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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第8章 帝国の王都へ

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408.バナパルト王国にて1

 ピュリッツァー帝国での出来事は隣の国、バナパルト王国にも届いた。

 帝国の隠された姫。それはここ最近、囁かれている話題だ。帝国の第一子である王女。素性は表に出ず、動向も知られていなかった。


 その姫が出奔したとの噂から約2ヶ月。その姫が身罷られた。王宮で毒を盛られ、呪いを受け…生きるの為に呪いや毒を解くと言う北の山を目指すも、志半ばで力尽きた。

 そして、王女に毒を盛った罪で妃たちは塔に幽閉された。王子と王女は出奔した姫を殺そうと刺客を送ったとしてその場で断罪され、王に斬られた。


 姫の出奔に付き従った勇敢な従者は、姫の功績を讃えるという名目で新たな公爵位を賜った。姫の近衛騎士として付き従った騎士たちはそのまま公爵家のお抱え騎士となったそうだ。

 その新たな公爵はまだ16才で、凛々しい姿は麗しく、青銀の髪を持つと言う。それは王族である証。


 隠された王子との憶測もあったが、王族の血を引く貴族であるとの発表があった。

 王家については秘密も多いことから、誰しもが然もありなんと受け入れた。

 悲劇の姫に寄り添った騎士として、新たな公爵は人気となりその動向が注目されている。


 そして、現王は降王し元王であるお父上が国王に返り咲いた。王の交代と新しい公爵のお披露目を急きょ行うという通達が各国にあったのだ。

 騒然とした。お披露目は今より1ヶ月後。比較的近い近隣国なら出席も可能だが、バナパルトの王宮からはどれほど急いでも2ヶ月近くかかる。


 王より相談を受けたイリリウムは頭を抱えた。友好国としては誰かを派遣したい。折しも、視察という名目のお忍びでゼクスとフィフスに向かうと決めて準備を進め、

 日程の調整が終わったばかりだ。

 しかも、あのアイルの動向が知れた。帝国の新しい迷宮の発現に巻き込まれていたとか。

 無事であったとの報告はその後にもたらされ、安堵したものだ。

 それから22日後にはこの帝国の変だ。


 アイル捜索隊がゼクスを出発したのと時を同じくして、彼の動向が知れた。ハウラルが王都付近に来たら連絡を取る予定が、まさかの襲撃。狡猾な相手によりエバルデル伯爵以下2名が危うく亡くなるところだった。

 それを助けたのが誰なのか、詳細は不明とされているが。アイルが守りたい者を守ったのだとそう思っている。


 そう言えばカルヴァン侯爵の母君は確か帝国の出身であるな。スカイシーク公爵家であったか。ちょうどロルフリート殿が帝国に向かっている。しかも、折よくアフロシア侯爵の嫡男であるフェリクス殿もロルフリート殿に同行している。

 さらに魔術師団からはハウラル上級研究員もいる。保冷庫の一つでも献上すれば、充分であろう。

 12日ほど前にここを出発しているが、後1ヶ月で帝国の王都まで辿り着けるか?

 早馬でロルフリート殿とフェリクス殿、ハウラルだけでも合流できれば面目は立つ。

 ハウラルに急ぎ、鳥を飛ばした。間に合えば良いが。


 それにしてもアイルは大丈夫だろうか?隠された姫が向かったのは北。アイルも北にいると推測され、その位置的にもミュシュランテスに飛ばされたと思われる。

 姫が目指したのも御神木だとしたら、接点があるのではないか?これはマズイぞ。


 すぐにも現王であるアヤツに手を出さないよう伝えなくては。

 まさか孫の為にワシを裏切りはしないだろう。アイルはワシの大切な孫なのだ。逝った盟友の無念を晴らしてくれた大切な孫なのだ。決して渡しはせぬ

 そう決意し、早速手紙をしたためた。





 僕たちが立ち寄った町でナリス、テオ、ラルクは手紙を読んでから静かだ。何かを考え込んでいる。

 僕はただ、イリィに早く会いたくて急いでいたけど。ニミと連絡をとっているビクトルによると、そんなに急がなくても大丈夫そうだ。

 そう言ったビクトルも何か考えているのか、黙り込んでしまった。


 僕は宿に帰って部屋でハクたちと戯れている。ビクトルはちょっと外すと言ってどこかに行った。

 ならばと僕はハクとナビィを連れて町に出た。仕入れをしたかったからね。

 果物や野菜と魚をたくさん買った。小麦粉はテッドが各町で僕が受け取れるように送ってくれてる。屋台は順調らしい。


 一通りの買い物を終えるとナリスに呼ばれた。その部屋に入ると難しい顔をしたナリスたちがいた。ビクトルもいつの間にか戻っている。

「アイル、王都には寄らずに進むと行っていたが…王都に寄って欲しい」

 驚いた。僕は王都に用がないと伝えていたし、なるべく早くイリィに会いたい。だから寄りたくない。そもそもナリスと共に旅をする理由が僕には無いのだ。

「ナリスが王都に行くなら、別行動になるだけだよ」

 ナリスは口を結んで俯く。僕には関係ないし。


「それは…そうだが、祭りがあるんだ。商業ギルドからも川蛇の屋台をして欲しいと言われていただろ?」

 ナリスは何を隠してるんだろ?

