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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第8章 帝国の王都へ

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412/420

406.弾劾の儀

 その日、世界に激震が走った。

 ピュリッツァー帝国の王宮で起きたその話は、瞬く間に世界中を駆け抜けた。




 その2日前、とある王都の屋敷で…


 振り返って分かった。陽に照らされて見えなかった髪の色は青銀。顔に刻まれた皺。ならばこの方は。

 私も跪く。

「ようやく会えたな、ミュジークよ」

 頭を垂れ

「はっ!敬愛するミュレイス・ピュリッツァー元国王陛下。お初にお目に掛かります」

 静かな時間が過ぎる。


「カイゼルにナイゼル、固いぞ?ミュゼも。顔を上げろ!」

 えっ?カイゼルとナイゼルは知っているのか?それにミュゼとは母上が私の幼少期に呼んでいた愛称ではないか。

 私は困惑して顔を上げる。

 そこにはお祖父様が間近にいて、膝を突き私を見ていた。

 私の手を取ると立ち上がらせる。お祖父様は確か50才。老け込むほどの歳ではないが、それにしても若い。力強いその目は40代でも通るほどだ。


「まずは座ろうか…いやその前にもっと顔を見せておくれ」

 私の頬をそっと撫でて見つめるお祖父様。ふっと顔を緩めるとふわりと抱きしめられた。私もかなり背はあるのだが、その私を丸ごと包んでしまうお祖父様。こんな風に誰かに抱きしめられたのはいつ以来だろうか。思わず涙が込み上げる。

「許せ…」

 ポツリと溢れたその言葉は静かな部屋に溶けるように消えた。


 私が身じろぐとお祖父様は離れて、涙を拭いて下さる。

「座りなさい」

 お祖父様に手を引かれ、ソファに並んで腰掛ける。タウリン、カイゼルにナイゼルは対面に座った。

「その、お祖父様とカイゼルたちは?」

「ふっ2人は私付き近衛騎士であったのだ」

 えっ?知らなかった。2人ともどこ吹く風という顔だ。

「昔々の事ですからな」

「忘れてしまいましたわ」

「お前たち、冷たいではないか」


 随分と気安い。

「何度も死線を一緒に潜り抜けたからな…」

「知りませんでした」

 お祖父様は私を見て

「帝国の隠された姫。真実を詳らかにするか?それを告げれば王位は転がって来るが」

「私は国を継ぎません。王位に踊らされるのは真平です」

「この国の法では死なない限り、王位は継がなければならない」

「ならば、法を変えればいい。刺客を送った上の弟と妹は殺します。下の弟と共に私が死を選ぶと。あぁその前に妃たちも全員殺しましょうか。それで迫るのです。王に生きるか死ぬか。私が死ぬのならもちろん、王も道連れですが」


