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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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366.新しい迷宮9

精霊の名前…やっぱり戻しました


2025.08.22


 その人は湖の上で浮いていた。腰まである長い水色の髪、細い腰に長い手足。そして何故か裸。形のいいお尻が見える。あれ、かなり遠いのにくっきり見えるな。そういえば少し前からだ。僕は視力良くなった?

『ジョブだよ!遠視だね…遠くがよく見える』

 手元見えてるよ?

『自動切り替え…』

 なるほど、っていやいや何それ?

 ま、便利だしいいか。いやいや、良く無い。今はダメだよ、人の裸をしっかりと見るなんて。


 だから気が付かないフリをした。

 優しさだよ?決して面倒だとか思ってないからね!

 ビクトルとトムとジェリーはまたアイルは引き寄せたな、と思っていた。




『お主、こんなとこで何をしておる?』

 気が付かないフリをしたのに…ディシーってば普通に話しかけてる。仕方ない、気になるし。と思って顔を上げたら

「うわぁ」

 思わず声を上げてしまった。だって目の前にその裸の人が浮いていたから。あれ、浮いてる…そこでようやく、人じゃ無いと分かった。となると、まさかの?!


 あ、無理なヤツだ。僕は幽霊ダメなの。そっと後ろに下がる。スッと目の前に来る。何で?

 また下がる。スッと目の前に来る。どうしたら?

『何をしておる…』

 ディシーに呆れられた。いや、幽霊さんと仲良くは無理かな。


 するとその人が

『助けて…』

 透けそうな声でか細く呟く。

 透けそうな…透ける、あっ…透けてる!この人?透けてる。それに魔力が凄く弱々しい。

 改めてその人を見る。


 透けてる肌、くっきりとした二重に長いまつ毛、潤んだ瞳に細くて形の良い鼻、小さな口。体は細くて折れそうだ。肩も腰もほっそりしてる…長い髪の毛で胸元は見えないけど、おへそや下腹部は見える。うん、付いてるね。遠目では女性かと思えたのも納得だ。とにかく華奢。透けてるから余計に壊れそうだ。


「助けてってどうしたら?」

『そばに…』

 ビクトルを見る。

『垂れ流してる魔力で少し回復するから』

 それでやって来たのか!焦った。裸の人に寄ってこられるとね、男性でも焦るし。


 そっとその腰を抱き寄せる。僕より背が高いから僕の顔が丁度、鎖骨辺り。なめらかな鎖骨の線を何となく眺めていた。

 その人の手が僕に触れる。透けてるに実体がある。不思議な感じだ。だってその手は少し冷たいけど確かに温もりがあったから。


 僕の頬を両手でそっと挟むと長いまつ毛を伏せて唇を寄せて来た。咄嗟に避けようとして、出来なかった。意外と力が強い。しっかりと押さえ込まれた。

 強く吸われる。あ、これって…コムギやビクトルが僕から魔力を吸う時と同じく感覚。この人は僕の魔力を吸ってる?裸でキスしてる状態だから違和感が凄いけど、キスというか魔力の供給かな、これは。


 しばらくすると体を離す。あ、さっきより透け方が少し薄くなったかな。

『美味しい…もっと』

「待って、その…他の方法は無いの?」

『ある、そっちが良い?』

「うん!」




 うわぁ待って待って

「待ったー!」

 僕は涙目で待ったをかける。

『他の方法がいいと言った』

 言った、確かに言った。だってキスより難易度が上がるなんて思わないよ!普通。


 僕が頷いた後、その人に押し倒され服を剥ぎ取られた。そして僕のソレに手を伸ばし口に含もうとしたから、待ったをかけた。

 今僕は裸で、裸の人に乗られ腰を抱かれている。なんならソレはその人の手に握られて。

 無反応なのが流石だけど、いやさすがっていうかね…ここで反応したらもっと居た堪れないから。


 だけどそれは無理。僕はもう目に涙を溜めて待ったを掛けた。流石に止まってくれたけど。

「は、離して?」

『ダメ…まだ安定しないから』

「でもその、握られたままは…」

『ならこのまま密着して唇を…』

「他に方法は?」

『君の体液を吸収するしか…』

 体液って血とかそのあっちのアレとか?それはどっちも無理かな。


『そうしないと消えてしまう…』

 それは…でも。はぁ仕方ない。

「それだけだよ?」

 こくんと頷くとやっと離してくれた。その代わりそのまま僕の体の上にぴったりと寄り添った。そして唇を合わせる。


 後でビクトルに聞いたら、魔力を貰うとか循環させるにはなるべく体を密着させて触れ合わせるのがいいんだって。本当は体が交わるのが1番効果的なんだけど、それは僕が無理だったから。

