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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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359.新しい迷宮2

 昨日のことだ、川蛇の討伐に向かう途中。アイルが何かを手渡してきた。3人ともにだ。

 それは小さなアクセサリー?小さくて、丸い。

「念の為、付けておいてね」

 と言った。ナリスが

「どうやって付けるんだ?」

 と聞くとあぁと頷き、自分の髪を耳にかける。そこには銀色のピアスと、耳に嵌めてある飾り?があった。

 アイルの耳に付いているそれらは、何故かアイルを大人びて見せた。

「嵌めるんだよ」

 そう言って耳を見せる。小さくて形の良い耳だ。


 自分で嵌めようとしても見えないから上手くできない。

「貸して」

 アイルに渡せば、耳にさわりと触れる少し冷たい手。ドクン、と胸が高鳴る。

 優しく触れる手が心地良い。頬が熱い。

「出来たよ!」

 そう言って私の少し長い髪を耳にかけた。ドクンッ…まただ。

「ラルクは色白だからなかなかいいよ」

 恥ずかしいが、それ以上に嬉しい。

「ありがとう」

「僕の騎士だからね?」

 本当にアイルは…人が喜ぶ言葉や行動を的確についてくる。しかもごく自然に、無自覚に。


 同じようにテオとナリスにも付けていた。

 確かに、小さいし違和感がない。むしろ色気というのか、そんなものが感じられる。

 アイルの耳も…その少年の顔とアクセサリーのギャップにドキリとした。

 テオとナリスを見れば同じように頬を染めていた。大の男が3人揃って…少年に照れるとか、な。さすがはアイルだ。



 とそんな事があったのだ。




 私は耳を触りながら防御とはこれだろうかと思い

「これなのか?」

 とハク様に聞く。すると

『そうだよー!矢が飛んで来ても防いでくれる』

 は?矢を防ぐ…これが?


 耳を触る。ごく小さなアクセサリーだ。しかしこれは…魔力か?アイルの濃縮された魔力。じっくりと意識して触って初めて分かった。

『隠蔽されてるからね!』

 ハク様はしっぽをふりふり。隠蔽…もう気にしたら負けな気がする。隣ではテオも同じように耳に触っている。その顔は少し赤い。思い出したのだろう。アイルの手の感触を、耳に触れたそれを。

 ナリスの顔もほんのりと赤い。


『行くよー!』

 ハク様は今はもうあまり慌てていない。ナビィ様も慌ててるというよりは、楽しんでる感じで探しに出た。

 バクセルもふよふよと緊張感なく飛んでいる。ドーナもてとてと歩く。

 私たちは顔を見合わせると、迷宮に足を踏み入れた。

『そうそう、迷宮の中は魔法使えないからね』

 ハク様がなんて事なさそうに言う。

 はっ…い?


 私は青ざめた。それはそうだ。水や食料はどうするんだ?今更ながら気が付いた。

『アルが渡した水筒があるから大丈夫』

 私はカバンからその水筒を出す。手に乗るくらいの小さな水筒だ。いや、全然足りない。

「これでは全く足りない」

『飲んでみて?全部』

 ハク様の言葉にテオがぐいっと飲み干す。直ぐに無くなった。

『蓋をして、また開けて!』

 言われた通りにテオは蓋を閉めてまた開ける。

「なっ…」

 隣から覗き込むと、縁まで並々と水が入っていた。


 それを見たナリスが水筒の水を飲み干す。蓋をして開ける…たぷたぷだ。私も同じことをする。蓋をそっと開けると…やっぱり並々と水がある。

「「「はぁ…?」」」

『アルがね、便利だからって』

 いや、待て。便利だからって問題ではない。もちろん便利だ。凄く便利だ。しかし、そういう問題では無いのだ。

 水が湧く水筒。これだけでどれほどの価値があるのか…考えたくも無い。これはもう国宝級だ。それが各1人に1つ。有り得ない…。


 簡単に貰ってしまったが、これは返さなくては。今はとても有り難いが。

「しかし、食べ物が…」

『アルが渡した干し肉と干し魚。もう1つの小さな水筒はお湯だよ!乾燥スープの素も貰ったでしょ?』

 あ、確かに。水筒と一緒にこれとこれもねーと渡された。その袋を取り出す。

 あった。水筒には(湯)と書いてある。干し肉と干し魚…。アイルは迷宮に入る為に用意したのか?はたまた遭難前提か…。

 何にしろ今は有り難い。


『だから行くよー!』

 俺たちは今度こそ迷いなく歩き出した。

 先頭はシンリン狼のリーダー、その次がハク様、その後ろに狼2頭でテオ、テオの両脇に狼、テオの後ろに狼、私、私の両脇に狼、私の後ろに狼、ナリスの両脇に狼、その後に狼2頭、そして最後尾にまた狼。

