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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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386.迷宮捜索開始

 こうして各自、用意を整えた。

 最後に御者に

「5日経ってもアイルたちか、われわれが戻らなければギルドに方向を」

「おう、気を付けてな!」

 こうして御者に2人と馬、狼たちに見送られて我々は迷宮に出発した。


 1階層は洞窟の仕様だ。暗いな、ロキは魔道具の灯りをつけた。ほんのりと明るい。明るすぎで敵に見つかるのは意味がない。足元を照らす。

 音を捉えて魔法を…発動しない。短剣で弾いた。矢だ。

「罠か…」


 簡易な罠なのだろうが分からなかった。ロキも迷宮の調査には同行している。罠を解除などは専門ではないが、耳はいいし、発動する時の僅かな振動を感じ取れる。

 罠を踏んだのは分からなかったが、矢の発射は感知した。

「気を付けろ…」


 後ろを振り返って声を掛ける。

 バグスたちもなんなく矢を防いでいる。しかし、嫌な予感がする。

 普通、1階層は迷宮の入り口。そこの難易度でほぼ、迷宮の難易度が分かるとも言われる。

 ほぼ、なのは幅があるからだ。


 これやはりB以上のようだ。低層階といえど、侮れない。

 気を引き締める。それでも、まだ1階層。そう思っていた。しかし、それからは歩けど歩けど階段が見つからない。おかしい、流石にそんなに広くはない筈。

 立ち止まって考えていると

「おい、この迷宮…動いてやがる」


 まさか、と思った。動く迷宮。それは調査で入れば多数の死者を出すとまで言われる。動く、それは地図が意味をなさないのだ。

 入ったら最後、進めない。もっとも何日か後には自動的に排出されることも多いが、必ず排出されると決まってもいない。

 排出されずに深層へ飛ばされれば、さらに危険だ。

 と言っても進まない訳には行かない。

 魔力の流れ、空気の流れ…もう少し慎重に見極めるか。


「なぁ、時々だが空間が捩れている場所があった。切ってもいいか?」

 ロキは少し考えてから頷く。

「あぁ、そうしよう。回っているだけでは進まない」

 この判断は間違ってなかった。早々に見つけた捩れを切れば、そこはボス部屋と思われる場所だった。


 敵は強くなかったのであっさりと剣で討伐。すると階段が現れた。

「バグス、お手柄だ」

 肩をすくめると

「迷宮にはままあるからな、この程度なら大丈夫だ」

 頼りになる。

 強面ながらもふもふが好きというバグス、ガリネイラとガリレオの3人。

 アイルがもふもふを連れてて良かった。彼らの参加はとても心強い。


 そしてソロのマッキンリーは黙々と矢を弾いたり足元への注意を促していた。

 ネロとニールは素早い動きで周りをフォロー。特にネロは魔法職。魔法が使えないこの迷宮では困るのでは、と思ったが。素早さと勘の良さを生かしていた。

 やはり上級は伊達じゃないな。


 階段を下ると同じような階層だ。

 そこにも空間の捩れがあるとバグスが切れば、罠付きの宝箱があった。時には普通に開け、時には宝箱ごと破壊しながら進む。

 そしてこの階層はあっさりと階段が見つかった。

 階段を降りると

「おっ、ラッキーだな。黄金樹がある。ここの付近は安全地帯だ。休もう」

 バグスの提案にみんな頷いて休んだ。


 そんな風に進んだこの洞窟は5階層まで続き、そこで初日は終わりにした。

 次の階層は砂漠だったから。階段をまた上がり、ボス部屋で仮眠をとる事にした。


 翌日、砂漠地帯に足を踏み入れる。予想通りサンドワームだった。これは全員で倒す。暑さ以外は相性のいい相手で、サクサクと進んだ。水をたくさん消費したのが予想外か。ボスは湖の中にいた。

 それならとバグスとガリネイラ、ガリレオが手を組んだ。助走を付けたニールをその力で湖の上に放り投げる。

 ニールは空中で体勢を整えると



 シュパン



 10階層の巨大なサンドワームを倒すと転移陣が現れた。

 ホッとした。その日はそこまでにして一旦、地上に戻る。この7人は心強い。その日は馬車で眠った。

 さらに翌日、10階層まで転移陣で飛び11階層へ。


 そこはただ広い草原だった。広い、とても広い。何が出るのか分からないが慎重に進む。

 結局、そこから15階層までは普通よ小型魔獣が出ただけだった。

 昼食を挟んで次だ。今の所、アイルたちに関することは何も分からない。


 進むしかないだろうな。20階層目指して進む。

 20階層からはまた洞窟だ。群れの魔獣が複数出たり、挟まれたり。しかし、強くないから楽勝だ。罠も無いし。そう思っていた。

 迷宮には気を抜いていい場所などないと、分かっていた筈なのに。


 向かって来たゴブリンの上位種。途中で止まってこちらを見ている。後ろを振り返っているから仲間を待っているのか?ならば先手で攻撃だ。そう思って足を踏み出した途端に…ヤバい。

