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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第8章 帝国の王都へ

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412.仲間との再会

 挨拶が終わった所で

「突然の祝いではあるが、各方面から人が来ておる。宿は取れないからな、この屋敷に滞在してくれ。あぁ、ロルフリートの同行者たちもこの屋敷の離れにおる。アイル君もそちらに滞在してくれ。テオドールとシユラルクは王都に屋敷があるな?せめて祭りの間くらいは帰るといい」


 テオとラルクは顔を見合わせ、

「先振れを出したいのですが…」

「それならこちらから出しておる。身一つで良いから戻れとの伝言だ」

 2人は驚いてから深々と頭を下げた。そして僕を見ると

「アイル、しばし離れる。屋台には参加するからまた連絡する」

「私も、少し離れる。屋台は一緒にやろう。楽しみにしている」

「うん、でもゆっくりして?せっかく会えるんだから」

「…ありがとう」

「私はアイルのそばにいたいのだ。だから大丈夫」

「ふふっ分かった。待ってるよ!」


 テオとラルクは退室した。

「ナリス、離れにご案内しなさい」

「はい!」

「その後は戻るのだぞ?報告を聞かねばならないからな」

「…はい」

 くすっナリスってば叱られる子供みたい。僕が笑ったら憮然とした顔をした。

「いい大人が、子供みたい…」

 ロリィはナリスに辛辣だ。それがまた新鮮。


 あれ、新鮮?僕は改めてロリィを見る。真っ直ぐな姿勢は品が良く、仕草の全てが美しい。

「ロリィはきれいだね…」

 僅かに頬を染めて僕を見る。

 そう、僕は確かにこの目を知っている。どこまでも真っすぐで真摯な目。僕を見つめる優しい目、ゆるぎない信頼と親愛の証。

 ロリィは僕の手をぎゅっと握るとナビィを床に降ろして立ち上がる。

 僕もハクとコムギを降ろすとロリィに続いて立上り、ナリスの後に続いた。

 シルフィは僕の左手を握って側に寄り添う。


 屋敷を出ると少し歩いた先に離れがあった。もっとも離れと言っても立派なお屋敷だ。

 思わず見上げてしまった。

 ナリスとロリィがほほえましい顔で見ているのが居たたまれない。

「僕と一緒に来た人たちを紹介するよ、もちろんイーリスもいる」

「僕…」

 ぽつりと呟いたナリスをロリィが冷たく見ていたけど、僕はイリィの名前にドキドキしていた。

 思わず顔が赤くなる。イリィの柔らかな体を思い出してしまって。

 やっと会える…。喜んでくれるかな、でも…僕は。

 少し怖い。イリィを裏切ったりしていないけど、でも…。


「大丈夫、だよ。イーリスは分かってる」

 ロリィを見る。なんで分かったの?

「イルの魔力とシルフィ―ヌ様の魔力がね…助けたかったんでしょ?大丈夫」

 僕の頬を撫でながら言ってくれる。僕はそっとロリィももたれて顔を上げた。

「ありがとう…」


 離れの玄関に付いた。

 玄関の扉をナリスが開けるとそこにはフードを被ったイリィがいて、僕を見ると飛びついてきた。

 ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

「イリィ…」

「アイ、会いたかったよ…アイ」

「僕も会いたかった…イリィ」

「シルフィーヌ様と…?」

 イリィが僕の頬に手を当てて聞く。しっかり目を見て頷くと優しく笑った。

「やっぱりアイだね、僕はそんなアイが大好きだよ!」

 イリィ…

「僕もそう言ってくれるイリィが大好き…」


 ぎゅっと抱き着く。大好きなイリィの香りとその体温で安心して力が抜ける。

「ふふっ可愛い。もうすこし頑張って」

 僕はイリィに手を引かれて離れに入った。


「おい、あの子がアイルの本命か?いや、全然態度が違うな」

「当たり前、どこかの変態とは違う、よ」

「変態って、おい。お前の時も思ったけど、アイルって俺たちに全く甘えてなかったんだな。あんな風に自分から寄り添うのは初めて見た」

「イルは人に頼るのが苦手な子。甘えさせないと、壊れてしまう…。周りがあれだけ力があって、イルの力も…自分で何でも出来る。それはとても孤独。イルだけで完結してしまうから」

