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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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378.捜索隊

 俺はバグス。ピュリッツァー帝国の北部にある町、ロイカナで探索者として活動している。普段はオソレシア近くの迷宮探索を仲間としているが、冬の間は北部でのんびりと過ごすのが習慣だ。


 仲間の同じく上級のガネラルクとガリレイと行動する事が多い。単発の依頼は別々にこなすが、巣の討伐などは連名で受注出来るからだ。


 少し前、ギルドにもふもふな可愛い犬2匹を連れ込んだ輩がいたから、注意をした。すると

「離れたら泣いちゃうかも。危険なことはしない、絶対守る!」

 そう言い切ったから、仲間だ…もふもふを愛でる俺らの仲間だと思ったものだ。

 あれから見かけないが、時間があるときにもふらせて貰おうと考えていた。


 その日もいつも通り、ガネラルクたちとギルドに依頼を受けるため向かった。

 そこであのいつも冷静なロキが声を張り上げ

「緊急依頼だ!上級以上でいける奴は集まれ!!」

 口にした内容もだが、何よりロキが頬を高揚させ大声を上げたことに驚いた。


 よし、上級なら俺たちの出番だ。



 そもそも緊急とは救助か大規模討伐のいずれかだ。ただ、大規模討伐なら依頼制限がかかる。上級は近場の依頼しか受けられなくなるのだ。緊急事にすぐ動けるために。それが無かった、ならば救助だな。

