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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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353.テッドの屋台

 こうして町に帰って来た。探索者ギルドに行く。依頼達成だ!

「依頼報告だな?」

「おう、ちょっと数がな…」

 カードをだしながらナリスが言う。

「あぁ川蛇か、なら解体場に行け」

「おう!」

 昨日ぶりの解体場。


「なんだ、今度は?」

 僕、警戒されてる?悲しいなぁ。

「依頼のブツだ、多くてな」

「お手柔らかにな!」

 みんな苦笑いだ。


 ドン

 ドンドン

 ドンドンドン

 ドンドンドンドン


 積み上がった。まぁ単体は小さいのが救いかな?


「おい、お手柔らかにっつったろ!」

「取れるだけ取ってくれって依頼だからな?」

「はぁぁ、少し待て。おーい、手伝え!」

「ったく、昨日のワイバーンの解体で忙しいのによぉ」


 すいません…ナリスの後ろに隠れた。ナリスは乱暴に頭を撫でる。むぅ。

 総出で数えてくれた。

「持ってけ!」

 それぞれ紙をもらって窓口に戻る。もちろん、ブツはまた収納したよ?紙を職員さんに渡す。

「おう、こりゃ凄いな。」

 各自精算して貰ってお金を受け取った。これくらいの金額なら現金でも大丈夫だね。


 テオとラルクが僕に銀貨10枚を渡そうとする。

「何?」

「食事代だ」

「そんなに要らないよ!」

「でもな、食わせて貰ってるし」

「押しかけでも僕の騎士なんでしょ?だから要らない!」

「押しかけ…」

「僕の騎士…」

 何故かラルクの顔が赤くなった。どうしたのかね?


 結局、お金は銀貨2枚だけ貰った。無料ってのはよく無いかと思ってね。

 そのまま屋台を覗きに行った。商業ギルドからの伝言でね?テッドの屋台が明日からで、準備してるから見に来てって。

 屋台かぁ楽しそうだね。


「ねぇ屋台って簡単に出来るの?」

 ナリスに聞く。

「さあな?俺は詳しく無い。テッドに聞いたらどうだ?」

「うん、川蛇は沢山あるしね…屋台とかどうかと思って」

「だなぁ、流石に数が多いよな」


 話しながら市場の入り口に着いた。そこにはいくつか屋台が出ている。1番端っこにテッドを見つけた。

「テッド、どんな感じ?」

「アイル、火加減が難しいな…」

 あれ、見れば表面が焦げて中は生焼けか。

「それって魔道具のコンロだよね?」

「あぁ…」

「極弱火で時間掛けて、かな。火加減は焼けば焼くほどフライパンが熱くなるから。その都度、濡らした布の上で熱を逃がして」

「お、おう…やってみるぞ!」


 濡れ布巾でよくジューってやったよ。懐かしい。

 言われた通りにテッドが焼く。僕は失敗作を弱火で熱する。多少焦げてても、真っ黒じゃ無ければ大丈夫だからね。

 うん、火が通ったね。

「テオー、ラルクー、味見!」

 リル草の蜜を掛けてあげる。


「おっ甘くていい匂いだな、はむッ…う、美味い!」

「これはまた、美味しいな」

 好評だね。

 残りの失敗作も中まで火を通してハクたちにご馳走。

 バクバクッ、ふふっハクは大好きかな?お皿を鼻で押してくる。はいはい、おかわりだよ。

 コムギとナビィも?ふふっ慌てないよ、どうぞ。

 お、珍しくブランもおかわり?待ってな…よし、どうぞ。


「おい、アイル…俺にもくれ」

 ナリスが僕を突く。

「昨日食べただろ?」

「俺も食いたい!」

 子供なのか?


「ならこれ、今焼いたヤツ。昨日のアイルのと比べて感想教えてくれ!」

 テッドが差し出したお皿を受け取るナリス。蜜を掛けて食べる。

「うん、アイルのよりは少し…でも充分美味いぞ!」

「良かった…」

 テッドも一安心かな?


 あ、商業ギルドの職員さんだ。

「あーアイル、これはロイカナの町の名産になるぞ!ありがとな。俺はコルビだ!よろしくな」

「うん、よろしく。ねぇ屋台ってどうしたら出せるの?」

 コルビの目が光った、気がする。あれ、なんかのスイッチ押した感じ?


「何かあるのか、食べ物だな?何だ!」

 すっごい圧力。

「川蛇だ」

 横からテオが答える。

「川、蛇…?」

「凄いぞ?魔法みたいに美味くなる」

「あのぬるぬるした川蛇がか?はぁぁ?」


 テオがコルビの肩を叩く。ラルクが背中を叩く。ナリスはしたり顔だ。

「「「分かるぞ!」」」

「でもな?」

「認識が変わるぞ?」

「世界が広がる…」


 そのままコルビに商業ギルドに連行されたのだった。

 ちょっと屋台の事聞いただけなのに?

