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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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373.ボスの正体

 順調に進んで遂にボスと思われるやっぱり大きさがおかしいネズミに遭遇した。その目はやっぱり真っ赤だ。

 デカいね…トムとジェリーの何倍?

 見上げるような大きさ。2メル(m)ほどか。ふかふかの胸毛に埋もれたいけど、目がね…怖い。

 あれ、でもこの子…うーん。


『行くよー!』

 ナビィが体勢を低くして突撃しようとしてる。僕は慌てて止める。

「ナビィ、ステイ!」

「わん!」

 条件反射で伏せをする。よしよし、頭を撫でる。


「なんか変な感じ。あの子からは殺意が感じられない」

『どういうこと?』

「分からないな…」

(ビクトル…何かおかしい)

(首の後ろに何か、あれは…呪具か?)

(呪具?)

(呪いの道具、悪いものだよ!)

(呪いなら普通の解毒剤が効くかな?)

(面白い発想だね、かけてみる?首の呪具に)


(ナビィ…聞こえる?)

(アイリー聞こえるよ!)

(飛び掛かるふりをして飛び越して、首の後ろにこれをかけてみて)

(それは解毒剤?)

(そう、首の後ろに呪具があるらしい)

(分かったー!)


 ナビィは正面から当たると見せかけて、直前で飛び上がった。そして上から解毒剤を首の後ろにかける。すると黒いもやが立ち昇って消えた。

 後に残った青い石はやがてパキリと音を立てて割れた。


 すると大きなネズミはまるで糸が切れたみたいにドサリと倒れた。ぴくりとも動かない。

 これは…僕はポーチから()()()()()()()の傷薬を取り出して、その石にかけた。

 すると石は元の通りにくっ付いて、そのままふわりと浮くと大きなネズミの中に埋まった。


 やっぱり、あれはこの子の魔石。呪具に操られてたんだ。魔石に取り憑くなんて悪質な。

 その子に手をかざすと

「返せ!」

 強く言い放った。これで呪い返が出来る。


 倒れたその子の頭をそっと撫でる。ふかふかだ。ぴくっと震えるとあれって顔して起き上がった。

 後ろ脚で立ち上がってもふもふな胸を撫でてヒゲをそよがせる。

 しっぽをタンと地面に打ち付けると

『母さん!』

『母さん!!』

 トムとジェリーが走って行って抱きついた。


『あらまぁ、子供たち?元気だった?まさか再会出来るなんて…』

 最後は涙声だった。

 やっぱりか…大きなネズミを見た時の反応がね?


「良かったな…トム、ジェリー」

 声を掛ければ

『うん!ありがとうアイル』

『お母さんを助けてくれてありがと!』

 僕の体をよじ登って首元にすりすりする。ふふっふかふかだね。



 ドンッ



 えっと…?僕はお母さんに押し倒されていた。

『ありがとー!人の子…ありがとう、ぐすっ…うわぁぁん…えぐっ…』

 何故かお母さんにまで首元にすりすりされた。柔らかな胸毛が圧倒的なその体は柔らかくて暖かくて、生きててくれて良かったと思った。


「呪いに抗ったんだよな…良く頑張った。よしよし、落ち着くまで泣いていいよ。頑張ったな…お母さん」

『人の子のお母さんじゃ、ないもん…ぐすっ』

 それもそうか。


 呪いが解けた後のその目は赤紫。赤に青が混じったきれいな色。

 その色の花を知ってる。

「サフィニア…」

『我はサフィニア…素敵な響きだ。ぐすっ。うわぁぁん…』

 くすっ泣きながら喜んで喜びながら泣いている。首元でトムとジェリーも泣いている。よしよし再会出来て良かったよ。



 僕はほんの少し、もう会えない家族を思った。



 ようやく落ち着いたサフィニアが起き上がる。涙が凍っちゃうからね、顔を洗浄してあげた。

 それにしても大きい。

『我も同行するのだ!』

 まぁね、つい名前付けちゃったし。でも元の山に戻って家族水入らずで暮らしてもいいと思うんだ。その方がきっと自由だし。


「みんなでミュシュランテスに帰ったら?今なら家族で暮らせるよ!」

『えっ?』

『ご主人?』

『なぬ…』

『僕たちは要らない子…』

 ん?何でそうなる?