「力がある故に、か。それは確かに孤独だな」


 そんな会話がされているとは知らず、僕はイリィと廊下を進んで歩いていた。

 ある扉の前でイリィが止まると中から扉が勢いよく開いた。

 ビクッ

 思わずイリィの後ろに隠れる。

 そこに立っていたのは背が高くて筋肉増し増しの男性。

 大きな目と大きな鼻の強面な、でもとてもとても優しい目をした男性だった。


「アイル…」

 呟いた言葉は僕の名前。

 僕はフードの奥からその人を見る。大きい。イリィの後ろから出て見上げていると手が伸びて来た。

 じっと見ていたらおもむろに僕のわきに手を入れて片腕に抱き上げた。

 えっと…僕は抱っこされているの?しかも片腕で。

 目の前にはその人の横顔が見える。強面なのにまったく怖くない。

 ぎろりとこちらを見る。思わず逞しい肩や二の腕に触れる。うわ、硬い。


 その大きな人は

「上級探索者のスーザンだ。よろしくな」

「アイルだよ、よろしく!凄い筋肉だね…」

 なおも触っていると

「ふはっ」

 うわ、笑った。強面だけど笑うと凄く優しい顔になる。

 突然、僕の手が誰かに掴まれた。

 そちらを見ると左目の下にホクロのある妖艶な男性がいた。目が覚めるような青い目のまだ若い男性。


 僕の手を握って口元は笑ってるけど目が少し怖い。思わずスーザンに抱き付く。

「僕はウールリア、スージィは僕の旦那様だから。お触りはだめだよ?」

 僕はびっくりしてスーザンとウールリアを交互に見る。あ、睨まれた。慌てて頷く。うん、逆らっちゃダメな感じだ。

 僕はスーザンに降ろしてもらう。なんか僕が触った所を撫でてるな、消毒?


 次に前に来たのはまだ若い男性2人。2人ともきれいな金髪に1人はちょっと目が吊り上がっていてキツい顔、もう1人は穏やかな顔の、でもどちらもカッコいい男性だ。自分の小さな手や細い体が恥ずかしい。

 もじもじしていたら

「変わらんな…」

 キツい顔の男性が優しく僕を見ていた。あれ、実はいい人?首を傾げると隣の人が

「僕はフェリクス・アフロシア。アフロシア侯爵家の長男だよ。彼はイザーク、僕の旦那様。初めに言っておくよ、お触りは禁止だからね!」

 優しげな男性に、にこやかに爽やかに言われたけど、内容が…。思わず笑ってしまった。


 あ…フェリクス様の顔が怖い。

「フェル、怖がらせてどうする?」

「つい、ね?イズ、そんな顔は僕だけに見せて…」

 見つめ合う2人。えっと僕はお邪魔かな。もぞもぞしたらイザークさんが頭を軽く撫でて

「無事で良かった…」

 やっぱり優しい人だ。じっと見てたら

「減るからダメ…」

 目の前に遮るように…ブレないフェリクス様だ。思わず頷く。


 その後はとても透明な感じのする男性。何故か目に涙を溜めて僕を見ている。その透けるほど透明な水色の目。どこかで見た…?

 じっと見つめていると

「アイル…」

 少し掠れた耳に心地よい声。あ、この声は



 ―アイル、もう一度会いたかった―



 きっとあの声だ。ならこの人も?

