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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第6章 ピュリッツァー帝国

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341.イグ・ブランカで

 その頃のイグ・ブランカ…



 大きな木の間にあるツリーハウス。その近くで僕はネールと話をしていた。

「だいぶ咲いたな」

「うん、小さな森も出来た」

「あぁ…」


 そこにはまだ若い森があった。アイル、君がこの景色を見たらなんて言うだろうか?

 ネールもきっと同じ人を思い浮かべてるんだろうな。僕たちの心に根付いて、大きな花を咲かせた人。

 この景色を見て欲しかった。

 ツリーハウスからヨナが駆け降りてくる。

「兄様!」

 受け止める小さな体。

 イズワットの言葉で夜明け。ヨナ、君はイズワットの民の夜明け、希望だよ。

 その柔らかな髪を撫でる。ネールが僕の肩を抱く。同じ人を想いながら。




 僕はツリーハウスから白の森に向かって咲く青い可憐な花を見ていた。アイが僕に植えてと頼んで託した花。

 その名はネモフィラ。

 アイ、今…咲かせたよ。みんなで頑張って、アイの為に…アイに捧げる為に。

 また来年も再来年も咲かせるから。いつか2人でここに…必ず。


 僕はピアスに触れる。アイの髪の毛が触れる。優しい魔力。胸のペンダントはアイと僕の髪の毛。銀と金が重なり合って寄り添っている。

 アイ、僕たちは寄り添っているはずだよね?

 アイ、はやく会いたい…例え君が僕を忘れていても。


 若木はお父様とお母様とシア兄様の頑張りと、イグニス様のお陰で完全に根付いた。もう少し根が張って育つまでは氷は溶けない。でも、立ち入ることが出来る。

 だから屋敷は移せるんだ。でも、アイがいない。あんな屋敷を移せるのはアイくらいだ。

 それもあってイグ・ブランカで暮らしている。やがて小さな森は白の森と繋がるかもしれない。

 どこで暮らしていくのか、それを決めるのはお父様だ。


 ロルフが出発した5日後の明日、僕たちはゼクスに向けて旅立つ。家族ともまたしばらく会えない。次に会うときはアイと一緒に、そう決めたから。

 今日は家族と屋敷で過ごして、明日に備えた。


 僕がいるべき場所はここじゃない。アイの隣だから。

 その夜はベル兄様と寝た。

「イーリスは寂しがりだからね!」

 僕を抱きしめながらベル兄様は笑う。

 いつだって陽気で、でも周りを良く見ている。僕は兄様の温もりに包まれて眠った。


 翌朝、家族やイズワットのみんな、イアンたちも別れを告げてイグ・ブランカを旅立った。




 なんでこうなったんだ…?大所帯すぎる。

 馬車2台と馬2頭で街道を進む。

 僕はマルクスの荷馬車に乗ってる。これはまぁ僕を守る意味もあるからね、想定内。

 サリナスとブラッドはエリアスとキリウスの馬に乗ってる。これも想定内。

 エリアスとイグニス様は馬車に乗ってる。これも想定内。

 想定外はベル兄様とヤンダルだ。何故増えた?


「うーん、イーリスは寂しがりだし?僕は婚活?」

 意味不明だ。婚活って…人気あるって聞いたよ。お母様もお父様も相手はいるのにね、って。だから婚活は違うと思う。やっぱりアイなんだろうな。ベル兄様は。

 ヤンダルはどうやら首謀者を探す為に同行するみたいだ。彼は神聖国の森人だから、まぁ分からなくもない。

 ロルフもなるべく少人数でって思ってるのになぁ。


 イグ・ブランカからゼクスまではおよそ2週間。フィフスには寄らずに死の森を目指す。そこでロルフと落ち合って、ユーグ様に会う。

 それからゼクスに向かって、ロルフは魔道具の研究。目処が立ったら帝国に出発。

 長い旅になるだろうな。


 と思っていたよ。


 ロルフが出発してから5日後に追いかけるようにイグ・ブランカを出た。

 順調に旅は進む。

 安全面とか諸々を考慮して、なるべく町に入った。ニミは姿を消している。気配はあるから見えないように追いかけてるみたいだ。

 サリナスやブラッド、ヤンダルはそれぞれ情報を得て仕入れながら。マルクスは仕入れと販売をしながら。


 毛織物やランカ、アルミもしっかりと売ってるよ?

