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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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369.新しい迷宮12

 ブラン様は悠々と羽ばたくと我々を乗せて飛び上がり、小島を通り越して反対側の岸まで運んで下さった。

 岸に降りる。慎重に周囲を見回す。攻撃は…来ないか。ここでハク様たちの到着を待つ。

 さすが狼とハク様はなんてことなく駆け抜ける。ハク様は立ち止まって魚を切り裂いていた。前脚から繰り出される攻撃は凄い。


 みんなが岸にたどり着くと、進んだ先にアッサリと階段が見たかった。あの水を岸から岸へ攻略することが課題なのかもしれない。

 いいタイミングでブラン様と合流出来て良かった。

 こうして35階層までなんなく辿り着いた。しかしそこはボスが居ると思われる階層。

 真ん中の小島には黄金の木があった。それを確認したハク様とリーダーが何やら話をし

『あの小島で寝るよー』

 と言った。しかし小島は見るからに狭い。20匹の狼と人間3人にハク様とブラン様だ。無理ではないか?


『アルのテントがあるから大丈夫ー』

 ハク様はさっさと小島に渡ると首元のポーチから何かを咥えてほおる。するとそれはポンと着地してテントになった。これはアイルテントだな。ならば大丈夫だろう。


 狼たちは次々と小島に渡り、テントに吸い込まれて行った。我々はブラン様の背に乗って小島に着くとブラン様が我々を乗せたままテントに入った。

 中は広くて狼やハク様が寛いでいた。ほんとにアイルはな…。胸が温かくなった。

 いつも通りバクセルが食事を出し、みんなで食べて横になって寝た。




 その頃アイルは…



 やっと45階層だ。うー先は長いなぁ。

 階段を登り切るとそこは極寒の荒野だった。え…冬?まぁ季節は冬だし、寒くないからいいか?寧ろ冷たい空気が心地よくすら感じる。

 トムとジェリーは寒くないかと見るけどもっこもこになってるから平気みたい。チョロチョロと動き回っている。


 ビクトルとディシーは寒そうにしてるから

「僕の首元においで。フードの中なら温かいよ」

 そそくさと潜り込む。ふふっあったかいな。シルフィも寒そうだ。僕はポーチからもこもこのローブと手袋、マフラーを出す。ローブを着せてマフラーを鼻まで巻いて、手袋をはめる。

「温かい…」

「それなら平気?」

 コクンと頷く。白い頬が寒さで赤くなり黒いローブに白いマフラーのシルフィはとってもきれいだった。

「きれいだよ…シルフィ。進もうか?」


 自然と手を繋いで歩き出す。ここの魔獣は鹿だ。ツノが何股にも分かれてる大きな鹿。だいたい3メルかな。ツノまで入れたらもっお大きい。だってツノが1.5メルほどもある。ディシーは寒そうだから、元々の魔剣を使って戦う。弱点はツノらしく、そこに一定以上の攻撃が入れば消滅する。

 残されるのは皮とツノ。ドンドン収納する。それなりに戦った先に一際大きな鹿。目の色が明らかに違う。今までは黒かった目が赤い。体長も5メルほど。ツノなんて2メルはあるよ。あれは攻撃が通るの?



 なんて思ってたよ。僕は出番なかった。だってね、シルフィが澄んだ声で

 水よ…と唱えたら大量の水が鹿にかかった。そして即凍った。バッキバキに。

 水の精霊って凄いな。ボスが完敗だ。お陰で簡単に倒せたから上に向かう階段が見えた。

 後に落ちていたのは宝箱と白いローブ。暖かそうだ。手に取るとシルフィに

「こっちの方が暖かいよ!」

 声をかけたけど首を振る。

「寒いだろ?」

「……アイルのくれた服がいい」


 えっとそう?なら

「上から羽織れば?そしたら僕の服もあるし温かい!」

 嬉しそうに頷くのでその肩からローブをふわりとかける。嬉しそうに手を通して

「あったかい!アイルは寒くない?」

「大丈夫…これはとても温かい」

 ビクトルによれば僕のローブは内側に羊の毛がみっしりと詰まってるからとても温かいんだって。首元にいるビクトルとディシー(チャロ)はどうやら気持ちよくて寝てるくらいだし。

「さ、上にあがろう!」

 シルフィと階段を登っていく。先行したトムが

『しばらく雪原だね…』


 だいたい5から10階層ごとに迷宮の仕様が変わるらしい。一貫して同じって迷宮もあるけど、低難易度の場合とか。50階層までは間違いなくあるから比較的難易度が高いだろうとはビクトルの予測だ。

 そしてトムの言う通り、やっぱり雪原だった。ここでは白熊が出た。魔獣らしい。下の階層の方が魔獣は強いから、熊より鹿が強いと言うことだ。


 確かに体の大きさも同じくらいでツノがない。だからか、剣で簡単に切れた。

 ドロップ品は毛皮と肉と爪。さくさく進んだら、やっぱり大きな熊がいた。

 魔剣でも皮は魔力を弾いてしまい、かすり傷しか負わせられない。

 これはやっぱりアレかな…魔力の供給源を止める。



 ズドドンッ



 良かった。倒せた。魔石も落ちてた。魔獣を倒しても迷宮では魔石が出ない。たまにドロップするだけみたい。僕は初めてだ。とても青くて透明度の高い拳大の魔石。大切にしまった。

