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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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382.捜索隊2

誤字報告ありがとうございます!

かなり初期の頃から出るわ出るわ…


皆様が頼りです(丸投げとも言う)


これからもよろしくお願いします…



「少し休憩したら40階層に行くよ!」


 そのまま家でまったりと30分ほど休憩。その間にハクからなにが起きたのかを聞いた。

「それはなかなか大変だったな…」

『アルがいたら楽だったのにね』

 そうでも無いと思うけど。

「でも合流出来て良かったよ。探しに来てくれてありがとうな」


 なんとなく、ハクもブランも苦労話をしていない気がする。ケガもしてそうだ。後でじっくりバクセルとナリスたちから聞かなきゃ。

 さて、そろそろかな。

「じゃあ階段を降りて40階層だよ!」




 その頃…町を出発した捜索隊は


 順調に進む。街道には弱い魔物しか出てこない。馬車はなかなかの速度で目的地を目指す。

 普通の馬車で5時間。出発が7時だから12時前には着けるか。と思ったら…11時少し前には目的地と思われる山の麓を視界に捉えた。


 何やら変な感じだ。魔力か、これは…とても濃くて嫌な感じがする。

 これは間違い無さそうだ。

 隣のガネラルクと向かいのガリレオも厳しい表情だ。

「迷宮だな」

「あぁこの濃厚な魔力の気配…薄まったようだがまだかなり濃いな」

 これは迷宮が出来る時に起こる現象だ。


 上級の探索者とはいえ、誰でも簡単に迷宮に入れるわけでは無い。講習を受けてギルド申請をし、認められてようやく潜れるのだ。

 その講習で必ず聞かさせる。迷宮の発露前後の現象を。今はまさにそれだ。


 地中で爆発的な魔力が放出され、地上に溢れる。それは時間と共にやがて落ち着いて来る。

 まだこれだけの濃さ、ならば…やはり新しい迷宮だろう。任務は人命救助だが、俺は高揚する気持ちを抑えられなかった。

 新しい迷宮、それは探索者の夢であり希望。

 不謹慎だがわくわくしてしまった。




 そのわくわくが早々に打ち砕かれるとは知らずに。



 ロキの顔が険しくなる。

「濃厚な気配…迷宮なのは間違いないとして。級は…」

 何やら考え込んでいる。

 薄い茶色こ髪の毛をきっちりと整えたロキ。その目も明るい茶色で、色白な頬を僅かに染めている。緊張しているみたいだ。

 実力者とはいえ若干17才。20代後半の俺たちから見たらかなり年下だ。


 表情筋が仕事をサボっているとはいえ、小さな顔に細身の鍛え抜かれた体は良く引き締まり、登録したての女性探索者や年上の男性探索者からも人気がある。

 冷たい対応も萌えるとか、俺たちには良く分からないが。

 そのロキが普段見せない顔をする。こりゃロキ好きには堪らんかもな。そんなことを考えていると馬車が止まった。


 窓から身を取り出すと狼だ。警戒しながらこちらを見ている。魔獣では無いな。ならばあの白い体躯はシンリン狼か。

 貴重な種だ。まさか縄張りに迷宮が?


