352.川蛇の討伐2
ナリスが僕を振り向くと
「あー、アイル。前から聞こうと思ってたんだが、彼らはその…」
(ビクトル…どうしよう?)
(任せてー!)
『はーい、妖精のビクトルだよー!』
…全力でバラシにかかるの?
『そっちの2人はもう知ってるよね。えっと預言者の一族は初めまして!僕はアイルの契約妖精だよ。お兄ちゃんのバクセルもよろしくねー』
『バクセルだよぅ』
「…」
ナリスは固まってる。珍しい。でもテオとラルクは知ってるの?いつの間に…?
「村の襲撃の夜にな…」
ボソッとラルクが言う。ほんとビクトルってば。僕の為なんだろうけど、教えてくれてもいいのに。
『ナリスはちょっと信用出来なくてね、裏がありそうだったから様子見してた』
ビクトル、本人の前で言うの、それ。
『観察した結果、アイルの害にならないと判断したんだ』
ビクトル、言い方!
『そっちの2人は近衛をやめた時点で大丈夫って判断したんだ』
僕の為、なんだよな。
『で、まずハクは聖獣の銀狼、ブランも聖獣の白大鷹、コムギも聖獣の銀熊、ナビィは伝説の黒曜犬で、トムとジェリーは霊獣だよ!』
「聖獣…黒曜犬…霊獣…」
ナリスが呆然と呟く。
「ネズミが霊獣…」
テオも呟く。知らなかったのか?
『で、僕たちは人型になれるほどの高位の妖精…。アイルの周りにはたくさんの精霊や妖精がいるよ!ハクの背中にも緑の妖精がいる』
「人型の妖精…」
「精霊…」
そこでナリスがハッとして跪く。
「お初にお目に掛かります。聖獣様、黒曜犬様、霊獣様。ナリスと申します」
『そう言うの、要らない…アルのじゃまをしなければ、ね。でも僕のアルを傷付けたら…大陸が滅ぶよ?』
ハクッ、それは僕が困る。
「ハク、お座り…ダメだよ?大陸無くしちゃ。ハクも僕も困るんだからね!」
『わん!』
ハクの頭を撫でる。うん、もふもふだね。いい子だよ、ハク、大陸は滅ぼさないでね?あっふふっ可愛い。よしよし。大好きだよーハク。頭にキスをした。
あ…みんなが見てる。恥ずかしい。ハクのもふもふな首を顔を埋める。スーハーっ草原の匂いだ。大好きなハクの匂い。
顔を上げる。あれ、みんなが呆然としてる。
「ハクの毛、もふもふで気持ちいいんだよ、触る?」
あれ、高速で首を振られた。気持ちいいのにね。
『私もそう言うの要らない!アイリに何かしたら血祭りに上げるけどね!』
ナビィ何言ってるの…ダメだよ!治癒も大変なんだから。はい、お座り、お手、おかわり…よし出来たね!
うん、垂れ耳可愛いよ?匂い嗅いどこう。うん、ナビィの匂いだ。ふふっお尻は…柔らかいな。匂いチェックするよ?ほら、ふふっあ…しっぽ最高。
顔を上げる。う、みんなが見てる。僕はナビィのお尻に顔を埋めてる状態…恥ずかしい。
「ナビィのお尻は柔らかくて気持ちいいんだよ?顔から突っ込んでみる?」
高速で首を振られた。
「…とんでも無いな…」
「そう?みんな可愛いよ?」
「いや、そのな…はぁ。普通は聖獣をペットみたいにしないんだ」
「そうだぞ、崇めるんだ。それを撫でたりお尻に顔から…あり得ない」
「まぁそれがアイルなんだろうが、な」
うんうんみんなも嬉しいしね!
『アルならいい』
『ご主人ならね』
『アイリだけー』
『パパ大好き!』
「「「パパ!?」」」
「コムギは生まれてすぐに母親が亡くなって、僕が預かったんだ。託されたんだよ、この子をよろしくって。だからパパがわり」
「「「そうか…」」」
まだ小さくてほわほわなコムギ。パパがお世話するからな。
僕の膝で仰向けになるコムギ。お腹をなでなで、前脚さわさわ。可愛いね。
「コムギ、爪伸びてるね。痛く無い?」
『少し気になる』
「そこらへんの木で研いでおいで」
『分かったー』
ふふっ素直で可愛い。
「アイル、腹減った…」
テオって空気読まないね?まいいけど。少し早いけどお昼食べるかね。
「ならさっそく川蛇を食べよう!」
「えっ、いや」
「それはっ」
「ちょっと」
「美味しいよ?」
僕はみんなの意見をまるっと無視して料理の準備をする。
「みんなはもう少し頑張ってー」
ハクに調理台と竈門を作ってもらう。で、川蛇はポーチのなかで捌き終わってるね。
取り出して串に刺す。2本刺しだよ!で炭火でしっかりと炙る。白焼きだね。パラパラと塩を掛けて表面は少し焦げるくらい。
よし、味見。ほくっ…美味しい!ふわっふわだ。これはなんとかタレを作りたいな。
醤油と味醂とお酒で作れるかな?やってみよう。
混ぜて混ぜて…うーん、どうかな。うなぎを付けるとその脂で旨味が増すかな。
焼いてみよう。あ、ヤバッ匂いが凄い。これは絶対美味しいヤツだ。
タレに3度付け…でまた炙る。脂が落ちるねー。よし、味見。はふっうわぁ来たーーー!なんちゃってだけどうなぎの蒲焼きだ。
美味しい…止まらない。ふう、一串分食べちゃった。
白焼は柚子胡椒に付けて食べたいな。柚子、無いよね。次回の課題だな。
「おい、なんだその暴力的にいい匂いは?」
「早く食べたいぞ」
「アイル、食べさせてくれ」
「…嫌って言って無かった?」
「「「言ってない!」」」
ジトっと見たのは仕方ないよね?あんなにえー!とか言ってたのにさ。
「もう、仕方ないなー。ドンドン焼くよ」
「「「おうっ」」」
いい匂いだよね?ふふふっ、匂いで美味しい、食べてさらに美味しいのだ。
「どうぞー」
「はむっ、おわぁ…美味い!」
「あむっ、ふわぁ…美味しい」
「はぐっ、おうふっ…うめえー!」
バクバクハグハグ。
もちろん、ハクたちにもあるからね!沢山食べてな。いっぱいあるし。
…すっごい食べたね?1人何十匹かな?
