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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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390.地上へ帰還

 良い夢を…そう呟いてそっとアイルにキスをした。それは、柔らかくて温かな唇だった。



 目が覚める。う、ん…あったかい。ハクとコムギのもふもふ、背中のナビィ、首元のブランはふかふか。幸せだなぁ。うとうと…ん?目線…あ、僕は目を開ける。

 目の前にロキの可愛いらしく整った顔があった。目をパチパチする。

 顔色が戻った?その頬に手を当てる。熱くない。


「おはようロキ、気分はどう?」

 ロキはごく自然に微笑むと

「もう大丈夫、ありがとう。とても暖かかった」

 ふふっそれはもうもふもふとふかふかがね?沢山だから。

「良かった。もう少し寝てたらいいよ?まだ早いし…」

 ロキは僕の頬を撫でるとおでこを合わせて目を瞑った。その仕草が子供みたいで、なんだか可愛い。

 僕は頬にキスをして目を瞑った。なんだか優しくキスされたような…。そのまま微睡んでいた。


 そろそろお腹が空いたかな?背中でナビィがもぞもぞしてる。目を開けるとロキは目を覚ましていた。

「目が覚めてた?」

「うん、アイルを見てた…きれいな色だね」

 僕の髪の毛を撫でながら言う。

「ありがとう、ロキの髪の毛は柔らかくて気持ちいいね」

 ふふっと笑う。そんな自然に笑えるんだ。


 そのまま僕の頬にキスをして

「アイルは不思議な子」

 と言った。良く分からないけど、元気になって良かった。

「起きようか?」

 声をかけて起き上がる。ふぁぁ、伸びをする。横ではハクとナビィが伸びをしてコムギは顔をふるふるしてる。可愛いな、撫で撫で。もふもふ良き。


 ナビィはロキに突進してたよ。ちゃんと受け止めてくれてて良かった。体幹がしっかりしてるからね。

 ナビィのしっぽが凄いことになってる。

「ご飯の用意してくるから、着替えて居間に来てね!」

 僕はサッと着替えると部屋を出た。


 さて、ロキはまだ病み上がりだしフレンチトーストにするかな。卵液にパンつけてしみしみーっと。

 ハムも乗せるかな。

 スープはトマティ味のベーコンと芋入り。トマティは体にいいからね。

 出来上がった頃にロキが居間に入って来た。

 探索者の服に着替えたロキは普通に凛々しい。顔立ちは可愛らしい感じだから、その落差がなかなかだ。


「これ、ありがとう。洗って返す」

 夜用の服だ。沢山あるし要らないかな。

「あげるよ!良かったら着て」

 ロキは驚いて

「いいのか?凄くいい生地だよな?」

「いいよ、沢山あるし。白蜘蛛の糸から織られた布なんだ。蜘蛛シルク?肌触りがいいから良く眠れるよ」

 あれ…なんかロキが固まった。どうしたのかな。


「いや、そんな高価なもの…」

「高価なのは知らないけど、とにかく沢山あるんだ。蜘蛛さんがね、くれるんだよ。使いきれない。だからね?」

 驚いて目がさらにまん丸で…やがてふはっと声を出して笑うと

「ありがとう…大切にする」

 うんうん、そうして。良かった。返されてもね?


 フレンチトーストとスープをお皿に盛る。もちろんハクたちの分もよそってね。

「座って、ご飯できたから。おかわりもあるよ」

 頷くと椅子に座る。

「これは…?」

「柔らかいパンを卵につけてさらにふわふわにしたパン。食べやすいよ」

 ロキはナイフとフォークで一口食べる。


 目を開くとぱくぱくと食べた。早いね?

「おかわりは?」

 無言でお皿を差し出す。

 結局、3枚とスープもおかわりしてた。元気になったみたいだね、良かった。

「たくさん食べたね、良かった」

 ロキは顔を赤くして

「美味しくてたくさんおかわりを…材料は大丈夫か?お金は払う」


 僕は首を振る。

「探しに来てくれた人からお金なんて取らないよ。食材なら大丈夫。沢山あるから気にしないで」

 ロキは

「そうか…」

 俯きながらも口元が綻んで…花が咲くような笑みを浮かべたことをアイルは知らなかった。


「仲間が転移陣で迎えに来てくれる筈なんだ。でもまだ少し早いかな。ロキは鉱物に興味ある?」

 首を傾げる。急に言われても、かな。

「この階層にはミスリルとかオリハルコンが取れる場所があってね…欲しいなら時間あるし少しくらいなら」

 目を開いてから考えて

「ぜひ!」

「なら行こう!」


(アイル、空気飛行機は封印だよ)

(どうしたら?)

