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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第8章 帝国の王都へ

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411.ピュリッツァー帝国の祝賀

「お、お前…はぁ間違いないようだな」

 僕はロリィとナリスを交互に見る。ロリィは僕を見るとふわっと笑う。ケンカじゃないよね?

「能天気なのは無視していい…」

 えっとナリスのことかな。

「変なこと、されなかった?」

 変なことは特に。

「一緒にお風呂に入ったり、同じベットで寝たり抱きしめられたり、キスされたくらい?」

 と僕が言うとロリィはぐりん、とナリスを振り返った。

 あれ、なんか…寒気が。


「ナリスリーベルはいつから…子供好きな変態になった?」

 子供好きな変態…えぇ。びっくりしてナリスを見れば

「はぁ?子供ってほど子供じゃないだろ?それに親愛のだ!や、やましい気持ちなんて…無い…筈」

 言い切ってよ、そこは。


「筈?やっぱり変態か。イルの裸を見るなんて…」

 ロリィが僕を腕に庇う。

「他の騎士たちには…?」

「えっと、ナリスと同じ…」

「…」

 さ、寒気がする?ロリィ…その体に抱き付く。ロリィが気が付いて僕を抱きしめる。

「大丈夫…あの変態には指一本すら触らせないから」


「ま、待て待て待て。そんなんじゃない…筈」 

 だから言い切ってよ!

「ロリィ、ナリスもテオも、そんなんじゃ無いよ?だってシルフィと仲良くしてたし。ラルクは分からないけど…何もされてない」

「ロリィ…」

 ナリスが呟く。ロリィはナリスを無視して

「抱きしめられて、キス…は普通しない」

 そうなの?同性ならみんなしてると思ってた。シルフィも普通にして来たし。

「同性のあいさつじゃ無い?」

「違うよ…」


 ナリスは固まっている。

「普通は確かにしないな。ただな、同志ならすることもあるぞ!」

 セオドアさんが口を挟む。ロリィから冷気が漂う。

「あ、後はまだ小さな子とかな…」

 さらに冷気が…。セオドアさんはそっと目を逸らした。

「ナリスリーベル、後で少し…」

「は、はいっ!」

 何故か敬語なナリスだった。


「ふっふっ、まさかあのロルフリートがな…いや、変わるもんだな」

「イルは大切な人…スカイシークにも、帝国にも渡さない」

 アルファードさんは優しく笑うと

「分かっているさ。王の所にもバナパルトの盟友から連絡があった。大切な孫は渡さんってな。我々もこの混乱の中、バナパルトを敵に回すことはしない。それに、アイル君の気持ちは…固まっているようだし、な」

 孫って僕のこと?僕には家族がいないけど。

「後で話すよ…」

 ロリィは僕の頬を撫でながら言う。いつの間にか冷気は消えていた。


「時に、君の仲間たちを紹介してくれないか?あぁ、もちろん、例の騎士もな」

「はい、今は客間に…」

「それなら執事がいま呼びに行ってるぞ」

 ナリスが教えてくれる。

 少しして扉が叩かれる。

「入って貰え」

 アルファード様が応えると扉が開いた。ハクとナビィとシルフィが飛び込んでくる。


 ハクとナビィは僕の膝に飛び乗り、シルフィは背後から抱きついて来た。

 ビクトルとバクセルは首元に隠れてたから、そっと出て来て顔の近くをふよふよ飛んでいる。

 ブランとトムとジェリーも隠れてたから出て来て肩の上に。

 コムギもとてとて歩いて来て膝によじ登る。代わりにナビィはロリィの膝の上に乗って顎を僕の膝に載せる。

 サファイアは僕の足の間にちんまりと座った。

 シーク、テト、ルクにイラはサフィアの前で座って寛いだ。

 テオとラルクはソファの手前で直立している。


 アルファード様とセオドア様は目を丸くしてみんなを見ていた。ロリィはコムギやサフィア、そして僕に抱きついてるシルフィを見ている。

「そ、その…これはまた豪華な。紹介してくれるかい?」

 僕はロリィを見る。

「大丈夫だよ、伝えても」

 ビクトルも

(話していいよ!あ、ハクは聖獣だよ?)


「まず、この白い子はハクで聖獣の白銀狼です。肩のこの子は聖獣の白大鷹でブラン、この黒い子は黒曜犬のナビィ、この茶色く見えてる子は聖獣の銀熊でコムギ、肩の上の白い小さな子たちは霊獣の白ネズミのトムとジェリー、大きな子はその母親でサフィニア。背中のきれいな子は人型精霊のシルフィーヌ、顔の近くの妖精はビクトルとバクセル、そしてこの黒髪の妖精はチャロで、聖剣のディスタンシアと共存しています。ハクの背中の妖精はシュレです。サフィニアの前にいる4頭はシンリンオオカミで種族進化した霊獣です」

「「…」」 


 しばしの沈黙の後、アルファード様とセオドア様はおもむろに立ち上がり、跪く。ロリィは胸に手を当てて頭を下げた。

 誰に?

