377.新しい迷宮18
次はサフィアだ。ナビィと同じくらい大きいから洗い甲斐がある。
わっしゃわっしゃと洗う。
思いの外、密度が濃くてふっかふかだ。これは乾かしたらその胸に飛び込もう。
そしてナビィ、ふふふっお尻もお股もしっかりと洗うよ。ちゃんと脚を上げて、偉いね。よしよし…きれいきれいしような。
さ、泡泡長そう。ふふふっ元々柔らかなナビィの毛は洗うとさらにふわっとする。後でぐりぐりの刑だ。
さて、コムギ…おいで。ふふっ可愛い。寝転がってお股も全開。ふふっコムギもまだ子供だからかふっかふか。胸やお腹の毛は特に柔らかいから念入りに。
乾かしたらもう抱きぐるみだな、これは。
さて、最後はシルフィかな。
そわそわと待ってたからね。
「シルフィ、お待たせ」
もじもじと僕のそばによる。まず髪の毛から。腰まであるからね…丁寧に毛先まで泡泡にする。
流して今度は体。そのまま背後から背中を洗って
「体の前側は自分で洗って」
シルフィは手を上げて下ろして
「…」
ダメか、これはロリィみたいだな。ん?ロリィみたいってなんだろ…また思い出せない思い出か。
色々諦めて仕方なく
「シルフィ立って。次からは自分で洗ってな」
コクンと頷く。元々、服を着てなかったから精霊にとっては不要なのかな?
背中からお尻、太ももからふくらはぎまで洗って前に回る。首から胸に、お腹下腹部から脚先までを丁寧に、なるべく見ないで洗った。するとシルフィが
「見える?」
足を開いた。屈んだ状態から思わず顔を上げて…目の前に。間近で見ちゃった…なかなか立派なって何言ってんだ。
「見えなくても洗える」
「見ないなら触らないと…」
既視感が…なんだろ?凄く疲れたような思い出。仕方なくしっかり手で持って撫でるように洗った。
「ん…あっ…」
艶かしい声出さないで!
はぁはぁ疲れた。
自分の髪と体を洗おうとしたら
「手伝う…」
大丈夫、間に合ってる。
「今後の為に…」
うっ、それを言われると…。
「分かったよ…」
僕はさっき何で分かったって言っちゃんたんだろう。大変だった。洗うっていうより撫でる?しかも優しくさわさわと。変な気分になるから…ね。
はぁぁ、終わった。凄く観察されながら…胸を見て
「きれいな色…」
とか
「お尻が柔らかい…」
とか。
「小さくて可愛い…」
とか(どことは言わないけど)ね。しかも背中を洗うのに前から抱き付くから。その方が洗いやすいって言いながら。
お風呂ってこんなに疲れたっけ?
やっと湯船につかる。あー沁みるぅ。ふう、最高。
「どわぁっ」
目を瞑って堪能して、目を開けたら目の前にシルフィのドアップがあった。
「な、な、な、何?」
「アイルの顔を見てた。可愛い…髪の毛が後ろで、おでこが見えて。ちょっと大人びて見える」
そういうシルフィは長い髪を片方に寄せて肩に流している。それがやけに色っぽい。頬も上気してるし。
「シルフィはとてもきれいだよ…」
「アイル、天然…?」
えっと何が?首を傾げると
「無自覚…。そんなこと言われたら、抱きしめたくなる」
それはマズイかな。
『それはダメー、アイリは私のもの!』
ナビィ、いつから僕はナビィの所有になったの?