 仲間たちと顔を見合わせて頷く。

「俺らが行こう!」

「バグス、助かる。仲間もか?」

 そう、俺たち3人はもふもふを愛でる仲間としてギルドに認識されている。


「もちろんだ」

「救助だな、誰だ?」

「少年ほか3人だ」

 ん?少年…まさか。

「おい、もふもふを連れたあの子か!」

 ロキは窓口の近くで繰り広げられたアイルたちとのやりとりを覚えていた。だからしっかりと頷く。


「こうしてはいられない、場所はどこだ!すぐにでも」

「ここから馬車で5時間…」

 なん、だと?遠い。ロキが

「参加出来る者は会議室に…」

 俺たちの他に2人組とソロの合わせて6人が集まった。俺たちとソロの1人以外の2人組は、たまたま依頼でここにいた上級者だそうだ。


 集まったものを見渡しロキが話をする。

「緊急依頼の内容は、まだ不確かだが…ゴブリンの巣の討伐に行った依頼者、中級4人が依頼を受けて4日経っても戻らない…」

 ざわざわと声がする。

「まさか…」

「迷宮…」

 ポツリと誰かの声が大きく会議室に響いた。


 ロキは口元を引き締め

「あくまで、可能性だ。しかも…重要人物ばかり、だ」

 さらに騒めく。

 重要人物とはギルドにとって大切な場合と、要注意の場合がある。4人全員とは珍しい。いや、むしろ異常だ。


「重要の内容は…今は極秘だが、急を要する。まず、彼らの生存確認を最優先に、もし迷宮に取り込まれていたならば…救出を頼みたい。もちろん、無理のない範囲で」

 ロキは言葉を切って俺たちを見回す。

「俺も参加する」

 さらにどよめいた。


 ロキはまだ若干17歳ながらもその実力は折り紙付きだ。

 魔獣が蔓延る山の中で一人暮らしをしていたのだから。それが7歳の頃だというから驚きだ。

 どうやらおじいさんと暮らしていて、5歳で1人になり…そのまま魔獣を狩って暮らしていたのだとか。


 たまたま依頼で近くに行った探索者が彼を見つけ、危うく殺され掛けた。それがキッカケで保護して連れ帰り、その実力を認めたギルマスがギルドで引き取って育て、今に至る。


 ギルマスは特級だがロキはそのギルマスのアスクルが認めた逸材だ。一緒に行けるなどまたとない機会だ。

 たいていはロキが1人で行って片付けてしまうから。

 否応なく士気が上がる。


 こうして俺たちはギルドから物資の補給を受け、馬車2台で出発した。

 彼らがケガしている可能性も視野に入れて。

 上級の2人組の内、1人は治癒魔法が得意だそうだ。俺もその顔でと良く言われるが、治癒魔法が得意だ。骨折くらいなら治せる。


 ロキは俺たちと同じ馬車に乗っている。

 珍しく緊張しているようだ。

「大丈夫か?」

「誰に言ってる…当たり前だ」

 つれなく返された。しかし、少しだけ肩の力が抜けたようだ。


「なぁ、彼は重要人物なんだな?」

 それ以上の情報は期待せずに聞く。

「まだ少年の彼が中級。疑問に思わないか?」

 そう言われれば、中級にはとても見えない小柄で細い体だった。魔力が溢れ出している風でもなく。


「中級とは、確かにな」

「隣国の貴族絡み…」

 ポツリと独り言のように呟いたロキ。なるほど、重要なのは外交面でか。それほどなのか?まるで普通の礼儀正しい少年だった。


 フードの奥から臆さずに俺を見た。あまりにも自然なその姿は小さく頼りないのに、不思議な安心感を与えてくれる。澄んだ声、落ち着いた話し方。

 いい印象しかない。

 もし彼が困っているのなら…もふもふの次に助けてやらなくもない。そう考えていた。





 アイル捜索隊がロイカナの町を出る少し前…迷宮にて



 ハク様はしっぽを振りながら

『進むよ!僕はブランに乗って雲の横から下に攻撃する。ナリスたちは上をお願い。狼たちは迎撃に備えて!雲の上にアルのテントを出すから、半分はテントの中に待機で』


 なるほど、魔力圧の強くない雲の隣か。

『ブランが疲れたらドーナに乗ってナリスたちが下をお願い』



 これならなんとかいける、誰もがそう思っていた。この時は。




「ハク様、アイルの結界は一度壊れましたが…」

『大丈夫、アルならきっと』

 ハク様が言うなら大丈夫なのだろう。

 我々は全員で階段を降りて雲に乗った。

 ハク様はテントを出す。半分以上の狼はテントの中に退避。我々は外で上へと攻撃をする。昨日の教訓があるから、乱発はしない。こうして雲はゆっくりと進み始めた。


 順調に進む。結界はハク様の言う通り、復活していた。しかも、さらに強固になって。

 鳥からの攻撃は激しくなったが、それらを防ぐのではなく、弾き返していた。そう、返っていくのだ。まるで追尾するかのように。


 唖然としたのは当たり前だろう。

『アルらしい…』

『ご主人さすが!』

 ハク様もブラン様もまるで驚かない。さも当たり前と言う顔だ。

 そうしてかなり進めた。これならば、誰もがそう思った。



「来るぞ!」

「掴まれ!」

「備えろ!」

 声を上げる。我々は必死に防ぐことしかできない。


 なぜこんなことになっているか、それは…結界が機能しなくなったから。魔力で構成されるものが分解される仕様なのか、真ん中を過ぎたと思ったら辺りで結界が霧散したように見えた。

 なくなったと言うよりは効きにくくなった、が正しいか。


 弱い鳥の攻撃はまだ防いでいる。石は相変わらず通過せずに弾いている。

 しかし、衝撃が増えた。いわゆる物理的な衝撃だ。結界に複数当たれば雲は揺れる。

 それが途切れず続くのだ。敵は全方位からやって来る。

 もう囲まれている。

 流石にこのままではマズイ。


『ブラン、行くよ!』

『分かった』

「ハク様、ブラン様、危険です!」

 声を掛けたがすでに飛び立ってしまった。衝撃に耐えることしか出来ない。

 こんな事になるなんて…

 この迷宮は突破されないように作ってるとしか思えない。誰がこの階層を攻略出来るというのだ。


 そして、一際大きな衝撃が下方斜めから来て、ついに我々は雲から投げ出された。私は咄嗟に腕に狼を2頭抱える。いつも寄り添ってくれた子たちだ。1人ではいかせない。




 目を瞑る。私は何かを成し得ただろうか…アイル。どうか無事で。

 私の意識はそこで途絶えた。





 ふぁぁ良く寝た。昨日はほとんど探索してないのにね。ほぼ採取と駆逐で終わった40階層。

 その空の階層はボーナスステージだよね。金銀財宝が取り放題。鳥だけに…ふふっ。

 1人ほくそ笑む。さて、朝食を作ろう!