(聖なるものに雲を運んでもらおう)

(分かった…そういえばシルフィは?)

(隠れてるけど、近くにいる)

(紹介する?)

(そうだね…)


 家を出てしまうと

「シルフィ…?」

 呼べばスッとやって来た。

「どこに?」

「近く…」

 まいっか。ロキを振り向くと

「ロキ、彼は水の精霊でシルフィーヌだよ、よろしくね」

「我が名はシルフィーヌ、よろしく…」

 ロキはこれでもかと目を開き、えっ、はっとか言ってたけど突然跪く。

「お初にお目にかかります。水の精霊王様…」

「良き、顔を上げよ」

 ロキは熱のこもった目でシルフィを見上げた。


 なんだろう?まいいかな。

「行こうか?シルフィもおいで」

 頬を染めて固まったロキを引っ張って雲に乗る。

「下に行きたいな…」


(はぁい)

(任せて)

(運ぶの)

(運ぶよ)


 雲はスーッと滑るように下降して鉱物のある場所に付いた。そこはナリスたちが足場にした場所。ここなら安全に採掘できる。

「ロキ、ここ。あまり時間ないからサッと取って。そしたら上がって戻るよ」

 ロキはコクコク頷く。でも何やら手をあわあわさせている。あ、ツルハシか。僕は手持ちのツルハシを渡す。

 ロキはありがとうと言うと掘り始めた。


 ミスリルとオリハルコンを適度に取るとツルハシを返して来た。

「アイル、上に」

 また雲に乗って上に向かう。

 雲のカケラが舞っていた。

「それは新しい物資で雲のカケラだって」

 ロキはまた驚いてせっせと集めている。


「シルフィ、色付きの…」

 シルフィは立ち上がると

「色付きの雲よ。沸き上がれ…」

 おぉ、いつ見てもきれいだ。


(アイル、魔力はダメだよ?)


 ビクトルに注意された。どうやら簡単に出来ることではないらしい。 


(分かった)


 ロキは色付きのカケラも集めてため息を吐いた。

「アイルは…凄いな」

 凄いのは僕じゃないけど。説明はなかなか難しいから。

「そろそろ迎えにくるから、降りようか」

 こうして簡単に40階層を案内して階段の踊り場に戻った。



 ふっと息をついたら、ちょうどナリスが迎えに来てくれた。

「おはようナリス」

「おう、おはよう…って、えっ?職員も無事だったか!」

「おはようアイルってロキ!良かった。心配したぞ?」

 あ、あの強面のお兄さんたちだ。


「お兄さんたち、もしかして探しに来てくれた?」

「あ、あぁ…」

 何やら見てると思ったらシルフィだ。きれいだからな。

「取り敢えず、地上に戻ろうか」

「そ、そうだな…」

 みんなで固まって転移陣に乗る。



 ヒュン



 地上だ!

 そうして迷宮探索は無事に?終わったのだった。めでたしめでたし。




 とはもちろんいかなかった。

 ロキさんからギルドに伝書鳥で連絡をすると、正式な調査員を派遣するので待機と言われたのだ。

 えぇ…町に帰りたいのに。

 テッドの屋台も気になるし、色々と換金したい。でも仕方ないか。

 ナリスたちもこれは仕方ないと諦めた。はぁ面倒だなぁ。


 その日はロキにそれぞれが自分からの視点で話をした。僕はビクトルに指示されるまま話したよ。

 空気車とか空気銃とか空気飛行機とか、魔力の放出やディシー、シルフィとの出会い、サフィアの呪い解呪は厳禁だって。だから必死で記憶が曖昧とか、トムとジェリーの頑張りとか、諸々ね?話を盛りつつ。

 ナビィが空を翔けるのも言っちゃダメって。

 聞き取りは人間だけだったから良かったよ。ナビィに聞いたら自慢気にナビィは空を翔けるって言いそうだからね。



 

ようやく迷宮探索が終わりました…


時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう 5階層で仮眠

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される

迷宮8日目 40階層到着 転移陣でナリスと狼は地上へ

アイルはサフィアが助けたロキを保護する


1月27日 迷宮9回目 全員が地上に帰還


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