表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

366/429

360.新しい迷宮3

 アイルを探す為に新しい迷宮に潜っている私たち。しかし、下の階層に降りたいのに降りられない。迷路の中を回っているようだ。

 すると先行していた狼が戻ってくる。

「くぉん」

「くうん」

 リーダーと会話している。それが終わると、リーダーはハク様と会話する。


 そしてハク様が振り向くと

『この先に部屋がある。どうやら階段は囮みたい。行くよー』

 頷いて進む。先行した狼が立ち止まる。しかし部屋などない。見ていると、狼は匂いを嗅ぎながら突然、爪を振り下ろす。



 バリンッ



 空間が歪み、扉が現れた。これは…隠蔽?全く分からなかった。

 リーダーが鼻で器用に扉を開ける。

 中は大きな部屋で、天井も高い。すると奥から黒い狼の魔獣が3頭出てきた。


『ぐるわぁう…』


 唸っている。そこにリーダーが突撃、2頭が続く。


 ザシュッ


 瞬殺だった。


 狼がいた場所に宝箱が出現する。木の箱だ。他には何かの鉱物だろうか、が落ちていた。

 ハク様が鉱物を前脚で触ると、消えた。宝箱は鼻で開けた。横から覗くと、中にはボロい剣が入っていた。ハク様が宝箱こと爪で切り裂くと、そこにあったのは銀色に輝く剣だった。それも前脚で触れて収納する。

 またもや隠蔽か?


 部屋の奥には階段が見えていた。狼が先行して調べている。

 戻って来て群れのリーダーと話をし、ハク様が

『降りるよ!』

 と言って、ようやく一つ下の階に降りた。階段にも罠はあったが、矢が飛ぶようやもので防御により弾かれていた。


 下の階層はやはり洞窟みたいだ。変わり映えのない景色を見ながら進む。前方や後方でザンッとバシッなどの音がする。どうやら狼たちが活躍しているようだ。

 リーダーが立ち止まる。先行していた狼たちが戻ってきて、何やら話をしている。ハク様も加わって、何やら相談した結果、左側の壁に向かってハク様が爪を振り下ろす。

 そこは部屋のような作りになっていて、入ってみると、1つ机が置かれていた。その上には、これ見よがしに宝箱がある。とっても煌びやかな、いささかわざとらしい。


 本来であれば、罠の解除などを得意とする探索者が気をつけながら、宝箱を開けるのだが。

 ハク様はそんなこと全くお構いなしに前脚で開けた。プッシュ、と音がして何かが放出される。

 それは紫色のもやで、明らかにヤバそうなものだ。反射的に口元に手をやる。しかし変わった事はなさそうだ。

 近くを飛んでいたバクセルか

『アイルの結界があるからね!』

 いつの間に?しかしそれは確かに心強い。


 煙が収まった後には、木の宝箱が置かれていた。そしてその宝箱も全く躊躇せず、ハク様が前脚で開ける。

 その中には、大きく輝く宝石が入っていた。その色は、淡い水色。透けるほどの透明度。しかしハク様は特に感動するでもなく収納した。


 迷宮には、こういう宝箱が埋まっているような、隠蔽された小部屋があったりする。ここは全体的に罠が多い迷宮のように感じる。それと同時にかなり高度な隠蔽がされていて、入る人間を選別しているようなそんな気がする。


 元の道に戻って進んでいく。1階層の時よりも慎重に進んでいるようだが、魔獣を警戒していると言うよりは、匂いをたどっているのではないかと思う。

 階段がないとするのであれば、下に降りるためには、1回目のような部屋で魔獣と戦う必要があるのかもしれない。それも階層ごとに違うのが迷宮の特色で、まだ誰も入ったことのない。この迷宮は完全な手探りで進むしかない。


 また、リーダーが立ち止まる。前方から何やらガヤガヤとした音が聞こえた。

「キャン」

 先行した狼の鳴き声だ。魔獣と接敵したのだろうか?しばらくすると、コボルトの群れが向かってきた。先行した狼は大丈夫だっただろうか。

 リーダーが臨戦態勢を取り、他の狼たちも身構える。もちろん私の前にいるテオや私も、腰から剣を放つ。ハク様は、ゆるくしっぽを揺らしている。先頭が、コボルトの群れに当たった。

 ここからは、あまりにも圧倒的だった。これを戦闘と呼んでいいんだろうか、いや、これは間違いなく蹂躙だ。


 そこかしこに転がっていたコボルトたちは、やがて粒子となって消えていく。その後にはふかふかした感じの毛皮がたくさん落ちていた。

 全員で散らばった毛皮を回収する。ほんのり色がついたふかふかのきれいな毛皮。寒い季節だから、これは高く売れるだろう。


 今までの宝箱の中身や中のドロップ品については、狼やハク様たちが収納しているので、全てを把握しているわけではないが。この迷宮はかなり稼げる。

 しかし、言い換えれば、それはそれだけの難易度があると言う事でもある。


 我々だけでは、あの矢の罠を掻い潜ることすら難しい。さらには下の階層に降りるための階段1つ見つけられないだろう。迷宮の道が動いているのであれば、当然ながら戻ることもできないと言うことだ。うまく罠にはまって、迷宮の外に排出されるのであればまだいいが、深層に飛ばされたら、そのまま迷宮の藻屑と消えるのだろう。

