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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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347.粉物を買う

 渡して貰ってナリスに持たせる。適当に進んだところでサッと自分のポーチにね。

 次は粉物だね。

「小麦粉買う」

 少し歩く。

「この辺りだな」


 ナリスの言う通りたくさんの粉屋があった。賑わう市場の中で異質な店がある。そう、客がいない。

 僕は気になってその店を覗く。

 まだ若そうな店員が

「こ、小麦粉とか他にも色々売ってる」

 すると隣の店から

「坊主やめとけ!高いだけだ。俺らの店より倍は高いぞ」

「そ、それは精製が…」

「金の無駄遣いだ!」

「ぐっ…」


 僕はその粉を見る。他の店のも見る。

(精製が完璧に近い。手間が掛かってる分、高額)

 他の店は?

(精製はとても粗いから味も悪い)

 うーんそうかぁ。悩む必要無いよね?だって僕はお金持ちだし?美味しいパンが食べたい。あ、ホットケーキもいいかな。

 お店の中を見ると、あれは。

「お兄さん、その粉は?」

「これか?これはな芋から成分をとり出して作ったんだ!」

「けっ、芋のカスを売るとかな!恥を知れ!」

 それって確か片栗粉。デンプンだよね?少しだけ作ったのがあったけど少なくて使えなかったんだ。


 他には、あ、あれは…

「お兄さん、これは?」

「こ、これは麦をひく過程が少し違ってな…」

(強力粉)

 来た!これで本格的なパンが焼ける!酵母か菌みたいなのは持ってたから。

 あれ、でもあそこのは?

「お、お兄さん…これ」

「あ、少し匂うが膨らまし粉なんだ。粉がふっくらする」

「あんな臭いもん売られると困るんだよな!けっ」


 お兄さんはもう涙目だ。僕も涙目だ。だってイースト菌だよ?

「お兄さん、ありがとう!」

 ガバリと抱きつく。お兄さんはえっえっ、と困惑してる。

「探してたんだ!これでふっくらやわやわなパンが焼ける。ありがとう。あるだけ買う!」


 えっえっと困惑していたお兄さんは僕のあるだけ買うに反応した。そして涙を流した。僕を抱きしめて

「ありがと、ありがとう…」

 あれ、なんでお兄さんが泣くの?オロオロしてその背中をトントンする。

 頬の涙を拭うとにっこり笑って

「沢山あるが?」

「ドンとこい?」


 2人で笑い合った。

「配達するか?」

「うん、えっとね宿の名前…」

 なんだっけ?ナリスを見る。

「赤い屋根の猫亭だ」

 そんな名前だったのか…。なんか恥ずかしい。


「なぁ、その…さっきこれでふっくらやわやわって言ってたけどあれは?」

「ん?そのままだけど」

「つ、作り方を教えてくれないか?もちろんただとは言わないから」

 必死に言われた。まぁ構わないよな?


「いいよ。あ、でも製法登録とか必要かも?お兄さんはふくらし粉は登録してる?」

 えっという顔。してないのか、これはしておかないと。強力粉もだ。

「ダメだよ?革新的な技術は製法登録しないと。非開示にも出来るし」

「そうなのか?」

「今から商業ギルドに行くよ?売れたから店しまって!早く」


 そのままナリスも一緒に商業ギルドに向かう。探索者ギルドの近くらしいから。

「俺の名前はテッドだ」

「僕はアイルで、そっちのお兄さんはナリスね!」

 テッドは僕とナリスを見て納得した。僕はフードを被ってるからね。

 大きさは兄弟だし。足元には小さくなったハクと肩にはブランがいる。コムギはナビィとラルクのそばでお留守番。


 商業ギルドに着いた。扉を開ける。登録って何処でするの?僕のはいつもみんながしてくれたから。

 あれ、みんなって誰?僕はなんで製法登録とか知ってるの…。思い出せない記憶なんだろうな、これ。って事は僕は登録したことがあるんだ。

 俯いて考えていると職員さんが話しかけて来た。

「ご用件は?」

 ナリスが小さな声で

「あー革新的な技術は登録がいると聞いてな?担当はいるだろうか?」

 職員さんはナリスを見てテッドを見てから僕を見る。テッドの事は知っていたのか、頷くと別の場所へと案内された。


 会議室?

