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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第7章 新しい迷宮

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356.ゴブリンの巣

タイトルを変更しました


 僕たちはギルドを出ると馬を取りに、預けている馬車屋に向かった。

 テオとラルクは自分の馬を、ナリスは馬車を引く馬をそれぞれ外に出す。そうそう、馬たちにも名前を付けないとね。

 大人しい馬はハルアラ、暴れんはショーグにした。えっ?もちろん暴れん坊将軍から取ったんだよ。

 で、馬たちを引いて西門に向かう。門の近くに屋台があったから、僕はソーセージと魚を買った。温かいスープもね。料理出来るか分からないから。


 門を出る。少し進むとみんなは馬に、僕はハクに跨る。大きくなった(普段は1メル(m)くらいの姿)ハクは2メル程あるので、安定感抜群だ。体高は馬に負けるけど、速度は負けないよ。だって風魔法で風圧を操作してるからね?凄く早い。お馬さんたちをぶっちぎって駆ける。


「早いぞー!」

 ラルクから声が掛かる。

「ハク、ゆっくり」

 その背を叩く。

『はーい』

 よしよし。ブランは空を飛び、コムギは僕が抱えて、ナビィは隣を並走してる。そもそも、ハクの上ではほとんど風を感じない。そよ風くらい。コムギは僕に抱き付いてスヤスヤ寝てる。ほわほわであったかい。


 落ちる心配も無いから楽だね!

 速度を緩めたから後ろから3人が追いつく。

「おい、早いな…はぁっはあっ」

 テオが息を切らして言う。

「本当にどんな脚力だよ、はぁはぁ…」

 ナリスも息が切れてる。

「流石だな…」

 ラルクは平常運転だ。

「風魔法で空気抵抗を減らしてるし、僕たち自信も風魔法で避けてるからね!するすると進むよ」

「それはまた、はぁはぁ…」

「あと少しで、休憩するぞ!」

 そうだね、2人は辛そうだし。


 ちょうど2時間ほどぶっ通しで掛けて休憩。お腹空いた。僕は温かいスープを出して飲む。ふうふう、こくん…美味しい。沁みるな。

 ん、と視線を感じる。今は冬。空気は冷たくて、その中を駆けてきた3人の頬は赤く、吐く息は白い。

「スープ飲む?」

「い、いいのか?」

 テオが聞く。

 頷くと僕はポーチから乾燥スープの素を取り出す。カップを預かると粉末を投入。そして、魔法でお湯を出して注いだ。風魔法でかき混ぜてそれぞれに渡す。

「どうぞ?簡単なのだから味気ないけど…」


 ちなみにハクたちは僕が買ったスープのお裾分け。みんなの分は買ってあったから。

 僕はスープだけで充分だけど、ハクたちは足りないからと、キビサンドを出す。バクバク食べてたよ。沢山走ったもんな。

 焼いてあったお肉も追加したよ。気持ちいいくらいガツガツと残さず食べた。良かった。

 僕はハクに抱き付いて首毛をもふる。草原の匂い。


 あ、この子はハクに付いてきた子だな。恥ずかしがり屋なのか、いつも隠れちゃって会えなかったんだ。

「初めまして、妖精さん…」

『は、初めてまして…もじっ』

 あ、可愛い。照れてる。僕は指で妖精さんの頭を撫でる。よしよし…。さらにもじもじ。う、可愛い。その髪の毛を撫でると手を出す。妖精さんはそこに立つ。やっぱりもじもじしながら

『な、名前…欲しいかも』

「ハクは付けてないの?」

『うん』

 ハクを見る。しっぽをゆらゆら。

『アルの魔力に寄ってきたから…』


 うーんそうなのか?

 その子はきれいな緑の髪の毛の妖精さん。緑…グリーン。シュレック…は無いな。草原、グラス。グリン、プラント。

 難しい。決めて貰おう。

「えっと、選んで?グラス、グリン、プラン…」

『ぐぬっ』

 ダメか。

「シュレ…」

『シュレ!』

 おう、まさかのシュレックからのシュレだよ。

「シュレ」

『はぁい』

 ほわわん…水色に光った。

『はわわっ…力が!』

 んと、あれれ。少し大きくなった?


 緑の髪が青緑になって、羽が白から透明になった。さらに羽は水色に煌めく。

「シュレ、凄くきれいだよ!」

『ご主人様…ありがと。力が増したの…』

 そう言って僕の鼻にキスをした。ふわん…と温かな魔力を感じた。これは、草原の?

『祝福だよ?お礼なの』

「ありがとう。シュレ」

『うふふなのっ』

 可愛いね。これからよろしくね!


 僕の頭の周りを飛ぶシュレ。ビクトルとバクセルが出てきて(フードの中にいた)

『やぁ、僕はビクトル、アイルの契約妖精だよ!』

『僕はバクセル、同じくアイルの契約妖精だよー』

『わわわっよ、よろしく!シュレなの』

 仲良くな。


「そろそろ行くぞ!」

「はーい」

 またハクに乗る。ハクのもふ毛に掴まる。お尻に感じるハクの体温は心地良くて、胸の中のコムギは可愛くて。すごい速さで走ってるのに緊張感なくウトウトした。揺れがね、実際に大地を走ってるんじゃ無いから凄く少ない。心地良い揺れ。

 ふわふわうとうと。すると急にグンと加速した。

『襲われてる!』

「待て!」

 後ろからラルクの声が聞こえたけど、ハクはグングンと速度を上げる。


「ハク、どうした?」

『襲われてる…』

「誰が?」

『シンリン狼』

 狼ならハクの仲間か?