 お祖父様は傷ましそうに私を見る。

「妃たちは終身棟に幽閉しよう。2人の孫も仕方ないであろうな。長年に渡るソナタへの悪業はな。本当に継がぬか、王位を」

「私には無理です…何も知らない。なんの教育も受けていないのです。民を守れる王にはなれません」

 お祖父様はため息を吐く。

「そうであるな、あの愚息は妃の戯言に踊らされて、お主を見ようとしなかった。しかしな、アイツなりに大切にしようと思っておったのだ。ただな、頭が足りなかっただけで」


 その後、お祖父様から聞いた話は妃たちが私を王から遠ざけるための様々な工作。それを頭から信じた王。それはもしかしたら彼なりの気持ちだったのかもしれない。

 私が第一王女として次期国王であり続けたのは、法の変更を頑なに認めなかった王のせいらしい。確かに、それは私を生かすためだったのだろう。

 だとしても、色々と遅過ぎる。


 私は死にかけた。いや、死ぬ運命だった。それはたった1人のまだ少年によって大きく変わった。そして、結果的にこの国の運命さえも、彼は変えたのだ。


 その夜はお祖父様の屋敷に泊まった。

 たくさん話をした。私のことを気にしていたお祖父様とタウリンやカイゼルにナイゼルは、そうと分かってからお互いに連絡を取り合ったそうだ。

 私が王都を出奔出来たのも、お祖父様の裏工作があってそこだとか。

 知らなかった。私は知らない内に、沢山の人に助けられていたのだな。


 そして翌日、私は髪の色も元に戻り、お祖父様の家にいる侍従により髪の毛を整えられ、王族の正式な衣装を身に纏った。

 私の姿を見て

「凛々しいな、ミュゼ」

「ミュジーク様、素晴らしい」

「「ぐっ立派になって」」

 カイゼルとナイゼルは息ぴったりだ。

 お祖父様が私に一振りの剣を渡してくれる。

「これを…」

 それは見事な装飾の宝剣だった。

「しかし…」

「お前にこそ相応しい」


 私はお祖父様の紋章を掲げた馬車に乗り、お祖父様と共に王宮に向かった。

 タウリンとカイゼルにナイゼルは近衛の紋章を付けて馬で追随する。

 すんなりと王宮へ入ると、外からポポロンの声が聞こえた。

「そのままお進み下され。先導いたします」

 こうして私は王宮の本宮に、生まれて初めて入った。16年間、呼ばれることのなかった場所。

 裏口ではなく表に着いた。

 私はお祖父様に手を差し出され、馬車から降りる。そこには私の近衛騎士が控えていた。


「不当な謹慎は解かれておる、堂々と進め」

 お祖父様の声に顔を挙げた彼らは胸に手を当て

「我らが敬愛するミュジーク様に!」

「「「我らが敬愛するミュジーク様に!!」」」

 昌和した。その中にはポポロンを始めとする8名が加わっていた。いや、他にも近衛の紋章を付けていない者がそれなりの数いる。

「ミュジーク様に仕えたいと、王族から離れた者たちが、合流しました!」

 ポポロンが告げる。

「我が近衛とポポロンたち以外は待機だ。信用できぬ者を連れては行けぬ」


 それらの者たちは深く頭を下げた。

「カタが付いたら考える。身の振り方を考えておけ」

 タウリンがそう告げて、周りの近衛が本来の隊を離れた者たちを隔離した。

「行くぞ」

「はい!」

 我々は王族の居住区を目指した。


 着いた場所は華やかな調度品で埋め尽くされた場所。ソファがあるから居間だろうか。

 そこに縄を打たれた王子2人と王女、そして王と妃たちが連れてこられた。

 王は両脇を国の軍人に囲まれてはいるが、自由だ。

 妃たちは手を魔力縄で縛られて、首にも魔力を使えなくする道具が嵌められていた。


「ち、父上…これは一体、それにそこにいるのは…」

 口を閉ざした。王の目には青銀の髪を短くしたミュジークが立っていたのが見えたから。

「これから緊急会議をする。すでに大臣たちは集まっておる。行くぞ!」

 お祖父様は

「お、お祖父様、縄を、縄を解いて下さい!」

 という声にも

「こんなの横暴ですわ!だいだい、誰ですの?その子は。王族を騙るなど…」

 それらを声を完全に無視して議会の間へ向かう。そこには沢山の人がいた。

 お祖父様が入るとみんなが一斉に跪く。


「顔を上げよ!これより緊急の会議を始める」

 お祖父様の声を受け、白髪の男性が場を取り仕切る。

「進行を勤めよう。その度、ミュレイス前国王より弾劾の儀が申し立てられた。内容は次代の王であるミュジーク様への虐待及び暗殺未遂、必要な教育を放棄した保護観察者怠慢だ。長年に渡る毒と呪いも確認されている。さらには生きる為、毒と呪いを解くという北の霊峰を目指したミュジーク様を殺せと、近衛騎士の刺客を送り込んだ。首謀者は妃たち3名と第一王子、および第二王女だ。王子と王女は幽閉、妃は終身棟に幽閉。いかがか!」


 場は沈黙の後、荒れた。

「証拠はあるのか?」

「そこにいるものは王女を騙っているのだろう」

「王女を出せ!」

「幽閉ではなく死を」

 などだ。




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークが捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発


1月12日 ポポロンたちがミュジークに合流

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される

迷宮8日目 40階層到着 転移陣でナリスと狼は地上へ

アイルはサフィアが助けたロキを保護する


1月27日 アイルたち地上に帰還


1月28日 イーリスが目覚める


1月30日 イーリスがアイルと再会する


2月1日 イーリスがバナパルトに帰還


2月2日 迷宮調査員が到着

アイルたちはロイカナの町に向けて出発


2月3日 イーリスたちが王都を出発

アイルたちがロイカナの町を出発


2月12日 ミュジークたち王都へ帰還


2月14日 王宮にて弾劾が行われる


2月15日 帝国の話が世界を駆け巡り衝撃が走る

アイルたちが町に着く


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