表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

356/429

350.依頼達成と中級

 目が覚めた。うん、温かい。いつもよりぬくぬくだ。背中にはナビィ、胸元にはコムギとハク、首元にはブラン。すりすり撫で撫で…可愛い。

 ん?髪の毛を撫でる手…あぁ昨日はラルクと寝たんだっけ。ふふっ温かい。顔を上げるとほんのりと頬を染めたラルク。その頬に触れる。

「おはよう」

「おはよう、アイル…」

 ラルクが優しく微笑んだ。あれ、笑った?真面目な顔しか知らないと新鮮だ。


「ラルク、笑った…」

 すると顔を赤くして僕の髪に顔を埋める。こう言う仕草はまだ若いんだなって思う。

「ラルクは19才だよね?若いね!」

 ラルクは僕の髪に顔を埋めたまま

「アイルの方が若いだろう?いや、幼いか」

「13だよ、幼くない!」

 顔を上げてマジマジと僕を見る。

「11くらいかと思った…」

「違うよ…」

「後2才で成人か」

「15才が成人なの?」

「知らないのか…?」

 僕は俯く。あっちでは18才だったから。あれ、16才だっけ?


「知らなければ少しずつ知っていけばいい。私が教える」

 優しく頭を撫でるラルク。

「うん」

 その手に甘える。なんとなく、こんな風に誰かに甘えた事がある気がする。思い出せない記憶。


 僕が考え込んだからか、ラルクが心配して顔を覗き込む。至近距離にラルクの薄い青目。

 既視感…澄んだ透けるような青い目。それは誰?

 じっと見ていたからか、ラルクがそっとおでこにキスをする。

 僕はこんな風に誰かと朝を迎えたことがある。大切な思い出…なのに思い出せない。

 忘れてはいけない筈の思い出、大切な人の記憶。


「アイル…?」

「僕は…昔の記憶がない。思い出したいのに、思い出せない。大切な人…誰かも、顔も分からない。なのに、大切な人がいたことは分かるんだ。凄く大切な…」

 ラルクが頬を撫でる。

「焦らなくていい。大丈夫…」

 ラルクがまぶたにキスをしてくれる。柔らかな唇…誰かの記憶。


 イリィ…


 ラルクがそっと触れるだけのキスをする。僕は安心して、また目を瞑った。


 イリィ…


 その名を呟きながら。



 次に目が覚めたのはテオの声がしたから。

「うわぁ、同衾か?」

「な、な、な、何を!」

 ん、騒がしいなぁ。

「テオ、うるさい…」

「えっとしたのか?」

「テオ!」

 賑やかだなぁ、ふわぁ。温かくて気持ち良かった。僕は体を起こすとラルクの頬にキスをする。

 そしてナビィやハクのように伸びをした。

 うん、よく寝た!


「テオ、どうしたの?」

 固まってたテオが僕の言葉に

「いや、もう朝だから」

 確かに。さて、着替えよう。ベットを降りて着替える。振り向くとテオがラルクと戯れていた。

「何してんの?」

「「なんでもない!」」

 そういえばさっきテオがなんか言ってたっけ?

「さっきしたのかって言ってたけど、何を?キスならしたけど…」

「いや、気にするな…ってキスしたー?!」

 驚くこと?ナリスもしてたし、親愛?表現だよね。


 首を傾げるとまたラルクと戯れ始めた。仲良しだな。

「羨ましいの?ならラルクとすれば?」

「だー、違うわ!」

 テオは朝から元気だな。

「おーい、起きたか?朝飯食べてギルド行くぞ?」

「「はーい」」

 ラルクも着替え終わったので、宿を出る。顔は水魔法でチャチャッとね。


「アイルは簡単に魔法使うなぁ」

 テオが感心して言う。そら便利だし?

「みんなはあんまり使わないね?便利なのに…」

「そんな風に当たり前に使う奴は見たことない」

 そんなんだ?僕は普通に使えるし、周りも使ってたよ?

 あれ、周りって。


 昨日の商業ギルドでの登録、ビクトルが特例として指定したのはバナパルト王国の二つの町。これはビクトルのヒント、かな。

 そこは僕に縁がある場所。なら、僕が目指すのはそこなんだろうな。


 ビクトルは僕に行き先を言わず、南へと言った。地理が分からないから何とも言えないけど、その国に行こうとしてる?