 気を引き締めなければ、そう改めて思った。


 しかし、意外なことに、この階層から下に降りるための階段はあっさりと見つかった。隠蔽などもなく、ごく当たり前に階段ですって顔でそこにいた。

 今までの罠の多さから考えると、これも罠なんじゃないかとつい思ってしまうが。

 リーダーが問題ないと判断をし、狼たちはそのまま進んでいく。


 ちなみに、さっき鳴き声をあげていた狼は弾き飛ばされたものの、怪我はしていなかった。弾き飛ばされて無傷なのかと思ったが。

 今はハク様の背中でくつろいでいる。バクセルが

『アイルの防御が自然に働いてるんだよ』    


 …防御とは自然に働くものではない。少なくとも私の認識ではそうだ。しかしアイルはその私の認識を軽々と踏み越えてしまう。前にビクトルが言っていた通りだ。アイルは自分が助けたいと思ったもの、助けたものに対しては、幸せになってほしいと常に思っている。

 その想いが、実際に我々を防御と言う結界で覆ってくれているのだ。

 迷宮を進む際に、おいしい食事、完全な防御、確かな戦力…こんなに楽な迷宮挑戦はもうないだろう。


 階段を降り切ったところは、やっぱりまた洞窟みたいだった。ただなんとなく違和感がある。

 なんだろうと周りを見回して気がついた。壁が湧く発光しているのだ。そういえば2階層は1階層に比べるとほんの少しだけ壁の色が明るかったような気がする。そして今この3階層はさらに壁の色が明るくなり、ほんのりと発光している。


 ハク様がたまに見つける宝箱は、剣とか鉱物もしくは宝石そういったものばかりが出てくる。

 壁の色が変わってきたことなども考えると、鉱物や宝石関係に強い迷宮かもしれない。


 深く行けば行くほど、質の良いものが宝箱から出るのであれば。やはりかなり稼げる迷宮と言うことになる。

 3階層に入ってからは、魔獣の数が多くなったような気がする。全体的にばらけるようにして、我々も戦う。


 前を先行している狼たちがうまいこと誘導してきているような気がする。魔獣を倒して出てくるドロップ品をこちらに回してくれているのか…?

 彼らの実力で敵わないとは思えないから、あえてこちらに敵を回していると思うべきであろう。


 たまに出る宝箱も、ハク様が前脚でこちらに押してくれたりする。安全なのかわからないので、念のため遠方から剣で蓋を開けたりする。しかし、ハク様が渡して下さる宝箱は罠がない。

 罠がある宝箱は自分で開けているようだ。

 罠がある方が出てくる宝箱の質は良いような気もするが、罠がなくてもそれなりのものが出てきている。

 とは言え、これを自分たちが貰う訳にはいかないだろう。これだけ手厚く色々してもらった上で、報酬だけかすめ取るなんてことはできない。


 ある程度進んだところで、リーダーが止まる。先行していた狼たちが戻ってきた。何やらハク様と打ち合わせをしている。また小部屋か?

『大部屋を発見したみたい。倒せば下に降りる階段があるよ』

 狼たちについていく。今度は、ハク様が飛び上がって、前脚を振り抜くと扉が現れた。


 毎度毎度思うが、本当に完璧な隠蔽だ。みんなで部屋の中に入ると、部屋の奥から3体のバイソンが出てきた。大きい。3メル(m)はある。

 狼とハク様たちが全員横に展開した。どうやら譲ってくれるようだ。今まで全く活躍できていないからと、テオとナリスもやる気満々だ。


 向かってくるバイソンに剣を振り下ろす。返す剣でもう一度。やはりまだ階層が低いからか、そこまで強い魔獣ではなかった。

 後には、宝箱が1つと、やはり鉱物が2つ落ちていた。テオは私たちに頷くと宝箱を開けた。

 罠はなく、中には小ぶりな盾が入っていた。いわゆる小楯と言われるやつだ。細めの剣を振るテオにはちょうどいいかもしれない。大体切り込んでいく役割をするのだから、テオもそれがわかっているのか、左手に装着した。


 少し先には、下の階層に降りる階段が出現していた。階段を降りて行く。降り切ったところで、次の階層を見れば、やはりまた洞窟だった。


 少し歩いて行くと、黄色の幹をした木があった。狼やリーダーたちは、その木の周りで、ゆったりとくつろぎ始めた。

 近くにやってきたバクセルが

『黄金の木の周りには魔獣がやってこないから安全地帯なんだ』

 なるほど。ならば少し休めばいいのか。




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 

ラルクたちが迷宮に潜る


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