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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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372.その頃のギルドは

 ロイカナの町にある探索者ギルド。

 そこの職員であるロキは、なんとなくソワソワしていた。彼らがゴブリンの巣の討伐に出てからだいぶ経った。馬なら片道3時間、往復6時間。討伐は規模にもよるが、せいぜい3時間として…休憩を含めてもそろそろだろうか。


 今はギルドの時計で午後5時。顔の表情は変わらないが僅かに落ち着きなく、扉を見つめていた。

 普段は依頼紹介の窓口にいるが、夕方は依頼完了の窓口にも入る。

 ソワソワしていてもテキパキと動くので、職員以外には分からない程度のソワソワ。


 しかし、その後は6時になっても7時になっても彼らは帰って来なかった。


 近い場所では無いのだから、何処かで野営をしているか。または思ったより大きな巣で討伐に時間が掛かっているか、その後処理なのか。

 心配するほどの事では無いと分かっていても、なんとなく彼の様子が気になる。自覚は無いが、これまで一探索者の心配などしたこともないロキ。


 心配してそわそわしている時点で、相当な思い入れがあると本人は全く気が付いていなかった。

 もう自分は就業の時間だ。あと1時間もすれば当直以外の職員は帰宅して、窓口も一部を除いて閉鎖される。

 きっと今日は野営だろう。楽しみは明日に取っておこう、そう考えたロキは職員用の住宅に帰って行った。


 翌朝、いつも通り早めに出社したロキ。窓口の準備をしてギルドが開くのを待った。しばらくは依頼に忙殺されるだろう。野営をしたのなら早くても昼過ぎか?慌てなくても大丈夫。

 会えるのを楽しみにしながら業務に勤しむ。ギルド併設の食堂で昼食を食べ(すれ違わないように5分で)すぐに窓口に戻る。

 期待に胸を膨らませ、その時を待つ。


 おかしい。書類は達成待ちの棚に置かれたままだ。ギルド職員は依頼を受けた探索者が期限を過ぎても戻らないか、明らかに戻っていないとおかしい場合には捜索隊を出す。

 しかし明らかにおかしいという判断がなかなか難しいのだ。今回は少し離れた場所で、かつ規模が把握できていない魔獣の巣の討伐だ。

 上手くいけば依頼を受けた日に帰れる。野営してとしても今日。

 ただ、討伐に手間取ったり誰かがケガをしてた当然帰りは遅れる。まだ依頼を受けてから2日。明らかにおかしいと判断するのには早い。


 心配ではあるものの、全員が中級だ。やはり何かあったのだろうが心配し過ぎは良くない。そう冷静に判断して待つことにした。

 一抹の不安は押し隠して。





 新たな迷宮の36階層…


 私たちは階段を降りた。そしてこれは…また。

 どうやって進むのか、みんなが立ち止まった。それもそのはずだ。

 そこは空だったから。階段を降りた先は雲のようで、なぜか全員を乗せたままふわふわと進み始めた。階段にはもう戻れない。

 不安定な雲に乗ってふわふわふわふわ。突然



 シュパン



 何かが落下した。はっ?上には沢山の鳥が飛んでいる。そこから石?のようなものを落としている。はいっ?雲はどうやって進んでるんだ。あれは避けなければ雲ごと落下する。

 こんなの聞いたこと無いぞ。そっと下を覗き込む。全く見えない。見えないが落ちたら終わりだと言うことは分かる。



 シュパン



 また何か落ちて来た。でも運のいいことに微妙に当たらない。

『アイルの結界が弾いてるんだ!』

 バクセルが言う。

『ブラン!』

 ハク様とリーダーそして何頭かの狼がブラン様の背に乗って飛び上がった。上にいる鳥を攻撃するようだ。彼らが落とす石を華麗に避けるのではなく、嘴で軽く触れている。するとそれは消えた。亜空間か!さすがは聖獣様だ。