 入って座ると、声を掛けてくれた人ともう1人が入って来る。

「革新的な技術とは?」

 テッドもナリスも僕を見る。作らないと分からないかな。

「柔らかいパン」

 向かいの2人はピキリと固まった。

「本当か!」

「間違いなく?」

 試してみないと絶対では無いけど、ビクトルがイースト菌っていったし間違いない。


「料理に使う粉。その製法と、僕のふわふわパンはレシピか製法か分からない」

「確認したい」

「作る場所ある?」

「隣の部屋が料理が出来る部屋だ。登録確認用のな」

 丁度いい。

 みんなで移動する。テッドには粉を各種持って来てと言ってあった。

「テッド、芋の粉と普段の小麦粉と違うやつ、匂いのする粉を出して」

 テッドが取り出す。僕はまず強力粉を手に取る。


 その部屋にあったボウルに強力粉、砂糖、塩を入れる。そしてイースト菌を水で戻し発酵させる。魔法で時間促進して、強力粉に加えて混ぜる。手にくっつかなくなったら寝かせる。ここも時間促進。

「魔法で時間を短縮してるけど、それは成功したらまた後で詳しく」

 説明をして続ける。

 台に打ち粉をして生地を捏ねる。しっかりと捏ねたら小さく丸め、また寝かせる。時間促進。


 また打ち粉をして棒状に伸ばす。それをくるくると丸めて中にバターを小さく入れる。丸めた表面にも溶かしたバターを塗って、後は焼くだけ。

 オーブンに火を入れて焼けるまで30分くらいかな。


 その間に、野菜と細かく刻んだ肉を炒める。味付けは塩と唐辛子。サクサと塩、砂糖少々。

 フライパンで炒める。火が通ったら水を入れて沸騰させる。そこに片栗粉を水で溶いて投入。ゆっくりとかき混ぜるととろみが付いた。

 弱火でそのまま置く。


 最後はこれ。小麦粉に卵と砂糖と水とイースト菌を入れる。混ぜてから弱火で熱してバターをひとかけ。溶けたらお玉で掬ってフライパンへ。

 薄く均一に伸ばし、ぷつぷつして来たら裏返す。おっ、いい色。

 ある程度焼けたら火を止めて予熱を通す。丁度パンも焼けたね!いい匂い。

 部屋の中にはバターの匂いと香ばしいパンの匂い、そしてホットケーキの甘い匂いが立ち込める。

 みんなが喉を鳴らす。


「試食する人?」

 全員がパッと手を上げた。

 それぞれお皿に盛って試食開始。まずはパン。おおっもっちりだね。ふわぁっとバターが香る。そのままパクリッ来たー!美味しい。完璧なバターロールだ。

 麻婆茄子風の炒め物を食べる。うん、とろみが最高だね。ご飯食べたくなる。

 そしてホットケーキ。リル草の蜜をかけていただきまーす!美味しい!!甘くてふわっふわ。

 夢中で食べ切った。ふう、満足。


 あれ、静かだな。

 テッドは…泣きながら食べてた。喉詰まるから気を付けて?

 ナリスは恍惚とした表情で目を瞑ってホットケーキを味わっていた。

 ギルドの職員さんは震えながら泣いて、食べている。えっとみんな大丈夫?

「「「「美味い!」」」」

 良かった。

 まだ残ってるホットケーキの素をみんなが見つめる。

「えっと、おかわり…」

「食べる」

「ぜひ」

「食う」

「食べたい」

 全員だね?せっせと焼いたよ。


 食べ終わると、職員さんが

「粉物2種類とやわらかパンは製法登録、野菜と肉の炒め物とこのふわふわな甘いパンはレシピ登録して。開示はどうする?」

 テッドが僕を見る。 


(ビクトルどう?)

(粉は限定開示、パンは非開示で。特例でこの町とバナパルト王国のゼクス、フィフスに無償で。

 レシピは炒め物は開示、甘いパンは非開示でやっぱりさっきと同じ特例にしたら?)


「粉は限定開示、パンは非開示で。特例でこの町とバナパルト王国のゼクス、フィフスは無償で開示。粉の開示料金は金貨1枚。

 レシピは炒め物は開示、甘いパンは非開示で特例は認めない」


「その、甘いパンはぜひ限定開示か特例を」

「却下だよ。ただ、テッドにだけは教える。だって粉は今のところ、テッドにしか作れないし…テッドが苦労して作ったからね」




時系列整理 年明け以降

1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルがレイニアに着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月9日 アイルがハク、ブランと再会


1月10日 ミュジークと捕虜を解放

アイルが村が救う


1月11日 魔術師団がゼクスに到着

近衛騎士たちが村を出発

アイルたちが村を出発

 

1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月16日 アイルたちが街に到着


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発


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