 ビクトルが

(アイル、王都に行こう!)

 僕は驚いた。王都に用が無いから通過と行ったのはビクトルだ。

(どうして?)

(予定が変わったんだ。アイルを探す一行は、もちろんイーリスも、王都を目指す)

(イリィも?)

(そうだよ、ナリスはアイルを探している人の中にいる貴族と親戚なんだ)

 それは…ナリスが貴族なのは薄々知ってたけど。

(ナリスはどうして僕を王都へ行かせたいの?)

(それは…アイルは知らなくていい)

(…イリィに迷惑がかからない?)

(それは大丈夫、むしろ王都に行かない方が良く無い)


 僕はしばらく考えていた。するとテオが

「アイル、俺からも頼む。王都に向かいたいんだ。近衛の退役も正式に申し出て…」

「私もだ、アイル。きちんと整理をしたい」

 ラルクも続ける。

「…僕には関係ないよね?僕が望んだことじゃないし」

 そう、僕は1人でも大丈夫なのだ。もちろん、面倒ごとは増えるだろうけど。


 2人は青ざめた顔で僕を見る。

「そばに…いさせてくれ。私はアイルを生涯の主を決めた。だから…」

 ラルクが目に涙を溜めて言う。テオも涙目だ。

 僕はため息を吐く。僕にとって最も守りたい者はイリィだ。彼らがいることがイリィにとってどうなるのか、判断できない。


(アイル、大丈夫。彼らは決して裏切らない)

 ビクトルは甘いな。

(主に似て、ね。だってもう仕方ないって思ってるよね。ただ、イーリスの事を気にしてるだけで。それはもう許してるって事だよ)

 もう…分かってるよ。僕はまたため息を吐く。

「分かったよ」


『ナリス、ロルフリートはアイルを探している。聞いてるだろう?』

 ビクトルが話しかけ、ナリスは顔を上げて頷く。

 ロルフリート、ロルフリート…それはもしかしてロリィ?僕はそわそわする。何だろうとても温かくて優しい気持ちになる。ロリィ、僕を探してくれているの?


「あぁ、ロルフリートは今回のその、祭りの祝賀に出席する為に王都へ来る。国賓として。彼は私のハトコなんだ。幼少の頃に会ったこともあるし、今でも連絡をとっている。私の父と彼の父が従兄弟でな。で、今更だが私はナリスリーベル・スカイシークと言う。この国の公爵家の三男だ」


 それを聞いてテオとラルクが固まった。

「スカイシーク公爵家…まさか、巫女の?」

「あぁ、黙っていて悪かったな」

「お前たちは元第一王子の近衛だったな?今、王都は大変なことになっている。退役の扱いになっているかも含め、早く出頭した方がいい」


 僕には色々と分からない。ナリスは僕を見ると

「彼らの立場は危うい。下手をすれば捕縛され、即処刑だ」

 なんで…どうし、あ…待って。帝国の隠された姫。追っ手、元第一王子の近衛。そんな…。ライラの主は、あの女の子が帝国の隠された姫だった?身罷られたって死んだって事…ライラも?


「死んだの…?姫は」

 僕の言葉にナリスは何も返さない。そうなのか…。僕はあのライラが姫を守りきれなかったことが信じられない。本当に?

(アイル、真実を見失っちゃダメだ。()()()()()。でも、ライラの主は生きてるよ)


 あ…隠された姫は、そう言うこと?

(アイル、大丈夫。ちゃんと守ったよ!)

 そうか、ならばいいよ。

「分かったよ、僕の騎士としてそばにいて。決して離れないで。処遇が確定するまでは。僕が守るよ」

 テオもラルクも目に涙を浮かべて頷いた。


 こうして予定外の王都行きが決まった。色々ときな臭いことはあるけれど、イリィに会える。そしてきっとロリィにも。気持ちが踊る。早く、早く会いたいよ…イリィ、そしてロリィ。




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークが捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発


1月12日 ポポロンたちがミュジークに合流

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む

アイルの動向がギルドを通じて伝わる


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される

迷宮8日目 40階層到着 転移陣でナリスと狼は地上へ

アイルはサフィアが助けたロキを保護する


1月27日 アイルたち地上に帰還

アイルの無事がバナパルトに伝わる


1月28日 イーリスが目覚める


1月30日 イーリスがアイルと再会する


2月1日 イーリスがバナパルトに帰還


2月2日 迷宮調査員が到着

アイルたちはロイカナの町に向けて出発


2月3日 イーリスたちが王都を出発

アイルたちがロイカナの町を出発


2月12日 ミュジークたち王都へ帰還


2月14日 王宮にて弾劾が行われる


2月15日 帝国の話が世界を駆け巡り衝撃が走る

アイルたちが町に着く


3月13日 アイルたちが王都に到着


3月15日 ピュリッツァー帝国の王都で祝賀が始まる


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