 そして鳥たちに近づくとハク様やリーダー、狼たちが襲いかかる。


 そもそも上空にいるから襲われることはないと言う前提なのか、鳥たちはアッサリと狩られていった。ドロップ品もしっかりとハク様やブラン様が回収していた。

 そしていとも簡単に雲は階段近くに辿り着いた。いいのかってくらいアッサリと。

 階段を降りる。その途中でハク様が

『休憩』

 珍しい。まだ出発して3時間ほどだ。


『上空はかなり魔力が濃いみたい。ブランがかなり疲れてて。休まないと進むのが難しいって』

「そんなにか…ブラン様無しでは進まない。仕方ないな」

「そうだな、頑張って貰ってるからな」


 バクセルはブラン様のところに行って何かを渡している。ブラン様が飲みこむと淡く水色に光った。

『うわぁやっぱりご主人は凄い!ハクーもう大丈夫!!』

『ブラン、まだ先がある。もう少し休もう』

『うん、分かったよ!』

 そうして30分ほど休んで階段を降りた。


 ようやく37階層だ。やっぱり雲に乗ってふよふよ進む。今度はさらに鳥の数が増えた。しかも石も大きくなってる。

 石が真上に降って来て流石に当たるっと思ったが弾かれていた。

 ここにいないアイルに、私たちはまた助けられた。

 そしてブラン様に乗ってまたハク様たちが鳥を攻撃、階段の元にたどり着いた。


 一つの階層を進むのに思いの外、時間がかかる。ブラン様の負担も大きい。お昼をかなり過ぎた所で、ハク様は進むことを諦めた。

『今日はもう無理だね、もしかすると1日で1階層進むのがやっとかも。進んでしまうと戻れない。少し対策を考える』

 そうして早めに探索を切り上げた。38階層に向かう階段で待機だ。歯がゆい、何か出来ないのか…3人で考えよう。


 ナリスが

「魔法は使えなくても魔力は使える、か…?」

 ん?魔力は使える。それは魔法に変換せずに魔力をぶつけるということか…?いや、しかしそれだけではたいした威力にはならない。しかも魔力には限度がある。魔法が使えるとは言っても魔力の量はそこまで多くない。

 アイルのように虹彩の縁に青が回っていなければ、魔力は普通か少ない。

 私は少ないというほどではないものの、ごく平均だ。

 多分、テオもナリスも似たようなものだろう。


「お前たちの盾と剣は迷宮産だな?」

 あ、そうか。ナリスの言わんとすることが分かった。目をパチパチさせているテオに

「迷宮産の武器には魔力が乗る」

 あっという顔をする。

「飛ばせるのではないか?」

「階段を下りきってしまうと雲に乗る。ならば最下段で試してみるのはどうだ?もしくは上の階で」

 私たちは頷くと

「ハク様、武器に魔力を乗せて飛ばせるか試して来ます」

『僕も行く!』


 こうしてハク様も一緒に上の階に向かった。やはり鳥は復活してる。最上段の踊り場からハク様が魔力を込めて空に向かって前脚を振り抜いた。


 ザシュ


 お見事!

 振り返ったハク様はドヤ顔だ。

 私も剣に魔力を纏わせて一閃、当たった。これなら鳥のそばまでブラン様が飛ばなくても大丈夫だ。もうドロップ品の回収は諦めればなんとか進めそうだ。

 テオは小楯に魔力を纏わせて振り抜いていた。ちゃんと魔力が刃となって飛んでいた。

 検証を終えた我々は安堵してテントの中に戻り、食事をして早めに寝た。





 その少し前のアイルたちは…


 食べ終わると少し休んで出発。次の階層からは迷宮の仕様が変わるからね。


 また雪原を進む。コムギはまた僕の背中。ぴとりとくっついてて本当に可愛い。今日の夜も抱っこして寝るからな!

 ネズミはとにかく数が多い。噛まれてもたいして痛くないな、と思ってたらビクトルが

『普通は体がしびれてしばらく動けないんだよ…』

 呆れ顔で言われた。

 実は試しに噛まれてみたんだ。なるほどね、ってなんで僕は平気なの?

『自浄作用…』

 僕は何もしてないよ?

『周りの聖なるものたちが、ね』

 おうふ、それはありがとうだね。周りに魔力をふわりと舞わせる。

「まわりのみんな…いつもありがとう!」



『おい、主はなんというか…天然だな?』

 ディスタンシアがビクトルに話しかける。

『無自覚天然たらし…本当にありがとうって思ってるんだ』

『しかし、そもそもアイルの魔力に寄って来てるんだろ?ならむしろ助けられてるのは周りではないか』

『そうなんだけどね?アイルだし。自分は助けたって思ってないんだ。垂れ流してるし?』

『それはそうだが、明らかに嬉しそうな波動が伝わって来たぞ?』

『増えてるんだよね…どんどん』

『分かるがな…あれは敵わん』

『純粋に感謝を伝えてるからね…で、また周りが頑張るんだ。好循環?』

『無敵だな』

『ある意味ね…』

 ディスタンシアはその思わせぶりな言葉に敢えて反応しなかった。


 アイルのフードの中は温かい。ぬくぬくで気持ちいい。確かにな、これは離れ難い。難儀なもんだ。無自覚故に、な。



 順調に進んで遂にボスと思われるやっぱり大きさがおかしいネズミに遭遇した。その目はやっぱり真っ赤だ。

 デカいね…トムとジェリーの何倍?

 見上げるような大きさ。2メル(m)ほどか。ふかふかの胸毛に埋もれたいけど、目がね…怖い。

 あれ、でもこの子…うーん。


『行くよー!』

 ナビィが体勢を低くして突撃しようとしてる。僕は慌てて止める。

「ナビィ、ステイ!」

「わん!」

 条件反射で伏せをする。よしよし、頭を撫でる。




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 46階層

ラルクたちが迷宮に潜る 9階層


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する 42階層

ハクたちはブランと再会する 30階層まで転移 35階層


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着

迷宮3日目 ナビィと再会する

アイルたち 42階層


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発

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