 代わりにマルクスは香辛料を仕入れてる。

 それはきっとアイの為に。みんなもそれぞれ、なんとなくアイが好きそうなものを買ってる。愛されてるね。

 僕はもちろん、お揃いの布とかを買った。刺繍は苦手だけど、アイの為に。それに何かをしてないと落ち着かないから。



 2週間かかる予定だったよね?確か。今回はフィフスに寄らないからアレ・フィフスからロルフに鳥を飛ばした。明日、死の森に着くと。それは出発から8日目の事。早くない?

 イグニス様を見るとふっと目を逸らした。何かしたか?早いのは嬉しいけどね。


 翌日のお昼過ぎ、死の森に近い宿。そこでロルフと再会した。僕は思わずロルフに抱きつく。しっかりと受け止めてふわりと抱きしめてくれた。

「ロルフ…何か情報が?」

「うん、少しだけ足取りが分かった…また後で詳しく」

 僕は頷くと生命樹に向かう。グライオール様もいた。

 エリアスとイグニス様、ベル兄様とヤンダル、ニミも一緒だ。

 ふわふわと光が舞う。

 生命樹はいつも通り白くて美しい姿だった。


 ふわりと風が頬を揺らす。生命樹からユーグ様が現れた。白くてきれいだ。僕に向かって来ると

『愛し子の大切な子…あの子はまた困難に見舞われた。どうかあの子を助けて。そなたの愛があの子を呼び戻す』

「はい、もちろんです!ぼくの大切な人。必ず見つけます」

『良き…ならば託そう。そなたと愛し子の子…』

 ユーグ様から手渡された子の実。淡く銀色に光っている小さな実。それを胸に抱く。温かい。

 ヒュランの背中からルイが飛び降りて僕をよじ登る。そして子の実に寄り添った。

『その子が守護するのだね、託したよ。イーリス』

「はい…ありがとうございます」


 ユーグ様はイグニス様の元にふわりと行く。

『創世の神よ、どうか私の愛し子を…見守って下さい』

「我の失態じゃ!任せろ。記憶は?」

 ユーグ様は悲しそうに首を振る。

『繭に…』

 そんな…アイは記憶を?ロルフが後ろから支えてくれる。

「あちらの記憶も…失くしてる。ただ、思い出せないだけだと」

「ならいつかは思い出す?」

『可能性がある…神聖国に、私の元に…愛し子を』

 アイ、思い出して…僕を。



 その時の僕は、会えばきっとアイは僕を思い出すと信じていた。



 ヤンダルが

「お久しぶりです。お姿を拝見するのは初めてですが…神聖国の護り人一族のヤンダルです」

『あぁ…本体の。愛し子の大切な子たちをよろしくね…』

「承りました!」


 ユーグ様はふわりと微笑むと生命樹に戻って行った。



 僕は託された子の実を大切に手に持っていた。でもずっとは無理だから、腕のポケットに入れた。当然のようににルイが寄り添う。

 僕はロルフの馬車に移って、アイの情報を聞く。口座が動いた?大銀貨100枚は確かに庶民に取っては大金だ。でも、アイに取ってはそんなに大金でもないはず。

 だって僕ですら100枚以上の金貨を持ってる。アイは僕より何倍も多い筈だ。

 それにあのスーザンとリアが同行する?

 イザークとフェリクス様も?なんでそうなる…。

 しかも魔術師団の人まで…どうしてそんなに大所帯に?