 僕は目をパチパチさせて

「違うよ?野生の方が暮らしやすいかと思っただけ。人と暮らすのは窮屈だろ?」

『そんなことない!』

『ない!』

『アイルのそばがいい!』

 僕は構わないけど。

「せっかくお母さんに会えたのに、それでいいのか?」

『お母さんも一緒に付いてく』

『付いてく』

『付いてくぞ!』


『名前まで貰ってさよならは連れないぞ?相手の為だと思ってるかもしれないが、彼らはアイルのそばにいたいのだぞ』

 ディシーが横から言う。

 シルフィも頷きながら

「要らないって言われたら…泣く」

 えっと困ったな、要らないなんて思ってないのに。


「帰りたいかなって思っただけだから、もちろんそばに居てくれるなら嬉しいよ。助けた子はみんな大切だからな!」

『いいの?』

『いいの?』

『良いのか?』

「もちろん、よろしくな!仲間もたくさんいるんだ」


 嬉しそうに立ち上がってヒゲをそれがせる姿は大きさ以外はまったく同じ仕草で笑ってしまった。

 順番にビクトル、ナビィ、そしてディシーとシルフィを紹介する。

『豪華であるな?』

「ねー?僕が1番凡人」

『…』


 サフィニアは息子たちに小声で話しかける。

『なぁアイルは天然か?あんなに周りが豪華なのはアイル故だろうに。自分は凡人と言っておる』

『アイルはね…無自覚』

『無自覚』

『あー主はな、無自覚天然たらしじゃな』

 ディスタンシアも加わって話をする。


 アイルは少し離れた所で話の内容は分からないけど、早速仲良しだなと思っていた。


『ビクトル、なんか…たらしの威力が増してるね?』

『増し増しだね』

 ナビィとビクトルも顔を寄せて話をしている。


 アイルはみんな仲良しだなっと思っていた。


「サフィア、寒くない?」

『サフィア?』

「愛称だよ」

『そう言われるとほんの少し、ちょっとだけ寒いかも…しれない』

 チラチラと見ながら言う。やっぱり寒いのか、羨ましそうに僕を見てるからさ。


 ポーチからキツネのしっぽを取り出す。ふかふかでわさわさ。これならあったかい。

「これを…」

 屈んだサフィアの首に巻いてあげる。嬉しそうにヒゲがそよぐ。

「似合うよ!」

 白い毛に金色のマフラー。とっても豪華だ。


 トムとジェリーが僕の肩に来て

『ちょっと寒いかも…』

『僕も…』

 あぁやっぱり我慢してたのか?

「我慢はダメだよ。ほら、こんなに冷たい。待ってな…これとこれで、よし!」

 キツネの毛皮で靴と手袋、帽子とマフラーも作ったよ。


 小さな体に着ける。おっ可愛い。これはとっても可愛い。軽く胸毛を撫でると

「すっごく可愛いぞ?ほらサフィアとお揃いだ!」

『お揃い』

『嬉しい』

『お揃いだね』



 ふふふっ眼福。



 それを呆れた顔で見ているディシーとビクトル。

『構って欲しかっただけじゃな…あのふかふかの毛皮で寒いなどなかろうに』

『トムとジェリーだってはしゃいで走り回ってたもんね』 

『やれやれ、本気で心配しておるからな…』

『それが心地良いからね、仕方ない』

『仕方あるまいな』



 さて、そろそろ次の階層に進もう。

「みんなー、そろそろ移動するよ!上の階層の様子を見て、行けそうなら1階層くらいは進みたいから」

『はーい!』

『はーい』

『うぬっ』

「うん…」

 元気な声が返ってくる。


『アイリーこの上の階層はちょっと面倒かも』

 えっ、そうなの?ナビィは上から降りて来たから知ってるのか。

「どんな風景?」

『空!』

 えっ?

「空?」

『空だよ!飛ぶの』


 えぇーーー?!それはまた難易度が高いな。

『雲に乗ってーふわふわぁ』

「ごめん、ナビィ…分からない」

『だから雲でふわふわー』

 ビクトル、解説頼む。

『ナビィ、空なんだよね?雲に乗るって言うのは、流れる雲に飛び乗って移動するってこと?』

『違うよ!雲は階段の下にいるの、でそこを踏むと勝手に動く』


 へっ?階層に降りたらそこは雲で、自動で進むってこと?

『知らずに乗ったら動いちゃう?』

『知ってて乗っても動くのー』

 そらそうだよな。じゃなくって

「それだと魔獣は襲ってこないの?そのまま次の階段まで行けちゃう?」

 ボーナス階層とか。


『もちろん魔獣はいるよ!はじめは上から石を落とすだけで、それがドンドン強く大きくなって…途中は上からも下からも普通に攻撃される。で、最後は全方位から!ゲームみたいで楽しかったよー』

 それが楽しめるのはナビィが飛べるから。


『でもねー疲れるの。上とか下とか、魔力圧が凄くて。だから雲に乗って攻撃を全部弾き返した!打率100%だよー!えへへっ』

 1人(1頭)で雲に乗って全方位の攻撃を弾くってそれは凄い。

『本当は少し当たったけど、アイリの結界が防いでくれたー』


 しっぽをブンブン振るナビィ、可愛い。

 でもナビィだけならまだしも、人が増えて他にも仲間がいると難しいのでは?

「えっとそれはナビィが自分だけだったからだよな?仲間が増えたら大変じゃ?」

『大丈夫だよ!だってアイリがいたらもっと色々出来るでしょ?』


 あ…空気車というか、空気飛行機にすれば雲に乗らなくても飛べる。

 全方位を結界で覆って、空気銃を乱射して…魔獣を倒す。で、ドロップ品は僕のポーチに吸い込ませたらいいかな。


(手伝うの…)

(回収任せて…)

(魔力圧は平気…)

(手伝わせて…)

(美味しい魔力のお礼…)


『ほらっアイリが動かなくても彼らが勝手に動く!』

「みんな…ありがとう。じゃあお礼に…」



 さわぁー



 魔力を発すると、キラキラと光が瞬く。



(ありがとう…)

(頑張る…)

(頼って…)

(大好き…)



『アイリーもてもてー!』

 人以外には人気あるみたいだな。何にしても有り難い。

「よし、それなら上に行こう!」




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 ナビィと再会する

アイルたち 42階層


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発



別連鎖の

『星なし転移者と仲間たち 逃亡中〜』

完結しました!短いのでよろしければそちらも…


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