 だから

「もう一度、会えたね…」

 その人は目を大きく開いて口に手を当てる。その手は震えていて、瞑った目から涙が溢れた。僕はその涙を拭って

「聞こえたよ…エリ」

 そう、彼はエリだ。

 虹彩が透けるような淡い瞳と透けるほど白い肌に白い髪。整った顔立ちの男性だ。

 涙で潤んだ目を開けると

「アイル…名前」

「うん、名前しか分からなくて…」


 エリは首を振ると

「充分だよ…」

 そう言って僕を抱きしめた。強く…震えながら。その背中に手を回して僕も抱きしめる。

 この人の清らかな匂いも記憶にある。たくさん我慢してたくさん傷付いて、それでも真っ直ぐに生きた人。

「もう、傷まない…?」

 何が、か分からないけど口をついて出た。僕の髪にエリの涙が落ちる。

「アイルがいれば、大丈夫。だからもう、消えないで…」

 僕はどんな状況で飛ばされたのか知らない。でも、こんなに泣かせるくらいの状況だったのかな。思い出せない記憶。


「ごめんね…分からなくて、消えないって言えたらいいのに…」

 ハッとしたように顔を上げたエリは

「ごめん…」

 僕は首を振る。

「僕こそ、ごめん…」

 もう一度、ぎゅっと抱きしめると離れた。その際に僕の頬にキスをしてふわりと微笑んだ。春の陽差しのような、華やかな微笑みだった。

「エリ、きれいだよ…」

 エリは少し驚いてからくしゃっと笑うと

「アイルはやっぱりアイルだ」


 その後ろにいたきれいな女の人が僕の顔を見て、全身を見て、また顔を見てから飛びついて来た。

 えっえっえっ…?

 凄い力で抱きしめられている。その後ガバッと体を起こすと全身を触って後ろに回ってさらに触って前に回って頬を両手で挟んで、泣きながらまた抱きしめられた。

 その間、僕は固まっていた。

 知らない女の人に全身くまなく触られた…もちろんあそこも。

 えっ…ぶわっと頬が染まる。

「母上、アイルが困ってます」

 母上?確かにエリに似てるかも。髪は銀髪で目は金色だから、エリと色は違うけど。それにとっても若い。

 目をパチパチさせていると


「うぐっ…良かったーえぐっひっく、うわぁぁん…」

 ええっ…僕に抱きついたまま大泣きしてる。ど、ど、どうしたら?

 エリを見ると困った顔をしながらも、仕方ないと言う顔。ロリィを見てもおんなじ顔。イリィもだ。

 それは泣き止むまでこのまま?

 でも僕より大人の女性がこんなに泣くんだから、きっと僕が泣かせてるんだよね?

 だから僕もその人を抱きしめる。柔らかな女の人の体。なのに、お母さんみたいに安心できる。

 ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、しばらく泣いてようやく顔を上げてくれた。


 鼻水出てる。僕は洗浄で顔をきれいにして、シルクの布でその涙を拭いた。

「落ち着いた?」

 コクンと子供みたいに頷く。

「我はイグニスじゃ…ぐすん、エリの親戚で…うぐっごめん、我のせいで…アイルは飛ばされたんじゃ。怖かったであろう、寂しかったであろう…許せ」

 目に涙を溜めて、震える声でそう言うイグニス様。


「1人だったけど、孤独じゃなかったよ。ビクトルがいてくれたから。それにすぐコムギにも会えたし。その後はナビィが僕を見つけてくれた。ハクもブランも、イリィも…みんな探してくれて。だから寂しくなかったよ!泣かないで、僕は大丈夫…大丈夫だから」

 イグニス様はまた泣きながら

「だからじゃ…アイルはそうやって…うわぁぁん」




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークが捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発


1月12日 ポポロンたちがミュジークに合流

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む

アイルの動向がギルドを通じて伝わる


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される

迷宮8日目 40階層到着 転移陣でナリスと狼は地上へ

アイルはサフィアが助けたロキを保護する


1月27日 アイルたち地上に帰還

アイルの無事がバナパルトに伝わる


1月28日 イーリスが目覚める


1月30日 イーリスがアイルと再会する


2月1日 イーリスがバナパルトに帰還


2月2日 迷宮調査員が到着

アイルたちはロイカナの町に向けて出発


2月3日 イーリスたちが王都を出発

アイルたちがロイカナの町を出発


2月12日 ミュジークたち王都へ帰還


2月14日 王宮にて弾劾が行われる


2月15日 帝国の話が世界を駆け巡り衝撃が走る

アイルたちが町に着く


3月13日 アイルたちが王都に到着

ロルフリートたちアイル捜索隊の面々と再会する


3月15日 ピュリッツァー帝国の王都で祝賀が始まる


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