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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第8章 帝国の王都へ

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407/420

401.王都から…再び

 それから僕たちはソファに隣り合って座る。

 僕はニミと転移をした後の話をする。ロルフはアイが名前しかわからない僕たちを探そうとしていたと聞いて、その目を潤ませた。

「会いたいと思ってくれてる?」

「間違いなく、ね。でもロルフのことはきれいな女の人って思ってるみたい」

 ロルフが変な顔をした。

「なんで?」

「顔は分からないけど、細い体とかきれいな肌とか長いまつ毛とか、そういうパーツは覚えてるみたい」

 それを聞いてロルフの頬が染まる。

「細い…きれい…もう、イルってば…」


 それからもアイの周りに聖獣と霊獣と精霊王と妖精たちがひしめき合ってると伝えたら

「僕のイルだから…」

 何故か満足気に笑った。

「でも…また増えたんだね」

 そう、また増えてる。


「人もいるんだよ、3人も。その内の2人はね、アイの騎士を名乗ってるって」

「騎士?それは…身も心も捧げるという意味。もうイルってば…。その彼らとは?」

「何も、今はね。でもね、彼らの方がアイにその…気持ちを」

「ダメだよ」

「アイにはその気がないし、若返ったから」


 ロルフは少し考えて

「何才?」

「13才」

 僕をじっと見ると

「イルと、した…?」

 正面から聞かれると恥ずかしい。

 頷く。

「まだ子どもだよ…?」

 分かってる。でも彼の存在が気になって。

「アイのそばにいる精霊王は消えかけていたらしいよ。だからアイを求めた」

 ロルフは僕の言う意味が分かったみたいだ。

「それは、仕方ない…」

 そう、仕方ない。聖なるものに求められたなら、ね。


 ロルフは僕の頬を撫でると

「イルの魔力を…感じさせて」

 色々な説明なんかでロルフは忙しかった。アイの魔力が満ちている僕なら、少しは癒せるかな。

 ロルフはいつになく情熱的で、その腕に抱かれて眠った。


 翌朝、僕は目を覚ます。頬を撫でる細い指、ロルフだ。目を開けて僕を見ている。

「お風呂…」

 やっぱりロルフはロルフだ。

 起きて2人でお風呂に入ると、ソファに並んで座る。

「ロルフ、これを…」

 僕はポーチからそれを取り出す。鮮やかな青色のトップが付いたネックレス。ロルフの目の色だ。アイは断片的な記憶でロルフの目の色を思い出していた。


「これは?」

「迷宮の空で、アイが放出した魔力がカケラとなったもの。後はコレ」

 もう一つ取り出したのは普通の雲のカケラ。色とりどりのだ。ロルフの目がキランとする。

「これは…こっちも見たことが無い。これはまったく新しい物質。凄い!」


 興奮している。こんなロルフは珍しい。

「イルの魔力のカケラはまだある?それも欲しい」

 もちろんそのつもりだ。色とりどりのアイの魔力のカケラ。それをドサッと渡す。ロルフは目はキラキラしていて、大切そうにそれに触れる。

「これがあれば、魔道具が作れそう…イルを探すための。だって、まさにこれがイルの魔力。イル…待ってて」


 ビクトルとニミの交信が出来るようになったからある程度はその動向が探れる。それでも魔力が届かないような場所では探せない。

 ロルフは万全のために、やはりアイの魔力をさがせる魔道具を開発するのだろう。

 というか、アイの魔力があれば探せるところまで研究が進んでいるの?


 ロルフは顔を上げる。

「ハウラがね、とても優秀で。水晶に魔力を込める秘密に肉薄してるんだ。僕はイルの了解が得られないと話せないし」

 僕は驚いた。魔石以外に魔力を込めるのはアイにしか出来ないと思っていたから。ロルフはアイから理屈を聞いてなんとなく分かったみたいだ。それでも出来たり出来なかったする。

 それをハウラは肉薄ってどれだけ優秀なんだろう。

 そんな人が同行してくれるのは有り難い。


 その日、全ての聴取が終わったと言うことで翌日に王都を出発することが決まった。さらにこの国を出るまでの間、魔術師団の第1と第2からそれぞれ10名と5名が加わる事になった。