 目を凝らしてみるとあれは、馬だ。アイルたちの馬か?まるで守るように展開する狼たち。馬は足元の草を悠々と食む。

 ロキもそのことに気が付いたのか

「狼は馬を…」

「そのようだな。ゆっくり近付けば大丈夫だろう」

 ロキは頷くと御者に伝える。


 馬車がゆっくりと走り出す。馬車を引く馬も怖がっていない。狼たちの5メルほど手前で止まる。


 俺は仲間たちと馬車を降りた。

「仲間を探しに来た。害意はないぞ。そこの馬たちに乗ってきた人を探している」

 声をかければその中の一頭が

「ワォーン」

 と鳴く。そして背中を向けた。少し歩くと振り向く。

 付いてこいかな。


 俺はロキに

「案内してくれるようだ!」

 ロキは馬車から身を乗り出して頷く。またゆっくりと馬車は進む。

 草を食んでいた馬の元に着くと、馬は顔を上げる。まん丸な目で俺たちを見ると、ブルルとないた。


 その鬣と首元を撫でる。頭を擦り付けてきた。

「よしよし、いい子だ。お前のご主人を助けにきたぞ!ここで待ってたんだな、偉いぞ」

 頭を上下に張って足踏みする。

 いい子だ。本来なら捕食される側の狼と待っている時間はなかなか辛いだろうな。

 助けに行くからな。そう声をかける。


 ロキが馬車から降りて来て

「不思議だな…」

 そう、本来ならあり得ない。しかし、まるで守るように馬の近くにいる狼たち。大人しく待っている馬。

 絶対的な信頼をおかなければ、そもそも狼に馬を託して迷宮には行けない。ならば、そういうことだ。


 何があったか、あくまでも想像でしか無いが、狼たちの縄張りがここならば。ゴブリンの巣が大規模で苦戦していた。そこにアイルたちが巣の討伐に赴き、共闘した。

 考えられるのはそれくらいだろう。


 群れで行動する狼はリーダーの決定に従う。ならばリーダーが馬を守ると決めたのだろう。

 シンリン狼は固有種で、人の前には殆ど出て来ない。あくまでも一般的な話としてだが、普通の狼より大型でかつ知能が高いと言われている。

 ならば、あり得るか。


 狼もロキも互いに味方と判断したのか、そこには険悪な雰囲気は無かった。

 ロキは他の探索者たちも馬車から降りるよう指示して、馬が繋がれていた場所に馬車を引いて来た4頭を繋ぐ。

 馬車は近くに置いた。

「進む」

 方向は山の方だ。明らかに魔力が濃くなっている方向がある。


 みんなは頷くと進み始める。先頭にロキが立ったのですかさずガリレオが隣に行く。彼は盾持ちで、攻撃力もそこそこある。音や気配にも敏感だからロキの補佐にいいだろう。

 その後ろに俺とガネラルク。その後ろにソロ探索者のマッケンリー、その後ろに2人の探索者ネロとニールだ。


 そもそもソロとは何か、明確な定義はないが概ね仲間を作らない探索者と解される。クランにも属さず、俺たちのように迷宮に仲間と潜ることもしない。

 そもそも依頼は個人でしか受けられない。と言いつつも巣の討伐や迷宮探索などは仲間と行くことも多い。


 級が上がればなおさら仲間と行動する必要が出て来るのだ。それをしない探索者、故にソロと呼ばれる。


 俺たちも依頼は個別に受けているが、今回のような緊急依頼や迷宮はこの3人と、時によって荷物持ちなどを雇う。級を上げるためには個人の実力が必要で、それは仲間がいても同じ。だからソロだから特別強いという訳でも無いのだが、やはり珍しい。


 マッケンリーはまだ23才ながら、魔法剣士として活躍している。細身ではあるがスキルによるらしく、身体が強い。魔法も物理も相当鍛え、両方を融和させた独自の戦いをするという噂だ。


 見た目はヒョロリと細い。濃い金髪に青い目、可愛らしい見た目の男性だ。その見た目から、よろしくしようと近づいて来る輩をどれほどか打ち負かしたとか。

 俺たちはもふもふと女にしか興味が無い。だから、わざわざ上級に挑む奴らの理由が分からない。


 2人組は兄妹だそうで、兄が26才、妹は23才。2人ともに小柄だ。170セルくらいか。

 明るい茶色の髪に薄い青目だ。兄が魔法職で妹が剣士。一見するとアンバランスだが、兄の魔法は全属性(全ての魔法が上級以上)の上、火魔法は特級だとか。さらに回復魔法(ケガなどの治癒と体力、魔力の回復)も上級で、魔力回復スキル持ち。


 あの見た目で上級だから、と本来はあまり他言しないスキルを公開している。

 妹は剣士系のジョブ持ちで、とにかく早いのだとか。重さを兄が魔法で補助。なのでネロの魔法ありきではあるが、強い。


 ただ、迷宮とはあまり相性が良く無いかもしれない。なんせ、魔法が使えない迷宮があるのだから。

 マッケンリーは魔法剣士だが、魔力を剣に纏わせる。だから魔法を使っている訳ではない。

 ならばそういう迷宮でも大丈夫だろう。


 ロキは魔法職だが、物理も相当に強いと聞く。ならば大丈夫か。

 因みに俺たちは基本、戦闘に魔法を使わない。探索とか周囲の感知には魔力を使うが魔法では無い。唯一使うとすれば、治癒と生活魔法としてだ。


 だから迷宮には相性がいい。先頭で攻撃を食い止めたり罠を見破るガリレオ、中盤で大剣を振るうガネラルク、そして後方の見張りと全体の指揮をする俺。もちろん俺も剣士だ。

 だがジョブは防御系だったりする。体格に恵まれたから普通の剣士としてもそれなりに戦えるが。


 これか!

 迷宮の入り口と思われる場所に着いた。

 ロキが立ち止まる。

「間違いないな…」

 そこで言葉を切った。進むべきか否か。迷宮なら救助をと考えて上級を集めたものの、予想外に規模が大きそうだ。しかも、これは級も高そうだ。B級ならまだマシで、最悪はA級。


 バグスたちは普段から迷宮に潜っている。マッケンリーも荷物持ちを同行させながら迷宮に潜っている。しかしネロとニールは迷宮探索の記録はない。

 危険か…?


「ネロ、ニール。予想外に迷宮の級が高そうだ。強制なしない。ここで待ってもいいがどうする?」

 2人は

「「行く!」」

 即答した。


「末の弟と同じ年なんだ。少し前に探索者に登録した。13才でゴブリンの巣の討伐に行くのも凄いが。もし迷宮に取り込まれたのなら、助けてやりたい。無理はしないから」

 ロキは頷いた。

「分かった、各自馬車に戻って装備と食料、水の確認を。級が高い迷宮は魔法が使えない場合が多い。水は特に気を付けて」

「おう」

「分かったぞ」

「あぁ」


 それぞれに返事をして馬車に戻る。俺たちは空間拡張の水筒にたくさん水を入れて来た。食料もそれなりにあるし、替えの剣や装備も怠りない。さらにマッピングの為の紙とペンも持参した。

 それを見てロキが

「流石だな」

 と呟いた。そりゃ迷宮探索はもうかれこれ10年やってるからな。

「経験はあるからな!」


 こうして確実、用意を整えた。

 最後に御者に

「5日経ってもアイルたちか、われわれが戻らなければギルドに方向を」

「おう、気を付けてな!」

 こうして御者2人と馬、狼たちに見送られて我々は迷宮に出発した。




時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発し、迷宮に向かう

アイルたち39階層でハクたちと合流し40階層に向かう


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