 咄嗟に下がろうとしたが遅かった。俺は罠を踏んで飛ばされた。ゴブリンがニタリと笑ったのを最後に落ちていく感覚。これは…マズい。

 記憶はそこで途絶えた。



 俺たちは目の前で罠を踏んで消えたロキがいた場所を見る。なんと狡猾なゴブリンだ。罠の位置に誘導したのだろう。この階層は罠らしい罠が無かった。油断していた。

「気を引き締めろ!」


 慎重にゴブリンを討伐して進む。6人で20階層になんとか到達した。転移陣に乗って地上に戻る。

 誰もが口を聞かない。

 進むべきか否か。悩ましい。


「なぁ、明日。21階層を見て、進むか戻るか待つか決めよう」

「そう、だな…。まさかゴブリンが罠を活用するとは」

 マッキンリーもため息を吐く。

「悪意を感じるな…」

「あぁ」

 各自、水の補充をして早々に寝た。




 僕は目を覚ます。ハクとコムギが仲良く僕の腕の中にいる。ナビィは背中にぴとりと張り付き、ブランは首元だ。みんな揃ったね。良かった。ハクのもふもふな毛を撫でる。さわさわ撫で撫で。首に顔を埋める。草原の匂い。良かった、本当に。その頭にキスをする。


 ふふっしっぽが毛布の下で動いてるね。可愛い。

『アルおはよー!』

「おはよう、ハク。で、何で僕は裸なの?」

『魔力循環したからね!』

 そういえばベットに入る前にハクが人型になった。びっくりだよ。だって凄くかっこ良かったから。全裸なのはどうかと思ったけど。


 そのままベットに押し倒されたんだっけ。確かブランも人型になってて、可愛い男の子だったな。服を脱がされた記憶は無いけど、そういう事だろう。

 人肌の温もりと魔力の流れに気持ち良くなって、そこから記憶がない。


「そうか、楽になった?」

『とても、アルもじゃない?』

 ん、そう言われたら確かに。身体が軽いような。

『頑張ったからね!』

『僕もー!』


 何をどう頑張ったのかは分からないけど良かったよ。

「なら良かった。ありがとう、ハク、ブラン」

 さてと、起きて朝食かな。

 服を着て厨房へ。作る量も多いし、パンとスープ、ベーコンにウインナーかな。

 あ、魔鳥の卵があった。いつ使うの?今でしょ!って事で卵焼きも追加。


 強力粉からパンを作る。たくさん作ろう。それからスープはトマティ味。後は焼くだけだからドンドンね?

 匂いに誘われてみんなが起きてくる。

 ラルクはいつも通りに整えて、ナリスとテオは眠そうだ。ディーネは相変わらず儚げできれい。


 狼たちも集まって来て居座りしてる。ふふっ可愛いな。

 僕はリーダーの首元を撫でると

「ご飯できたよー」

 声をかける。

 みんなそれぞれに食べ始めた。僕もね、魔鳥の卵の卵焼きはとても濃厚で美味しかった。

 みんなバクバク食べてたよ。


「なぁ、アイル。その…明日までこの階層で採掘をしたいんだが」

 僕は構わないけど。

「ギルドから人が探しに来たりしない?」

 ナリスは少し考えてから

「気にはしてるだろうが、捜索に来るのはまだ先だろう」


 実際にはアイルの報告がバナパルトにいってないことを重く見たアスクルが早めに捜索隊を出していたのだが、例外ではあったので、ナリスの判断は間違ってなかった。


「なら構わないよ。みんなとも合流出来たしね。家もあるし食べ物もあるし。好きにして?」

「あ、あぁ…」

 ナリスたちは複雑な顔をした。

 安全に寝床、暖かくて美味しい食事、貴重な鉱物…ここが迷宮だと忘れるくらい快適だ。


 しかもシルフィーヌはとんでもなくきれいで。ナリスは昨日の夜を思い出して顔を赤くした。細くて儚いその体と…激しく優しい時間は夢のようだった。

 あれほどの美しい精霊に求められて拒否できるアイルとは凄いな、と思ったのだ。


 13才とはいえ男だ。欲求もあるだろうに。さらに驚いたのは、消えそうな時にアイルに魔力を貰ったと。そこでは肌を密着させ、キスをしたという。

 それで身体が反応しないならそれはもう聖人だ。いや、アイルなら有り得るのか。


 実際には思い出せないイリィを想っていただけだが、もちろんナリスは知らない。だからアイルを聖人だと思っても仕方ないのだった。




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発 森人の隠れ里にに着く

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう 5階層で仮眠

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう

39階層に戻り休む


1月24日

ロキたちは迷宮10階層に到達、転移陣で地上へ

迷宮6回目 40階層でひたすら採取


1月25日

ロキは19階層で罠に飛ばされる

バグスたちは迷宮20階層に到達、転移陣で地上へ 

迷宮7日目 またしても採取


1月26日 イーリスたちが王都付近で襲撃される


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