 安請け合いしちゃダメだね。難易度を下げたつもりが上げてたよ。ほんと、もう。

 そうしてどれくらいか、らお腹が空いたなぁと思った頃にようやく離れた。良かった、もうなんかね。変な感じだったから。


『ありがとう…私はシルフィーヌ、水の精霊』

「もう大丈夫?」

『君といれば、ね』

「僕といる?」

『そう、この体は君の魔力と紐づいたから。離れられない』

 僕はビクトルを見る。


『長いこと大地に溜まった意志ある魔力に絡め取られてたみたい。魔力を吸われて弱ってたんだね。そこでこの迷宮に取り込まれた…消える寸前だったんだよ』

「もしかして、ディシーは分かってた?」

『我も囚われてたからな、ある意味仲間だ』

 むう、ズルな…ディシーは。仲間なんて言われたら放っておけないよ。


「一緒に来る?」

『君のそばじゃ無いとダメ…』

 はぁ、仕方ないな。

「これからよろしくな、シルフィ!」

『…シルフィ』

「そう、愛称だよ!」

『シルフィ…嬉しい』

 シルフィにガバリと抱きつかれた。いや待って、まだ僕たち裸だからね。服を着よう。


『服いらない…』

 なんで?

『気にならないから』

「僕のために着て欲しい。凄く手触りのいい服があるんだ!シルフィに似合うよ!」

『私に?』

「うん、凄いきれいだから何着ても似合う。見たいなぁシルフィの可愛い姿」

『…着る』


 嘘は言ってないよ?だって本当にきれいだから。ぼくは蜘蛛シルクで作った長いローブを出した。薄い水色に染めた布があったからそれを細く切ってサッシュにする。下履きも半ズボンみたいなヤツ。

 渡したけど、手に持って考えてる。着たことないのか。

「貸して」

 返してもらって着せていく。大人しく言われるままに脚をズボンに入れるシルフィはなんだか大きな子供みたいだ。ローブを着せると腰をサッシュで結ぶ。

 うわぁなんてきれいなんだ。これは額に水色のアクセサリー付けたらいいかも。凄く似合う。


 ささっと材料を取り出してトップを作る。サファイアだね、これは。細い鎖につなげて出来上がり。うん、可愛い。

「シルフィ少しかがんで?」

 僕が着せた服を広げて見ていたシルフィは僕の前に屈む。その額にアクセサリーを付けた。落ちないように頭の後ろで留める。

「いいよ?」

 顔を上げたシルフィは、それはそれは美しかった。

「凄い…またきれいになった」

 そのアクセサリーを触ると頬を染め

『ありがとう…』

 そう言って僕を抱きしめた。その体はほんのりと冷たくて気持ちよかった。


『似合うー』

『似合うー』

『きれいだね!』

 トムとジェリーにビクトルが口々に言う。

「この子たちは仲間で、トムとジェリーにビクトルだよ」

『よろしくー』

『しくー』

『よろしく!』

『よ、よろしく…』

 シルフィは恥ずかしがり屋かな。

『似合っておるな!』

「ディシーは知り合いなんだよな?」

『ディシー…もっと禍々しくて黒かった…今は黒髪が可愛い…』

『むっ、我はそこの主に聖剣へと昇華されたのだ』

『聖剣…と妖精、同居?』

『そうだ!力が増して青銀に輝いておる。しかしな、剣では撫で撫でもして貰えぬ故な…』

『撫で撫で…?』

『そうじゃ、お主もして貰えば良い』



 ディシー余計な事を!

 シルフィはもじもじしながら僕に頭を差し出す。さっきはあんなに積極的だったのにね?

 その長くてサラサラな髪の毛を撫でる。僕から見える耳が赤く染まる。なんか、可愛い反応。さっきまで裸で抱き合って唇も重ねたのに、頭を撫でて耳が赤くなるなんてね。僕が撫で終わると顔を上げた。その目は潤んでて頬は赤く染まっている。


 泣きそうな顔、えっとどうしよう。

「大丈夫?えっと…泣かないで?」

 シルフィは首をふるふると振ると僕に抱き付いて来た。

『ありがとう…たくさんの初めて、嬉しい』


 あ、なんかこの言葉に覚えがある。



 ―僕は森から出ないで一生を終えると思ってた。でもこうして生きられる。だからたくさんの初めてを一緒に…アイ―



 誰との会話なのかは分からない、というか覚えてない。でも確かにそんな会話をした。そして



 ―私にとってもこの世界は初めてばかりだから、一緒に初めてをたくさんしよう―



 そう応えた。私?一緒に、そう誓う人がいた。懐かしい記憶。



 我に帰るとシルフィが僕を見ていた。その髪は水色で目も水色、どこまでも透明で吸い込まれそうだ。

『私は君のもの…名前、教えて』

 あれ、名乗って無かったか。

「アイルだよ!」

『君がアイル…』

「うん?」

 シルフィは目を伏せてなんでも無いと呟いた。




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 

ラルクたちが迷宮に潜る


1月20日 迷宮2日目 アイル聖剣、精霊と出会う


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発


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