることはお話しします。支度をしたら昨日の木の下で」

 頷くとラルフ様は先に部屋に戻った。

 急いで朝食を食べる。

 何を話す?どこまで話す?ハクのことは?考えがまとまらない。


 先にロルフ様の様子を見に行こう。

 食べ終えてロルフ様たちの部屋を訪ねる。扉を開けたラルフ様が中に入れてくれる。

 ロルフ様はベットに横なっていて、いつも以上に顔色が悪い。

 側によって見つめる。


(精霊の祝福の効果で微熱がある)


 どうしたら治るかな?


(祝福の印に唇で触れると体に馴染んで熱が下がる)


 私は毛布の上にあるその細い手を握り

「ロルフ様、祝福の印はどこに?」

「印?あぁおでこ…」

 私は体を屈めてロルフ様のおでこに熱が下がりますように、と願いながらキスをした。

 ふわっと風を感じた。


 ロルフ様を見ると少し顔色が良くなっていて目を見開いている。握った手を強く握り返し、その手にそっと優しくキスをされる。

 ラルフ様がすかさずその手を奪い取り

「兄様大丈夫?」

「もう大丈夫」

 ロルフ様がゆるく微笑むと…やっぱりなぁぶれないね、ラルフ様は。

 私がキスしたおでこに、しっかりたっぷりと時間をかけてキスをしていた。

 上書きかな?


 私は部屋に戻りハクを抱きしめる。

「ハク、ラルフ様に話そうと思う。いつかは話そうと決めてはいたんだけど…もう少し後だと思ってた。どこまで話したら…」

 ハクは体ごとすり寄ると

『アルの思う通りにすればいい』

 頷いて支度を始める。と言っても腰に剣帯を巻くだけなんだけど。


 宿を出て昨日の木のところに行く。生命樹なんだ…異世界あるあるだと世界樹だけど違うのかな?

 その白く輝く幹に触れる。ざわり…。

 木が喜んでる?

 小さな光がふわりふわりと飛んでいる。朝日に輝く木に無数の光。幻想的だなぁ。

 その風景をイリィと並んで見たい、と思えた。イリィはいま何してる?


 目を閉じる。これはいつの記憶だろう…懐かしい。


 お兄ちゃんとナビィとどこだろう?芝生を駆けている。皆んな早いよ、待ってー。

 あ、足がもつれて転ぶ。

 気がついたナビィが駆け戻ってくる。遅れてお兄ちゃんも戻って来ると後ろから抱きかかかえて起こしてくれた。

 私の顔を覗き込み

「アイリ、大丈夫か?」

「うん!」

 今度は私の手を握り走り始める。しばらく走ると一緒に地面に仰向けになって寝転んだ。

 お兄ちゃんの手は暖かくて優しい。

 お兄ちゃん、気持ちいいねー!

 うん、アイリ…アイリ…アイリ…


「アイルッ!」

 肩を揺すられて目を開ける。



*******



 熱が下がり、軽く朝食を食べてからラルフと昨日の木に向かう。

 ラルフは私の手を離さない。

 20過ぎて弟に手を引かれるってどうなのかと思うけど、もしかしたらラルフが私の手を握っていたいのかもしれない。

 1人で頑張っちゃう子だから。私の手で少しでもラルフが楽になれるのならいくらでも握っていて。

 

 木の下にアイルが佇んでいる。幹に手を当てて…ゆらり…アイルの体が揺れる。

 また倒れたらと思ったけど大丈夫だった。

 ゆっくりと顔を上げて木を見上げている。目を閉じたそこから涙が零れ落ちた。

 

 心配になり駆け寄る。アイル、アイル…。

 その口が動く。お兄ちゃん…。

 なんだか彼が遠くに行ってしまいそうで、その肩を揺すり

「アイル!」

 と呼ぶ。目を開けてこちらを見る。その頬の涙が伝う。

 

 彼の肩を抱いてラルフと3人で地面に座る。

 アイルは眼を伏せて何かを考えている。

 君はどこかに行ってしまいそうで…その手を握り締めた。



 

 アイル!

 名前を呼ばれて目を開ける。私はもうアイリじゃない。

 お兄ちゃん、そう呟いた。

 

 目を開けるとロルフ様が心配そうに私を見ている。

 そのまま肩を抱かれて少し離れた地面にラルフ様と3人で座る。座るとロルフ様が手を繋いできた。

 その手は追憶の中のお兄ちゃんの手のようにとても暖かかった。

 そっと握り返す。

 安心したように頷くロルフ様。

 

 ハクは私の膝に頭をのせてぺたっと伏せている。

 その頭を撫でてポツポツと話し始めた。

 

「私の故郷はとても遠いところで、家族がいました。でも私は遠く離れたここに…。急なことで、別れの言葉も言えずに…。私はこの国のことをあまり知りません。今少しずつ学んでいて」

 


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