 その報告も兼ねてロルフは晩餐に招待されている。フェリクス様とイザークもだ。

 エリアスは亡国の王族として、同席を願われ承諾した。

 イグニス様はエリアスに付いていくと言うので、僕はグライオール様と2人で夕食を食べた。


「アイルは若返っていたのかい?」

「はい、3つも。今は13ですね」

「そうか…魂が体に定着する前に中途半端に光に晒されたからな…。左小指の蔦は?」

 グライオール様は僕の指を見る。僕は隠蔽を解除して見せる。

「それはまた…」

 そう、金色の蔦模様は小指の先まで伸びていた。まるでアイを探すみたいに。

「消えていないなら婚姻は有効なんだな…子の実も健在なら、どう言うことだ?」

 僕にも分からないけどね。アイの小指にも蔦模様があった。僕に会って第2関節までだが伸びていたから。


「ま、何にせよ合流したいな」

 僕は頷いた。

 夕食後にはグライオール様にアイと行った迷宮の、雲のカケラの話をとかミスリルやオリハルコンの話をした。

「それは迷宮の意思か、周りの聖なるものの意思か分からんが、アイルへの贈り物だな」

 やっぱりそうなのか。だって深層ではシルクが大量にドロップしたって。

 僕ももちろん貰ったよ。ロルフやエリアスにもお裾分けしたし。ちなみにアイと再会出来たことはフェリクス様やマルクスには伝えていない。

 ロルフとエリアス、神様たちだけが知っている。


 今回の騒動で出張ってくれた魔術師団の人たちにはお礼として、ロルフから迷宮でアイルが拾った?ドロップ品で僕がたくさん貰ったシルクとうさぎの毛を一部進呈した。

 キツネのしっぽとか鹿の角はやり過ぎだとロルフに言われたから。もちろん、各種鉱物も封印。

 ただ、イグ・ブランカで採掘できるミスリルは少しだけ進呈した。もちろん、イグ・ブランカ産のをね。

 取引に応じますよ、と言って。大層喜ばれたみたい。


 そんな話をしていたら、扉が叩かれて

「ロルフ様が向かっています」

 外の人に言われた。グライオール様と待っていると扉が叩かれて、開けたらロルフとエリアス、イグニス様がいた。

「少しいい?」

 僕は部屋に入れる。

 みんなはまだ正装のまま。と言うことは部屋に寄らずにここに来たのか。

「面倒な事はないよ、伝言だけ。明日の出発は予定通り。ピュリッツァー帝国の手前まで、魔術師団が同行する。今日、進呈したシルクとうさぎの毛皮、ミスリルはとても喜ばれた。直接、王族には渡せないから…魔術師団経由で国にも進呈する、よ。それからエリアスたちの事。元イグニシアの文献を持ち出せたと伝えた。イグ・ブランカに独立した属国扱いの国と認めて貰えそうだ。税金を払う代わりに自由の確約と、取引税の免除まで勝ち取ったよ。エリアスが持ち出した物には、それほどの価値がある」

 そうか、エリアスたちイズワットの国が出来るんだね。


「全てアイルのお陰だ。今もイズワットの民がイグ・ブランカを目指している。誰もを受け入れはしないけどな…。元王妃とかに関わるものは排除するから。母上が残した結界が自動的に排除するらしい」

「当たり前じゃ。我が子を傷付けたものなど万死に値するわ!」

 エリアスの膝の上でふんぞりかえるイグニス様。威厳はイマイチだけど、その想いは確かだ。


「同行する魔術師団は、あのエンブレムを2つ持ってる。しかも、第2師団の副隊長はあのイリリウム閣下のお孫さん…」

 またアイは、権力を惹きつけるんだから。

「イーリス、ある程度は仕方ない。諦めて。イーリスの立場は伝えてないから。あくまでもイルの共同商売人という立場。忘れないで」

 僕は頷いた。アイの力はある程度、バレている。僕とアイの関係が分かると僕がアイの弱みであると分かってしまう。それは僕にとってもアイにとっても良くない。

「イーリスの美貌は危険…とても。だから、ね」

 アイとの特別な関係は知られないように、さらに僕はなるべく目立たないように。

 しっかりとを頷く。


「エリアスの素性ももちろん、隠しているから…」

 そちらはイグ・ブランカの代表として、その町に貢献したアイを探すという名目だ。おかしな事じゃない。あの町はアイが作ったのだから。

 こうして、事前の擦り合わせを終えた。

 ロルフは部屋で着替えたらまた来るという。

「お風呂…」

 また旅に出れば簡単にお風呂に入れない。だからだろう。


 着替えたロルフが部屋に来て一緒にお風呂に入った。その後は一緒のベットに入る。ロルフは今日のイリリウム閣下、魔術師団とトップも交えた晩餐に付いて話をしてくれた。

 あぁやっぱりアイは…また人を虜にしてしまった。

 だってイリリウム閣下の僕たちに同行する師団員への挨拶が

「我の孫を頼む!」

 だったから。アイには自称父親が何人もいる。

 ダナン様にシスティア様、僕のお父様は義理の父だし、そこに何故かバージニアとスーザンまで加わったらしい。

 豪華な人たちだ。そこにイリリウム閣下は自称祖父だ。全くね。ロルフは

「イルだから…」

 呆れながらも楽しそうだ。

 こうして王都での滞在は終わり、翌朝、当初の14名にさらに15名の魔術師団が加わって、キャラバンとなって出発した。


 僕たちは4台の馬車と馬2頭、魔術師団は馬車2台と馬10頭。もりもりに増えたアイル捜索隊だった。




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