シルフィは寂しそうに、でも僕にそっと寄り添った。精霊って不思議だ。人みたいに触れるし、そこにいる。
ビクトルが言うには、人と精霊や妖精は交わって子供を作れるそうだ。
ほんと不思議だ。そういう欲とは対極にいそうなのに。精霊にも感情があるから、というか…人よりも好意がハッキリしてるらしい。好き、はとにかく大好き。それ以外はそもそもどうでもいいらしい。
僕はその頭を軽くポンポンして
「そろそろ上がろうか」
みんなに声を掛ける。上がって魔法で水を飛ばして服を着る。居間に移動したらみんなでフルーツ牛乳。
牛乳といえば、なぜかポーチに増えてる。買ってないのにね?謎だ。後でビクトルに聞こう。
サフィア家族とシルフィにおやすみを言って寝室へ。コムギとナビィに挟まれて…おやすみなさい。
*******
我々は結局、進むことを断念した。まずは体を休めようと決めたのだ。
アイルの結界も一度壊れてしまった。復活しなかったら斬滅するかもしれない。だからその結界の確認をする為に、私が志願して明日の朝、ドーナに乗って鳥の攻撃を受ける。結界が復活していれば進む。もしダメなままなら…また考えなくては。何か作戦を。
お昼ご飯を食べて、体を休める。魔力を戻さないと。使わないで溜めるためには休むのが1番だ。そうして、早めにテントに入りそれぞれの時間を過ごした。
ブラン様はハク様とドーナに寄り添われて休んでいる。
なんとか…作戦を考えなくては。
だるくて上手く思考がまとまらない。そのまま結局、寝てしまったのだった。
翌朝、目が覚めた。もう恒例の狼が寄り添ってる。その頭を撫でて起き上がる。
テオもナリスも起きた。バクセルが
『ご飯だよー』
いつも通りに朝食を用意してくれる。
「いつもありがとな」
『僕は出してるだけだから』
「そうだな、離れていても…アイルに助けられてる」
『うん!』
しっかり食べておこう。魔力は満タンになった。下への攻撃をなんとか。そう心に誓って用意を整えた。
ハク様はしっぽを振りながら
『進むよ!僕はブランに乗って雲の横から下に攻撃する。ナリスたちは上をお願い。狼たちは迎撃に備えて!雲の上にアルのテントを出すから、半分はテントの中に待機で』
なるほど、魔力圧の強くない雲の隣か。
『ブランが疲れたらドーナに乗ってナリスたちが下をお願い』
これならなんとかいける、誰もがそう思っていた。この時は。
その頃、ロイカナの町では
ロキはまだかまだか、とあの少年の帰りを待っていた。誰かを探すような目線を扉に向ける同僚に、流石に先輩職員が声をかけた。
「ロキ、どうした?誰か探してるのか…?」
ロキはなんと答えていいか分からず
「いや、その…少し」
職員はそこで数日前にロキが珍しく誰かに声を掛けたことを思い出す。
「そういえば、討伐の依頼を案内してたな…確かまだ子供だったか?お前が気にするなんて珍しいと思った。まだ戻らないのか?」
ロキは目を彷徨わせて
「気にしてる訳じゃ…。まだ戻らない」
「出発してから何日だ?」
「5日目…かな」
「えっ?場所は?」
「ここから5時間の場所」
「討伐は?」
「ゴブリンの巣…」
「何、だって…?」
そこでロキも1つの可能性に気がつき青ざめた。
「おい、ギルマスに報告だ!」
慌てて連れ立ってギルマスの部屋に行く。
先輩が扉を蹴る勢いで叩きながら開けた。
「おい、入る前に…何かあったか?」
文句を言おうとしたギルマスは言葉を切った。何かを感じたのだろう。
「迷宮かもしれない…」
そこからロキが経緯を伝える。
「受けたのは4人か?」
頷く。
「中級4人…1人は小さな、多分少年」
ギルマスはピキリと固まった。
「名前は…?」
その声がこころなしか震えている。
「アイル…」
「なんだ、と…アイル、間違いなくアイルか?!」
ロキはその勢いに驚きながらも頷く。
「なんてこった…まさかあのアイルか!くそっマズイな」
アスクルは悪態をつく。速やかに報告していない彼が、まさか迷宮と遭遇したかもしれないなど…。
しかも例の彼は戻っていない。間違えたら国際問題に発展しかねない。依頼者は貴族の中でも錚々たる人たちだ。どうしたら…捜索隊を出すしか無いのか。アスクルは考えて決断した。
「捜索隊を出す!ロキ、お前が人選をしろ。」
ロキは頬に熱が集まるのを感じた。彼を助けに行く、気持ちが高揚する。
「はいっ!」
いつになく大きな声で返事をすると、ギルマスの部屋を出て窓口に戻る。
声を張り上げ
「緊急依頼だ!上級以上でいける奴は集まれ!!」
時系列整理 年明け以降
1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発
アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く
1月2日 麓の村をナリスと出発
1月6日 ロルフがフィーヤ着
アイルが町レイニアに着く。馬車を買う
1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着
アイルが布を仕入れて町を出発
ライラたちが襲われる
ゼクスと王都にロルフから手紙が届く
1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発
魔術師団がゼクスに出発
1月9日 アイルがハク、ブランと再会
1月10日 ミュジークと捕虜を解放
アイルが村が救う
1月11日 魔術師団がゼクスに到着
近衛騎士たちが村を出発
アイルたちが村を出発
1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発
1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着
1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする
1月18日 ロルフたちがフィフスに到着
アイルが川蛇の依頼を受ける
1月19日 ロルフたちがゼクスに到着
アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける
アイルたちが迷宮を発見する
アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層
ラルクたちが迷宮に潜る 9階層
1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う
コムギと再会する 42階層
ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層
1月21日 ロルフたちが死の森に行く
イーリスたちがアレ・フィフスに到着
迷宮3日目 アイルはナビィと再会する 40階層手前
ハクたち 37階層終わり
1月22日 イーリスがゼクスに到着
迷宮4日目 アイルたち39階層に到着
ハクたち38階層で休む
1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発
迷宮5日目 ハクたち39階アタック開始