 えっ、アイだから。それはまぁ。


 そこでアイがラルフ様を探す為に色々とやからした事、魔術師団にエンブレムを贈った事などを聞いた。

 だからアイ…また無自覚に人をたらし込んで。でもそれがアイなんだよね。

 見つけたらお仕置きかな。

 でもその前に森人の巫女に会うんだね?分かったよ。


 こうして予定より格段に早くゼクスに着いた。ロルフの研究は移動時間も考えて、旅をしながらとなった。アイがいないから、屋敷を持ち出したりは出来ない。でも、アイが渡してくれたピアスには何故か家が入っていた。


 ロルフにも、もちろん。どうやらスーザンやリア、イザークやフェリクスにもその家があるらしい。

 僕とロルフ、エリアスが6人用(なんで?)

 他は4人用みたいだ。テントですら快適なのに、家だよ?試しに出したらお風呂まで付いてた。


 ねぇ、アイ…君は何を目指してたのかな?やっぱり何があっても困らないように、だよね。きっと。

 だって家には食材や料理、着替えまで保存されてたから。


 ロルフが時間が惜しいと言うので、森人の巫女には旅の途中で会うことにした。

 そして、ゼクスに着いた日の翌日には慌ただしく出発した。

 ロルフは侯爵家の馬車で、乗るのはロルフ、エリアス、イグニス様、グライオール様、僕。

 フェリクスは侯爵家の馬車で乗るのはフェリクス、イザーク、ハウラル。

 スーザンはギルドの馬車で乗るのはスーザン、リア、サリナス、ブラッド

 マルクスは行商として荷馬車を引く。そこにはベル兄様とヤンダルが乗る。

 そして馬2頭。

 総勢14名…なんでこんなことになった。



 僕たちはその日のうちに、森人の隠れ里に着いた。と言うか、街道近くで待っててくれた。

 イザークが声をかける。

「テト、託されたペンダントは渡せなかった。アルテノは?」

「お待ちになっている」

「馬車は」

「そのまま来い」

 テトと呼ばれた森人について行く。馬車のまま通れる道を進み、やがて里に着いた。

 全員である屋敷に入る。そして、その部屋には…





時系列整理

10月10日 審判の日

アイルやハクたちが魔力を捧げる為に眠る

イグニスが神界でケガをする


10月15日頃

シシラルたちがイグニスを連れて下界に降りる(神界と下界は時間の流れが違う)

アルテノが祈りを捧げる

イザークがペンダントにざわめきを感じる


10月18日頃

ダナンたちが王都を訪れ、謁見と会食

アーシャが神聖の森に伝言をする

若木が根付く?

光の奔流が流れ落ちる アイルが消える


10月19日 ダナンたちが夫人たちと会食に参加


10月20日 アイルが目覚める

イーリスがイグ・ブランカに戻る

旧イグニシアで黒い光が飛んだ

ダナンたちが王都を出発

ハクが帝国で目覚める

ブランが郷で目覚める


10月21日 ライラたちと双子の騎士を助ける 合流

夜中に馬とネズミを助ける

帝国で白い光が駆け抜けた(ハクが駆け抜けた)


10月22日 ライラたちと双子の騎士と馬が合流 山を降りる


10月23日 ライラたちがナビィと出会う

ダナンたちが帰領する

ナビィがアイルと再開する


10月24日 ライラたちがベイクと再会

アイルが向こうの事を思い出す


10月25日 ライラたちが町を出る


1月1日 ロルフたち鎮魂の森を出発

アイルがミュシュランテスを降りて麓の村に着く


1月2日 麓の村をナリスと出発


1月6日 ロルフがフィーヤ着

アイルが町に着く。馬車を買う


1月7日 ロルフがフィーヤ発 イグ・ブランカ着

アイルが布を仕入れて町を出発

ライラたちが襲われる

ゼクスと王都にロルフから手紙が届く


1月8日 ロルフたちがイグ・ブランカを出発

魔術師団がゼクスに出発


1月11日 魔術師団がゼクスに到着


1月13日 イーリスたちがイグ・ブランカを出発


1月18日 ロルフたちがフィフスに到着


1月19日 ロルフたちがゼクスに到着


1月21日 ロルフたちが死の森に行く

イーリスたちがアレ・フィフスに到着


1月22日 イーリスがゼクスに到着


1月23日 アイル捜索隊がゼクスを出発



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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