 思わずコルビを煽った3人をジトッと見る。

「お、俺たちも手伝うぞ!」

「作るのも登録するのも僕なんだけど?」

「悪いな!」

「て、手伝えることが有れば…」


 何も無いよ。何にもね、もう。まだ温めてたのに。

 僕はぶちぶちと文句を言いながら試作室で作ったよ!川蛇。

 ナリスたちはもう要らないよね?散々食べたし。上げないよ!

 ん、ハクはまた食べたい?いいよ、待っててな。ナビィとコムギも、ブランまで?よしよし、待ってなー美味しく作ってあげるから。

 いいんだよ、あの人たちは要らないって。うんうん、気にせず食べていいからね?


「ア、アイル…その少しくらい…」

「何…?」

「ぐっ、何でも…」

 コルビが

「これはたまらん匂いだな…本当に川蛇なのか?」

「そうだよ、見てたでしょ?」

「見てはいたがな…まさかあれがこうなるとは分からんだろ」


 それはまぁそうかも?

 ふふふっ、川蛇うなぎの威力をとくとご覧あれ。

「出来たよー!」

 コルビとハクたちの分をお皿に取り分けて置く。

「白い方は塩と唐辛子、茶色方は特製ダレに漬けたんだ」

「おう、はぐっむ…う、美味いぃぃーーー!」


『美味しいー』

『ピリッと辛いのもいける』

『うんうん』

『美味しいよ!』

 ふふふっ白焼の唐辛子がいい仕事してる。


「「「ゴクリッ」」」

「ア、アイル…その赤いのが掛かってるのは食べてないぞ?」

「味見は沢山出した方が?」

「意見を聞きたいよな?」

「俺だけで充分だ!」

 コルビがバッサリと切ったね?


 うーん可哀想だし、分けてあげるか。でも少しはね、お仕置き。

「もう、仕方ないなぁ。一口だけあげるよ、ナリス。あーんして?」

「えっな、あ、あーん?」

「要らないの?ほらあーんだよ」

「ぐっ、あ、あーん」

 ふふふっ勝った。


 その口に大きく入れてあげる。

「あふっはふっ…う、美味い!これ、ピリってとして美味いな。エールが飲みたくなる」

 テオが

「お、俺も…」

「じゃあ、あーんして?」

 真っ赤になりながらも

「あーん…」

 その口に大きく入れてあげる。

「はふっほふっ、うわぁ美味い!これは確かにエールだな」


 ラルクもついに

「アイル、私も…」

「うーんラルクは、じゃああーんで食べさせてって言って?」

「へっ…」

 色白の顔がりんごみたいに赤くなる。口元を手で押さえて目を瞑る。そっと目を開けると

「あ、んん…あーんで食べさせて…」

 真っ赤な顔で言われるとね、新鮮。ふふふっ。

「はい、あーん…」

「あーん…ふむっはむっもぐっ…お、美味しい…はぁ」

 ラルク、言い方!なんか変に色っぽいよ。


 コルビが待ち構えていた。あ、嫌な予感。

「き、今日は疲れたし、また明日…」

「製法とレシピ登録!製法は捌き方と下処理、レシピは味付けと焼き方!」

 えぇーーー、帰りたいよ。



 はぁ疲れた。やっと宿に帰り着いた。酷い目にあったよ…。屋台の話しまで進めようとするのを断って帰って来た。

 部屋に入ろうとするとあれ?何でテオなの。

「今日は俺だ!」

 部屋に入ってテオが言う。


「負けたの?沢山いるから…ごめんね?」

 テオは僕をじっと見てからマジか…と呟いて、少し顔をが赤くなった。あれ、テオも疲れたの?

「顔が赤いけど、調子悪い?熱は、無いか…」

 おでこと頬に触る。少し熱いけど、大丈夫かな。

「シャワー後にする?」

「だ、大丈夫だ」

「なら入っちゃおう」


 テオの手を引いてシャワーに入る。サッサと髪の毛と身体を洗って終わり。

 あれ、テオがまだなんかぼーっとしてる。

「平気?」

「あっあ、あぁ…」

 部屋に戻って寝ようと思ったら、やっぱりまだ顔が赤い。


「やっぱりこの部屋寒い?僕はハクたちと寝るから暖かいけど。ナビィと寝る?」

「いや、それは…」

 するとナビィがテオに飛びかかった。こらこら、ナビィ。離れない…仕方ないなもう。

「僕も一緒に寝るよ」

 ナビィがテオにしがみ付いてるからね。毛布に潜り込む。もちろんハクとコムギ、ブランも一緒だよ。

 あ、ふふふっやっぱりあったかいや。

「テオ、これなら寒く無いよ?」

「そう、だな…」


 テオの手が僕の髪を梳く。疲れもあってその手の心地よさとハクたちの温もりで、僕はスッと眠りに落ちた。




 俺は隣で眠るアイルを見る。銀色の髪に銀色のまつ毛…色白の頬は少し色付いている。

 普段は無表情だから、ほんの些細な違いでもその落差が新鮮だ。

 不思議な子だ。俺は聖獣様たちのもふもふとぬくぬく、そしてアイルの温もりにストンと眠りに落ちた。

 俺は聖獣様と同衾してるんだ、と考えながら。




時系列整理 年明け以降


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着

アイルが川蛇の依頼を受ける


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発


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