「はぁ食ったー」
「美味かった…」
「これは革命だな」
うなぎの美味しさが分かったか、ふははっ。
「よし、取り尽くすぞ!」
「おぉー!」
「おうよー」
気合い十分だね?しかもね、討伐だけだし、ブツは丸々手に入る。美味しすぎて笑っちゃうね、この依頼。もっともまさかこんなグロい見た目のうねうねがこんなに美味しいなんて知らないよね。
と、そんなこんなで今は午後3時くらい。へとへとだよ…でも取り尽くした。
誰の分かはトムとジェリーが分かってると言うから、あとで分配。僕が1番少ないけどハク、ブラン、ナビィ、コムギとトムとジェリーの分まで合わせたら僕が1番多いかも。
10匹で銅貨5枚が討伐料。でもそれより僕はブツが欲しかったんだ。
僕の分は軽く1000匹超えてるから、銀貨50枚。だいたい5万円かな。稼ぎとしてはそこそこだけど、いいんじゃ無い?
「みんなはどれくらい?」
『ナリスの保管分が561、テオが587、ラルクが602』
おぉ〜結構な数だな。
「自分の保管分は200くらいだ」
「銀貨40枚いかないくらいか?悪く無いな。何より物は俺たちが貰えるからな」
「しかし、生だからもたないだろ?」
「あー」
どうしよう。
『僕の亜空間に入れといてあげる!時間停止だよー』
ハクの爆弾発言でみんなが固まった。でも一瞬で
「おー!」
「やったー」
「すげー」
雄叫びに変わった。男子の雄叫びって誰得?
そんなこんなで帰路に着いた。なんだかみんな機嫌がいい。適度に稼げて美味しい。最高だね!
討伐ってよりは捕獲?乱獲?だったけど。
「あ、アイル、この網。使いやすかったぞ」
「それな!」
「あぁ本当に」
「良かった。虹蝶の羽なんだけど、丈夫だったね!」
「…えっ?」
「…虹蝶?」
「…はっ?」
「「「はぁぁ?!」」」
みんな仲良しだね?首を傾げると
「お前、虹蝶って聖虫の?」
知らないけど。ビクトル、そうなの?
(そうだよーアイルが作った聖域に集まったんだよ!)
「そうみたい…」
「お、お、おっ、お前はー!国宝級のものを川蛇の捕獲に使うなんて…」
ナリスが青ざめ、テオとラルクは震えてる。
「んーだって沢山あるし?」
「たく…」
「さん…」
「ある…?」
「うん、何百枚ってあるよ?」
ナリスは何故かはぁとため息をついた。
「わかった。が、これは返す。流石にな」
「そうだな」
「それがいい」
えーあげたつもりなのに。
(返して貰った方がいいよ。可哀想だ)
(何で?)
(アイル作の捕獲網 聖遺物)
(ぐほっ…聖遺物ってその?)
(聖なる力が宿った遺物…国宝級とかを超越してるよ)
(…)
「わ、分かったよ。また使いたかったら言ってな」
絶対言わないとみんなは思った。
時系列整理 年明け以降
1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発
アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く
1月2日 麓の村をナリスと出発
1月6日 ロルフがフィーヤ着
アイルが町レイニアに着く。馬車を買う
1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着
アイルが布を仕入れて町を出発
ライラたちが襲われる
ゼクスと王都にロルフから手紙が届く
1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発
魔術師団がゼクスに出発
1月9日 アイルがハク、ブランと再会
1月10日 ミュジークと捕虜を解放
アイルが村が救う
1月11日 魔術師団がゼクスに到着
近衛騎士たちが村を出発
アイルたちが村を出発
1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発
1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着
1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする
1月18日 ロルフたちがフィフスに到着
アイルが川蛇の依頼を受ける
1月19日 ロルフたちがゼクスに到着
1月21日 ロルフたちが死の森に行く
イーリスたちがアレ・フィフスに到着
1月22日 イーリスがゼクスに到着
1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発