 先頭のリーダーの前にはかなり先行して3頭、他に離れて3頭。合計20頭の狼が脇を固めている。

 手厚い、凄く手厚い。


 ハク様と狼の会話はもちろん分からない。しかし、情報を伝えているのは分かる。ドーナは上をふよふよ飛び、バクセルはハク様の背中のシュレと一緒にいる。

 緊張して入ったし、今も手に汗をかいている。しかし、かなり先で音がして、ここまでは何も来ない。罠の解除もしてるのか?いや、まさか…。


『罠とか魔獣を避けてくれてるよ!前を歩く狼の後を付いてね、じゃ無いと罠を踏むから』

 バクセルが教えてくれる。

 狼って凄いな。後で聞いた話だが、ここら辺は縄張りなので大地の匂いを覚えていたらしい。迷宮が出来ても、匂いは変わらない。だから変化にも敏感に気が付ける、と。それもあって先導したようだ。


 時々、ヒュンと音がする。その後にザシュっと。上や横を見ると矢が刺さっていたりする。

 ハク様によれば、アイルの防御が防いでるんだとか。跳ね返してるそうだ。

 それが無ければケガくらいしてそうだ。

 順調に進むが、階層を降りる為には階段を見つける必要がある。罠なら違う階に飛ばされている筈。


 しかし、かなり歩いているが階段は見つからない。流石に昼を過ぎたから腹が減った。

 カバンから干し肉を取り出す。美味しく無いが、空腹でいるのは良く無い。

 はむっ…!


 なんだこれは…う、美味い!じわっと滲み出る肉の旨み。噛めば噛むほど味わい深い。目は油断なく前を見据えながら、干し肉を味わった。テオも同じ反応だ。分かりやすい。次は干し魚だ。魚は苦手だが、もしや…と思ってな。

 はむっ…!!


 う、美味い…なんだこれは。少し味の濃い、旨みがギュッと凝縮した。これは、大変に美味いぞ。魚はちょっとって思ったのは間違いだったな。干し肉と干し魚に勇気をもらい、また進む。


 しかし、洞窟みたいな作りのこの迷宮はかなり広いのか?それとも迷路のように入り組んでいるのか。

『入り組んでるんじゃなくて動いてるんだ』

 えっ?動いてる、とは?

『道が動いてる。下の階層に降りる場所は分かるんだ。でも道が動くからそこに辿り着けない』


 つまり、道が蠢くから下の階層に行く経路を取っても動くので辿り着けない、と。

 それでは永遠に階層を降りられないのでは?

 アイル…大丈夫だろうか?あの細くて頼りない身体を思い出す。早く助けてやりたいのに…アイル。


『アルなら大丈夫だよ!防御は手厚いし、料理も出来るしね』

 それはそうだが、魔法が使えないのなら料理も難しいのでは無いだろうか。

『アルは魔法が無くても大丈夫だよ、火も起こせるし。むしろ1人の分だけだから楽かも?きっと今ごろはこのままゆっくりしてもいいかな、とか思ってる筈。僕が寂しいから探し出すけどね!』


 魔法が無くても大丈夫?あの魔法特化としか思えないアイルが?物理は弱そうなのに…。

 しかし、例えそうだったとしても、早く見つけてやりたい。いや、違うな。私が早く見つけたいのだ。




 その頃アイルは…家の中で寛ぎながら


 ここは安全だし、しばらくのんびりしちゃう?

 なんて思っていた。



時系列整理 年明けから


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する

アイルが迷宮の罠に飛ばされて行方不明になる 

ラルクたちが迷宮に潜る


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発

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