 ブランが



 ぴぃーーーーー!



 と鳴く。

 そして空高く舞い上がると翼を畳んで滑空した。その先、地平の遥か先には緑と白が入り乱れていた。

 そこは森の入り口。赤い色が散る。あれは血?

 その中にブランが飛び込む。鮮やかに緑だけを縫って進む。蹴散らされて飛び散る緑また緑。


 なんだこれ…なんて数だ。蠢くように緑が蔓延る。

 ナビィが空を駆けて後方から緑に飛び掛かる。緑が蹴散らされるが、まだまだ多くの緑。

 ドーナが横たわる白に寄り添う。僕はドーナの助けたいという気持ちに寄り添う為、想像する。ドーナに僕の力を分けあたえる魔法を…付与すると。

 ドーナが淡く水色に光る。よし、思う存分おやり。


 そして、いつの間にかコムギが中央で緑に爪を振るう。飛び散る緑。いつ降りたのかね?ザッシュザッシュと緑が舞う。

『アルー降ろすよ!』

 そう、ハクは僕を乗せたまま突っ込んで緑を蹴散らしていた。ごめん、僕が邪魔だね。その背中から飛び降りる。ハクも思う存分、暴れておいで。


 僕はふわりと着地する。緑のど真ん中だ。さて、僕も魔力を解放しよう。戦う為に。

 広範囲ならやっぱり雷かな?僕の大切な子たちを避けて、広範囲で…魔力をねる。駆逐して…。

 軽く手を振り下ろすと



 ドドンッ 



 バリバリバリ



 ズゴン



 …まぁ緑はこれで散ったかな?


『アイリー凄い!』

『アル、カッコいい』

『ご主人、最高ー』

『パパカッコいい!』

『広範囲の雷魔法 サンダーボルトで死屍累々』

 ビクトル、その解説やめて?


 いつも周りに守られてた。でもこの世界で生きると決めたから、もう迷わない。僕は力の限り、守りたいものを守る。そのための力だ。


 追いついた3人が唖然としている。

 僕やハクたちを見て安心すると

「おい、今のは何だ…」

「ピカンと光ってからバリバリって…」

「あんなにいたのに…?」

「そうだね」

 でも多すぎるよね。なんか嫌な予感がする。


 ハクもブランもナビィも、コムギも、トムとジェリー(腕のポケットから顔だけ出してる)も、ビクトルにバクセル、シュレまで一点を見つめる。

 森の奥、凄く強い…歪な魔力を感じる。

『来る』

『来るね』

『来たよ』

『これは…』

『うふっ』

 コムギたんは楽しみなの?ま、何があっても問題ないけどね。多分。

 歪な魔力は遂に溢れ出した。



 ズズズンッ



 ゴゴゴゴ



『やったー』

『来たー』

『突撃ー』

『おー』

「こらこら、早いよ。だいたい何なの、あれ」

『『『『迷宮!』』』』

 迷宮、があったの?


『新しい迷宮、さっきのゴブリンはその力が溢れる前兆』

 へー。で?

『だから迷宮』

 しっぽをブンブンするハク。

『楽しみ!』

 目を輝かせるブラン。

『楽しむ』

 言い切るナビィ、しっぽはもちろんフル回転。

『遊ぶのー』

 コムギたんにはまだ早いよ?パパとお留守番だよ?

『アルも行くんだよー』

『ご主人と一緒』

『アイリと楽しむ』

『パパ抱っこ』

 コムギたんおいで。抱っこしてあげる。よしよし可愛いね。


「お、おい…アイル、なにが起きてる?」

「なんか凄く濃い魔力を感じる」

「何だこれ…もしかして」

「「「迷宮!」」」

「うん、そうみたいだよ?新規の迷宮だって」

『アル乗ってー!』

「え、ハクちょっと待った…まだ安全か分からないでしょ?」

『大丈夫だよー』

 ハクは僕を咥えると背中に放り投げだ。コムギたんもいるんだから丁寧にだよ、ハク。


「待て、アイル!」

 ラルクが叫ぶ。待ちたいのは僕もだけど…もう迷宮に向かって走り出してるからね。

「緑(すでに回収済み)は大丈夫だからシンリン狼をよろしく!ドーナと治癒を終えたらドーナに乗って追いかけてー!」

 僕はは力一杯に叫んだ。

 赤く舞う血はシンリン狼の血。でもドーナは僕の治癒の力が一部使えるから、たぶん、大丈夫。

 ハクと並走してナビィ、ブランは空を飛んでる。


 迷宮か…罠とか落とし穴とか大丈夫なのかな?ハクってば突っ込みそうで怖いんだけど。

『少し入るだけだから!』

「ハク、ナリスたちも置いてきちゃったし、すぐに戻るんだよ?大切なハクたちに何かあったら…。ね?」

『アル、分かった!少しだけね』

 そうそう、少しだけだよ。森の奥へと進むと魔力が濃厚になる。すごく強い魔力は、強い力を解放した直後みたいな…不安定さ。


 鳴動、そう感じた。まるで生き物だ。




時系列整理 年明けから


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着

アイルたちがゴブリンの討伐依頼を受ける

アイルたちが迷宮を発見する


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発



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