 で、やっぱり階段が出現。登る。そしてまた雪原。そこでトムが急に駆け出した。

「トム!」

 僕も走るけど、シルフィが遅れる。僕は戻ってシルフィを抱えて走る。羽のように軽い。浮くだけはあるな。変なことに感心して走る。

 すると懐かしい魔力を感じた。これは…


『パパ!』

「コムギ!」

『パパッパパ!ぐすんっ…』

 小さなコムギが泣きながら走って来た。僕はシルフィを降ろすと走ってコムギを抱き止めた。

「コムギ!無事だった?ケガしてない?お腹は?寂しかったか?」


 ギュッと抱きしめてから離して全身を確認する、、ケガはしてないな。震えている、少し寒いよな。僕はポーチから帽子とマフラー、手袋にコムギ用のもこもこの服を取り出して着せる。

『パパ…あったかい。うわぁぁん…』

「良く頑張ったな…偉いぞ!コムギ…ぐすっ」

 僕まで健気なコムギに泣けて来た。1人で頑張ったんだな。よしよしたくさん甘えていいぞ!


 しばらくすると泣き止んだコムギは

『パパ…大好き』

 もじもじと言う姿が可愛くて可愛くて。ギュッと抱きしめた。

 ひとまずこの階層は抜けて、階段は魔獣が襲って来ないと言うので、階段に家を出して休むことにした。

 この43階層の魔獣は狐。ふっさふさのしっぽは可愛いけど顔は可愛くない。


 下から上がって来た僕には魔獣が弱くなるから楽勝。コムギも大活躍で、ボスはコムギが爪で切り裂いた。

 宝箱としっぽの毛皮と普通の毛皮がこの階の報酬。しっぽはそのまま首に巻くととってもあったかい。

 本来は上から魔獣を倒しながら降りるから、装備を兼ねてる報酬なのかも。


 出現した階段の踊り場で家を出し中に入る。ふう、落ち着く。

 と言っても落ち着いているのは僕たちだけ。

 ディシーもシルフィも大はしゃぎだ。なんか珍しいかね?普通の家だけど。

 でも、1人用だから寝室も1つ。シルフィに譲って僕たちはコムギとソファで寝よう。

「みんなお疲れ様ー少し休もう。オヤツ出すから!」

 僕はシルフィに座るよう声をかけて台所へ。温かい紅茶と果物の練乳かけ、後はパウンドケーキかな。

 お皿に盛ってみんなに配る。


「どうぞ。紅茶は熱いから気を付けて」

 シルフィは見るだけで手を出さない。食べ方が分からない?

「シルフィ、これは紅茶。温かい飲み物。こっちは食べ物。このフォークで刺して食べるんだ!」

 僕の真似をして紅茶をすすって少し驚き、果物の練乳かけを食べて淡く微笑んだ。パウンドケーキを食べて頬を染める。うん、反応が可愛い。


 ディシー&チャロはやっぱり紅茶を啜ってホッと息を吐き、果物の練乳掛けを食べて目を見開き、パウンドケーキを食べて頬を染めた。

「美味しい…」

『美味しい…』

 くすっ良かったよ。


 コムギもお皿に顔からダイブしてるね。ふふっ可愛いな。もっと食べたそうな顔をするコムギ。

「もうすぐご飯だからな、少し待って」

『うん!』

 素直で可愛いな。そのほわほわな背中を撫でた。その後でコムギの話を聞く。どうやらコムギは41階層に飛ばされたみたいだ。僕の結界があるからなんとか動けたけど寒くてその日はあまり動けず、黄金の木のそばで寝たんだとか。テントがあったし、食料もあったから困らなかったけど。どうしたらいいか分からなくて、と。


 安全地帯を出たら魔獣に追われて倒しながら進んで階段を見つけた。その階も同じように進んで階段を見つけて降りた。

 そこで懐かしい魔力を感じて走るとトムが迎えに来てくれて、一緒に僕の元へと辿り着いた。

 そういう事らしい。


 頑張って2階層も降りたんだね…偉いよ、コムギ。その日は目一杯、甘やかした。

 夕食は煮込みハンバーグとパン、サラダ、フライドポテト。デザートはプリン。全部シルフィとディシー、コムギの前では飲み物だったよ。

 疲れてたから体を洗浄してソファで寝ようとしたら

「一緒…」

 コムギを抱えたシルフィに涙目で訴えられ、結局同じベットで寝た。もちろん服は着て貰ったよ。要らないって脱ぎ捨てて裸で寝ようとしたから。やめてな?ほんと。




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 

ラルクたちが迷宮に潜る


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う

コムギと再会する

ハクたちはブランと再会する


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発


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