 僕は混乱して固まっているとハクとナビィが

『そういうの、要らないよ!』

 ディシーも

『我はアイルの持ち物であるからな、礼儀は不要じゃ』

 シルフィも

「そういうの、要らない…」

 コムギとサフィア、オオカミズは他人事なのか気にせず僕に甘えている。

「アルファード様、セオドア様、ロリィも…頭を上げて下さい。みんなそういうのは不要だと」

 一斉に頭を上げる。


「聞いてはいたが、これほど迄とは…」

「叔父様、まだです…」

「「…」」

「イルの契約者はまだいます、よ」

「いや、参ったな…聖剣に精霊王様までとは」

 僕はテオとラルクを見る。

「そこにいる騎士は()()騎士でテオとラルクです」

「テオドール・バシュルクと申します」

「シュラルク・マチローニと申します」

 あれ、縮めてたんだ。ナリスもそうだよね。ぼくは全く縮めてたないけどな。

「バシュルク伯爵家とマチローニ侯爵家か」

「「はっ!」」


「大物…だね」

 ロリィが呟く。

 そうなの?

「バシュルク伯爵家は歴史ある南部の大家である伯爵家。マチローニ侯爵家は10家ある侯爵家の序列3位、力のある南部のこちらも大家、だよ」

 そうなんだ?ロリィの侯爵家はどうなんだろう。

「カルヴァン侯爵家は北部の穀倉地帯。国の食糧庫、だね。歴史もそれなりに、古いよ」

 みんな凄いなぁ。なんか僕だけ普通だ。恥ずかしい。意味もなくハクの背中を撫でる。



(おい、主は急に俯いたぞ?もしかして自分だけ普通とか思ってないよな?)

(思ってるから俯いだんだよ!)

(これだけ聖獣やら霊獣を従えて、精霊王までいるのにか?どう見ても貴族より遥かに権力も力も圧倒してるだろ?)

(自覚がないからね…)

 ひそひそとディスタンシアとビクトルが会話をする。アイルには聞こえていないが。


 ナリスはテオとラルクに小声で

「なぁ、アイルが俯いたが、もしかして自分だけ平凡とか思ってないよな?」

「思ってるだろ」

「思ってるな…無自覚だから」

「いやいやどんだけ豪華だよ。貴族より貴重だぞ?」

「それが分かってないのがアイルだよな」

「そこがまた可愛いんだが…」

 ひそひそと3人で話をしていた。


「父上、アイルはもしかして…自分だけ普通とか思っていませんか?」

「まさかそんなこと…あるな」

 セオドアとアルファードも小声で話をしていた。

 驚いてアイルを見つめる2人。


「イル、特別なのは君、だよ…。こんなにも聖なるものに囲まれている。それは貴族より遥かに凄いこと…」

 ロリィ…?

「アイル、僕は長いこと生きて来て、人に触れたいと思ったのは初めてだ。君は僕を利用しようとなんてしなかった。ただ助けたいと、そう思ってくれた。その心はとても澄んでいて、それこそが稀有な存在。だからその顔を見せて…大好きなアイル」

 シルフィも。


 僕はロリィに相応しい?

「大丈夫…僕の大切な人はこんなにも愛されている。素晴らしい人…だから自信を持って」

「ロリィ、ありがとう…シルフィも」

『我が主と認めたのだ!胸を張れ、アイルよ』

「ふふっディシーもありがとう!」



 不思議なものだな。あの堅物で真面目なだけのロルフリートがこんなにも優しい顔をするなど。しかも笑った顔など初めて見た。なんと爽やかで優しい眼差しであろうか。

 どこか悪ぶっていたナリスさえも、アイルから目が離せなかったようだ。なるほどな、これは敵わない。聖獣1体ですら国を滅ぼせるのに、3体に神の使徒である黒曜犬、霊獣に精霊王、聖剣に妖精…。まだあると言うのか。これで自覚も自信も無いとは。それがまた可愛い。

 無垢で清らかで澄んだ心の持ち主。


 近衛騎士を守るため、商業ギルドに登録して、祝の屋台をするなど誰が考えようか。

 しかも商業ギルドからの懇願によるのだ。話を聞いた限りでは余りにも胡散臭く感じたが。

 本人は一見、普通の子だ。もちろんその髪の毛も目もとても美しい銀色であるし、整った顔と小柄で細い体は助けてやりたくなる。


 それが心を惹かれると言われたらその通りだ。この調子で当たり前みたいに助けられたら、それは彼のそばにいたいと願うのも道理だ。

 これはまた素晴らしい出会いであった。

 そう1人で納得したアルファードだった。




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークが捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発


1月12日 ポポロンたちがミュジークに合流

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む

アイルの動向がギルドを通じて伝わる


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される

迷宮8日目 40階層到着 転移陣でナリスと狼は地上へ

アイルはサフィアが助けたロキを保護する


1月27日 アイルたち地上に帰還

アイルの無事がバナパルトに伝わる


1月28日 イーリスが目覚める


1月30日 イーリスがアイルと再会する


2月1日 イーリスがバナパルトに帰還


2月2日 迷宮調査員が到着

アイルたちはロイカナの町に向けて出発


2月3日 イーリスたちが王都を出発

アイルたちがロイカナの町を出発


2月12日 ミュジークたち王都へ帰還


2月14日 王宮にて弾劾が行われる


2月15日 帝国の話が世界を駆け巡り衝撃が走る

アイルたちが町に着く


3月13日 アイルたちが王都に到着

ロルフリートと再会する


3月15日 ピュリッツァー帝国の王都で祝賀が始まる


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