『なぁ、やっぱり主はかなりズレてないか?きっとこの階層はご褒美とか思ってるぞ?』

『あー確かに?』

『思ってそうだなー』

『死の階層だろ?全方位からの攻撃だぞ?我ならば飛べるし瞬殺だが、普通なら全く歯がたたん』

『ねーアイリだしぃ?』

『だしぃ?』

『ねー』

『ねー』

「アイルは凄い子…」


 なんだかんだでアイルだしねっとみんな納得した。呆れつつも心強く、頼もしく。そばにいれば刺激的で、楽しい。

 なのに本人は至って真面目だ。それがまた面白くて、みんなアイルのそばにいることを心から楽しんでいたのだった。本人だけは無自覚だったが。



 さてと、今日の朝食は何にしようかなぁ。んーパンも少し飽きた。あ、アレにしよう!

 お米を取り出して洗ってから水につけて野菜とワイバーンのお肉も入れる。出汁を少々…これでコトコトせずに時短でね。


 鍋の蓋を開ける。もわぁ…うわ、いい匂い。

『ゴクリ…』

 振り返ると全員集合していた。

「いい匂い…」

『ぐぅ…』

 サファイアのお腹は盛大に鳴ったね?

「もう出来たから、座って待っててな!」


 各自のお皿に盛って、残りは鍋ごと机に置く。もっともシルフィ以外は僕がおかわりをよそうんだけどね。

 さて、頂きます。

 ふうふう、いい匂いだ。ぱくっ…はふっひ。はふっ…ごくん。あー美味しい。朝のお粥は味も優しい。

 ふうふうぱくっ、あふいけどおいひい…ごくん。

 ふぁ、なんか生き返る。

『バクバク』

『ガツガツ』

『パクパク』

「もぐもぐ…」

 みんな無言で食べてる。


「味、大丈夫?薄めにしてるけど」

『美味しい!』

『パパ、すごく美味しい』

『美味いぞ』

『うんおいしー』

『おいしー』

「もぐもぐ…」

 シルフィは一心不乱に食べてるな。良かった。

 みんなに言われるままおかわりをついで、大鍋にたっぷりあったお粥は完売したよ。


 すぐ満腹になるのにね?ま、お腹もすぐ空くけど。この温かさと柔らかさがね。沁みるんだ。

 海苔が欲しい。この国を南まで進んだら海かな?行きたいな…海。海鮮丼食べたい。

 いつか、そうイリィと再会出来たら…一緒に海を見たいな。


 考え込んでいたら

『アイリー!どうしたの?』

 ナビィ…その垂れ耳を撫でる。

「うん、海が見たいなって思って。美味しい魚も食べたいなってさ」

『一緒に行こう!』

 ナビィは何も考えてなさそうで、色々と考えてて…でもやっぱり深くは考えてない。なのに、僕の気持ちに的確に寄り添って、欲しい言葉をくれる。

「そうだね、ナビィ…一緒に行こう!」

 ささっと片付けをして出発だ。


 みんなで家を出るとポーチにしまった。

「ねぇ、今日は雲に乗ろうよ!」

『いいね!』

『そうじゃな…我は適当に鳥を攻撃するぞ!』

『うん、お願いだよディシー』

 その小さな頭を指で撫でる。チャロは頑張らなくていいぞ?

「僕も…雲のカケラを」

「うん、シルフィもよろしく!」

 そっと頭を僕の方に向ける。あぁはいはい、そのサラサラな髪の毛を撫でる。

 毛先にキスすると真っ赤になる。昨日はお風呂であんなに開放的だったのに、恥じらいのツボが分からない。

 僕の頭にキスを落とすと雲に乗る。


 

時系列整理

1月1日 アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前

ハクたち 37階層終わり


1月22日 イーリスがゼクスに到着

迷宮4日目 アイルたち39階層に到着

ハクたち38階層で休む


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発

迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始

アイル捜索隊がロイカナの町を出発


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