 ナビィも事故だって言ってたし。僕を待ってくれてる人がいるかもしれない。

 思い出せないイリィ…、美人?なロリィ。

 どんな関係何だろう。考えると胸の奥が温かいような、そわそわするような。

 ハクやブランに会う前の僕みたい。


 考えながら歩いてたら探索者ギルドに着いていた。

 もう、かなり人がいる。

 依頼窓口に並んだ。基本、職員による紹介制で単独受注だって。僕は初級だし、受けられるのあるかな?

 僕たちの番になった。

「アイルからいいぞ!」

 譲ってもらったからギルドカードを出す。職員さんは男性で、機械にカードを通した。すると少し考えてから

「ちょっと待っててくれ。あー悪い、後ろの奴は別の窓口に並べ!」

「んだよー」

 そう言って窓口を離れた。文句は華麗に流された。ご愁傷様。


 えっとで、何だろう。

「アイル、お前何かしたか?」

「分からない…」

 元僕が何かしてたら、僕には分からない。少しして戻って来ると

「お前たちは連れか?」

 ナリスたちに聞く。

「あぁ、何かあったか?」

「何かというか、達成された依頼の手続きが終わってない。ちょっとこの子借りるぞ。俺はすぐ戻るからお前らのカードを預かる」

 僕は職員さんに連れられて奥に入って行った。


 ある部屋の扉を叩く。

「入れ」

 ダミ声が聞こえた。

「失礼します。例の依頼達成手続きが終わってない子が窓口に来ました」

「おう、後はいいぞ!」

 僕は部屋に残された。窓側に机があって、大きな人が座ってる。忙しそうだなぁ。部屋を見回す。書類が散らかってるな。

 手前にはソファがある。

「悪いな、これだけ仕上げるから座ってろ」

「うん」

 僕はソファに座って待つ。


 書類仕事をしているのは顔に傷のある大きな人。冬なのに半袖で、凄い筋肉が見える。ムキムキだ。

 感心して眺めてると目が合った。その人はふう、と息を吐くと立ち上がった。大きい!2メル(m)超えてそうだ。


 見上げていると

「待たせたな!」

 反対側のソファにどかりと座る。

「俺はここ、ロイカナの探索者ギルドのマスターで、アスクルだ!」

「初級のアイルだよ!」

「おう、よろしくな。で、だ。依頼がな、達成されてるのに手続きがされていない。依頼主が達成の報告をしてるから間違いないんだが。しばらく探索者ギルドに寄ってないだろ?」

 分からない…目が覚めてからは寄ってないけど。


(話を合わせて)


 ビクトルの声がした。

「うん…少し遠いところにいたから…」

「ま、そんなこったろうと思ったぞ。で、その依頼はっと、あーバナパルトに居たんだな。そこのゼクスとフィフス、フィーヤの依頼が達成だな。手続きするからカードだしな」

 僕はギルマスにカードを渡す。何やら机でやって、機械を操作した。

「ほら、終わったぞ!依頼料はさっきの窓口で受け取れ!」

 渡されたのは銀色のカード。あれ?僕のじゃ無い。

「僕は初級だよ?」

「くはっ、中級に上がったんだよ!依頼達成によってな、ギルドへの貢献度が高いってよ。おめでとう!まだ若いのにな」

 えぇっと喜んでいいのかな?


(話合わせて!)


 ビクトル、分かったよ。

「うん、頑張って良かったよ。ありがとう」

「話はそれだけだ。頑張れよ!坊主。次は上級者だな」

「うん!」

 僕はアスクルさんに見送られて部屋を出た。

 廊下を歩きながらビクトルに聞く。


(僕の功績?)

(間違いなく、ね)

(何も覚えてないよ…)

(それでも間違い無く、アイルの功績だよ)

(前の町でギルドカード出すなって言ったのはこれがあるから?)

(…そんな感じ)

(僕は探されてる?)

(多分、ね。あんまり早く見つからないようにと思って)

(なんで?僕は思い出したいのに…)

(ごめん、言えない…。でも、アイルのためにって思ってる。それだけは分かって)


 僕は立ち止まってビクトルを見る。ふわふわと漂いながら悲しそうな顔をしていた。


 

時系列整理 年明け以降

1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町レイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちがロイカナの町に到着


1月17日 アイルが探索者ギルドで依頼達成の手続きをする


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